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コラム石垣 2014年11月11日号 神田玲子

日本の政治は安定を取り戻したのか。第二次安倍内閣も2期目を迎え、今のところ致命的な失敗もなく、絶妙な舵取りに成功しているように見える。しかし、欧米の政治的な混乱を見る限り、日本でも政治が機能不全に陥る可能性は高い。

▼欧州では、石油危機以降、経済悪化による高い失業率に苦しんできた。ヨーロッパ共同体の形成も失業を解決するどころか、ユーロ危機はかえって失業の不安を深める結果となった。出口の見えない経済低迷は、社会に不満を持つ人々を、一部のマイノリティーの人々を排斥する動きに駆り立てている。国政選挙で、極右の政党が躍進を遂げるのはその一例である。

▼米国では、政府の介入を極端に嫌うティーパーティーの動きに共和党自身が躍らされている。多くの国民の期待を背負って登場したオバマ大統領は、何も決められずにいる。既得権益を持つ団体が、自分たちの都合の良い政策を実現させていることに国民の不満は募るばかりだ。

▼日本もこれらを他人事と眺めている場合ではない。保育サービスなどの若年の就業支援、高齢者就業、治安維持、研究開発費用など、政府が後押しすべき課題は多い。多額の債務を抱えることを理由に、こうした逼迫(ひっぱく)した課題への対応を怠れば、将来、社会に不満を抱く一部の人々によって政治が不安定化する可能性は高い。

▼昨今の消費税の議論は、足元の景気への配慮に焦点が当たり過ぎている。本来議論すべきは、中長期のあるべき経済の姿であり、そのための政策の必要性や優先順位であるはずだ。国民のニーズに合致した必要な政策を実施していくことができなければ民主主義の根幹が揺らぎかねないことを肝に銘じるべきだ。

(神田玲子・総合研究開発機構研究調査理事)

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