コラム石垣 2018年2月1日号 中村恒夫

2月になったばかりだが、来春の大学新卒者を対象とする採用活動はすでに、かなり進行しているようだ。日本経団連が示した『採用選考に関する指針』は、広報活動開始時期を3月、選考を6月に設定している。しかし、売り手市場が続く中で期限を厳守していたら、優秀な学生をライバル会社に奪われてしまう。そう考えた多くの大企業がインターンシップを名目に、事実上の選考を進めているのが実態だと言えよう。

▼「社名を聞いたことがあっても、事業の中身が分かりにくいと学生は関心を持ってくれないんです」と、ある素材メーカーの幹部は自信なさそうに話す。消費者向け商品を扱っているわけでもないのに、同業種の企業がイメージ広告をテレビなどで流しているのは、そうした学生を念頭に置いているからだという。社名も浸透していない中堅・中小企業にとって、採用活動は一層厳しいものになっているに違いない。

▼日本を代表するメーカーの内定を断った知人の息子さんは、知る人ぞ知るという専門商社に就職を決めた。「扱っている商品の社会的重要性、グローバルな影響力に惹かれたらしい」と知人は説明している。待遇や知名度は二の次だったわけだ。

▼働き方改革が求められる中で、給与水準だけでなく、勤務時間をはじめとする勤労条件の中身が就職先を決める際、判断材料の一つになっている。同時に大事なのが、企業としてのアピールポイントの確立である。消費者に直接触れ合う機会の少ない企業は、自社で扱っている製品やサービスが、社会にどのような形で貢献しているのかを強く訴えるべきだ。入社した動機を、誇りを持って周囲に話せない企業には、学生が集まってくることはない。

(時事通信社取締役・中村恒夫)

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