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コラム石垣 2014年11月21日号 宇津井輝史

人の親切は身にしみる。その土地に不案内な旅行者にはどの国の人も親切だが、日本に生きていると、とりわけ親切に出会うことが多い。海外からの旅行者も、日本人の美質として押し並べて「親切さ」を挙げるところをみれば、あながち日本の自画自賛ではあるまい。昭和40年代、小さな親切運動が推奨されたのを記憶している人は少ないだろうが、実感から言えば、対人関係における社会の親切の総量は当時もいまも変わらない。

▼文科省所管の統計数理研究所が5年ごとに行っている「国民性調査」の結果を先月末に発表した。それによれば、「たいていの人は他人の役に立とうとしている」と答えた人が過去最高の45%にのぼり、「自分のことだけに気を配っている」(42%)を初めて逆転したという。日本人の長所を尋ねた質問では、「礼儀正しい」が77%、「親切」が71%でいずれも過去最高だった。特に「親切」が前々回の41%、前回の52%を大きく上回ったのは、大震災や水害などでの人々の献身的ふるまいが影響したろうが、日本人の(利己的ではない)利他的な心のありようが示されたのではあるまいか。

▼一方いま、米軍基地が集中する沖縄の負担をどう軽減するか、放射性廃棄物の最終処分地をどこにするか、私たちに難しい問題が突きつけられてもいる。誰かが引き受けねばならない問題を「みんな」で解決する方法とはどんなものか。遠くの総論には賛成するも、近くの各論には反対しがちな傾向があるのは人の常でもある。どこの国でも同種の問題と無縁ではない。国家とは共同体である。同朋意識はその精神的基盤だ。絆の尊さやつながる便利さばかりが叫ばれる昨今だが、いま「大きな親切」が問われている。

(文章ラボ主宰・宇津井輝史)

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