9月1日は防災の日だ。この日は台風、津波、地震などの災害からわれわれの身を守るために、これらの天災をよく理解するために設けられた。かつて寺田寅彦は「天災は忘れたころにやってくる」と述べた。しかし昨今は「天災は忘れないうちにまたきた」という厳しい状況だ。
▼先月、広島市北部を襲った大規模土砂災害には言葉を失った。巨大な岩石や流木を巻き込んだ土石流が住居を跡形もなく押し流した。明け方に記録的な豪雨が突然襲ったため寝ていた人は逃げる間もなかったようである。
▼近年、日本では集中豪雨が際立って多い。今回の広島の土砂災害でもバックビルディング現象といって、同じ場所に次から次と9つの積乱雲が発生して3時間に1カ月分の雨を降らせた。
▼広島市は1999年にも同じような土砂災害に見舞われた。この災難を契機として2001年に土砂災害防止法が施行された。都道府県知事は危険箇所について警戒区域(イエローゾーン)や特別警戒区域(レッドゾーン)を指定して土砂災害に対処しなければならない。
▼今回被害に遭った広島市の6カ所のうち5カ所は土砂災害警戒地域に指定されていなかった。指定には民間の科学的な現地調査と住民への説明、それに了解が必要である。広島市は不動産価格の下落の問題もあり他県と比較して警戒地域に指定されている割合が少ない。
▼日本には山裾など急な斜面のへりに住宅が多数建設されている。したがって、今回のような短時間に大雨が降れば日本のどこでも土砂災害が起こりうる。共助・公助も大事だが、自分の命は自分で守るという自助の精神が最も重要である。想像力を働かせてわが身に降りかかってくる災害に適切に対処したい。
(中山文麿・政治経済社会研究所代表)
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