コラム石垣 2018年1月21日号 丁野朗

数年前、国土交通省鉄道局の地域鉄道活性化委員会に参加させていただいた。全国の地域鉄道は約90。その8割が赤字で苦しむ。中には明日、廃線になってもおかしくない鉄道が数多く含まれる。

▼原因は言うまでもないが、極限まで進んだクルマ社会と都市のスプロール化である。しかも沿線の人々も電車に乗らない。乗客が減ると運行間隔を減らし、時には運賃も値上げする。そのことが客離れをさらに加速し、結果、経営を圧迫するという悪循環を生んだ。

▼車があれば住まいは鉄道沿線でなくてもいい。近くに大型ショッピングモールでもあれば日常の買い物にも不便はない。こうした都市のスプロール化により、さらに鉄道客が減り、中心市街地の空洞化が進むという現象を加速した。

▼しかし、おかしなことに、こんな車社会で、若者たちの車離れが進んでいる。これは若者たちの大都市集中がさらに進んだ結果である。全国平均のマイカーによる移動率(自動車分担率)は6割にも達している半面で、東京23区ではマイカー利用は1割に過ぎない。大都市では車は不要であることが若者の車離れを加速している。長年続いた自動車メーカーの戦略自体が、若者の車離れを加速するという皮肉な現象である。

▼人口減少と中心市街地の疲弊・空洞化を観光による交流人口増加に期待する地域は多い。だが、市民も乗らない不便な交通機関には観光客も乗ることはない。もっと言えば、人が歩かない寂れた街中を喜ぶ観光客などいない。

▼地元の人々が車を制限し、モータープールに停めて街中を回遊する。そのことが中心市街地の再生には不可欠であり、観光客にも支持される地域再生ではないか。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

この記事をシェアする Twitter でツイート Facebook でシェア

次の記事

コラム石垣 2018年2月1日号 中村恒夫

時事通信社取締役 中村恒夫

2月になったばかりだが、来春の大学新卒者を対象とする採用活動はすでに、かなり進行しているようだ。日本経団連が示した『採用選考に関する指針』...

前の記事

コラム石垣 2017年12月11日号 宇津井輝史

文章ラボ主宰 宇津井輝史

いまから6500万年前、地球上から恐竜が突然消えた。原因は長く科学界の謎とされ、諸説交錯した。絶滅が、巨大隕石の衝突によると断定したのは米国...

関連記事

コラム石垣 2022年5月1日号 宇津井輝史

コラムニスト 宇津井輝史

明治維新を成し遂げた日本は中国の近代化を支援した。政府はむろん、日活の創業者ら民間人も孫文を援助して辛亥革命を助け、アジア初の共和国・中...

コラム石垣 2022年4月21日号 神田玲子

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

先日、日本の政策についてアンケート調査を実施した。そのうち「あなたが専門家に聞きたいことは何か」の問いでは、「有識者は信頼できないので質...

コラム石垣 2022年4月11日号 中山文麿

政治経済社会研究所代表 中山文麿

ウクライナ東部要衝のマリウポリや北東部のハリコフでのロシア軍の攻撃は凄惨を極めた。ウクライナ国民の戦意をくじくためにロシア軍は意図的に病...

月刊「石垣」

20225月号

特集1
〝二刀流〟で逆境に打ち勝つ! 主業務×自社ブランドで販路拡大

特集2
コロナ禍を乗り越えて長続きする会社へ 人材が活性化する職場の仕組みをつくる

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

会議所ニュース

月3回発行される新聞で、日商や全国各地の商工会議所の政策提言や事業活動が満載です。

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

無料会員登録

簡単な登録で無料会員限定記事をすぐに読めるようになります。

無料会員登録をする