先月末、仮想通貨のビットコインを扱う私設取引所のマウントゴックスがハッカーからの攻撃(?)に遭い、預かっていたビットコインをほぼ全て失い、倒産した。
▼ビットコインはサトシ・ナカモト氏が公表した理論によって2009年から流通し始めた。同コインはスマホをかざしただけで数式のやり取りが行われ当事者間で授受や決済が行われる。
▼ビットコインは昨年、キプロスの金融危機を契機として、中央銀行が発行する通貨を信用しない人々の間で人気を博し、一躍ブレーク。現在150ほどある仮想通貨の中で最大であり、世界の流通総額は1兆円を超えた。
▼ビットコインは、それに詳しい人が取引の複雑なプログラムをサポートすると、その功績に対して与えられる。これはマイニング(発掘)といわれ、発行量が増加していく。このコインの発行上限は2100万枚と決められており、約1250万枚が現在流通している。
▼通貨の発行は各国中央銀行の専権事項である。これに異を唱えたのが74年にノーベル経済学賞を受賞したハイエクだ。彼の『貨幣発行自由化論』が、発行者も管理者もいないビットコインの理論的支柱となっている。
▼日本政府は今月初め、「ネット上で流通するビットコインは通貨ではない」という政府見解を世界で初めて示し、それを見えない「モノ」として扱うことになった。
▼ビットコインには、匿名性があり、犯罪で得た資金の洗浄(マネーロンダリング)に使われることが問題となっている。いずれ規制されるだろう。また、あまりにも価格が激しく乱高下するため支払い手段としても不適切だ。金などと同じように投機の対象とした商品に位置付けるのが理にかなっている。
(中山文麿・政治経済社会研究所代表)
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