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コラム石垣 2014年12月1日号 丁野朗

産業や地域は、「静脈」をケアしながら再生・発展してきた。静脈とは、いわゆる生産の残渣(ざんさ)としての廃棄物や、産業・都市発展とともにその役割を終えた歴史遺産などを指している。

▼そんなテーマを具体化するフォーラムを、10月末、秋田県小坂町で開催した。テーマは「再生そして未来へ」である。

▼小坂町は鉱山で栄えたまちである。19世紀初頭、金・銀鉱山として開発が始まり、南部藩直営時代を経て、1884年に藤田組に払い下げられると、明治後半には銀の生産高日本一となった。その後、低迷期を迎えるが、製錬技術の向上により、処理が難しいとされる「黒鉱」から銅や亜鉛を回収し、再び大きく発展した。全国から労働者を集めるために、山中にアパートや劇場、病院、鉄道などの近代的インフラの整備が進められ、これが今日の小坂町の基礎となった。

▼しかし、1990年にはついに廃鉱となり、地域は大きな危機を迎えた。その危機を救ったのが、高度な製錬技術を逆用したリサイクル産業である。廃家電や携帯電話などからレアメタルを回収する、いわゆる「都市鉱山」技術を確立し、今では年間400億円のビジネスとして再生している。まさに、静脈再生が産業を救ったのである。

▼小坂町は、最盛期の小坂鉱山の鉱山事務所や芝居小屋(康楽館)、天使館とよばれる幼稚園などの産業遺産をまちなかに集積し、「明治百年通り」と名付けてまちの再生に取り組んでいる。今年は廃線となった旧小坂鉄道を活用したレールパークも開業した。これも、静脈を活用した都市再生である。

▼政府が力を入れる地域創世とは、こうした地域の静脈の再生でもあろう。

(公益社団法人日本観光振興協会総合研究所長・丁野朗)

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