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まちの解体新書 都会と田舎が融合した魅力あふれる‶トカイナカ〟

いずみ硝子:ガラスの棒素地の先端を火力で溶かし、手加工によって動物や船、馬車などの置物類を作っている。希少価値が高く、部屋のアクセサリーなどとして、多くの愛好家の支持を得ている

古の風情と豊かな自然が残る変化著しい‶まち〟

和泉市は大阪府南部に位置する。大阪都心(梅田・堂島・中之島・淀屋橋・本町・心斎橋・難波(なんば)・堀江地域)から約25㎞、関西国際空港から約20㎞の距離にある都市である。

同市の面積は84・98㎢で、国内で二番目に面積の小さい大阪府・43市町村の中で6番目の広さだ。同市に海岸はなく、東西に約7㎞、南北に約19㎞と細長い形をしており内陸に広がっている。同市南部には大阪府と和歌山県とを隔てる標高400~900m程度の山々が連なる和泉山脈があり、豊かな自然を堪能できる。

同市の気候は温暖で降水量は少ない。一方で「彼国清水多ク出ル処ナレハ、和泉ト号ス、和泉ハ水ノ名ナレバケリ」(『日本得名』より)と記述があるように、古くから清水が多く湧き出たところである。市名も泉井上神社の境内にある「和泉清水」に由来しているといわれている。

市内では旧石器時代の石器が見つかっている。また弥生時代の土器や石器、木製品などの貴重な文化財が数多く出土した全国有数の集落遺跡である「池上曽根遺跡」もあることから、古来より住みやすい地域であったと思われる。

奈良時代には「和泉国」の政治を司る国府が市内府中町(現在のJR和泉府中駅周辺)に置かれた。平安時代には熊野詣での参詣道である熊野街道(小栗街道)が市内を通り、「蟻(あり)の熊野詣」といわれるにぎわいを見せた。同街道には今もなお、当時の面影が残っている。

そんな地理的、歴史的背景をもつ和泉市は、平成7(1995)年4月の泉北高速鉄道「和泉中央駅」の開業をきっかけに、現在に至るまで大きな変化を遂げてきた。

「当市は堺市に隣接しており、加えて大阪都心からも近く、近年、道路や鉄道、住宅地などのインフラ整備が進んだことでベッドタウンになっています。全国的に人口減少が進む中、22年から27年の人口増加率は1・77%のプラスでした」と語るのは、昨年11月に当時の岸脇淳介会頭(現名誉会頭)の後を受けて、和泉商工会議所会頭に就任した山本恭弘会頭である。

「当市は都会的な都市環境がある一方で、和泉山脈の豊かな自然が残る田舎でもあります。それゆえに高齢者の方々にとって住みやすく、その高齢者の方々が子どもたちを育てる地域も残っていることから、子育て環境が充実したまちです。また、内陸にあり地盤が強固なことから地震などの災害に強いまちでもあります。私たちはこんな和泉市のことを、都会と田舎が融合した魅力あふれる‶トカイナカ〟と呼んでいます」(山本会頭)

和泉商工会議所 会頭 山本 恭弘 氏

地場産業と新しい工業団地が共存する‶まち〟

このような和泉市を支える産業の内容や特徴を山本会頭に聞くと地場産業と新しい工業団地について、次のように説明があった。

「当市は古くから綿織物業が盛んな地域で、綿織物は地場産業の一つとなっています。室町時代から綿の栽培が行われ、白木綿を製織したことが始まりとされています。江戸時代には‶和泉木綿〟の名で日本国中に知られ、国内の中心的な綿業地帯を形成しました。現在も多種多様な製品が製織されており、絨毯(じゅうたん)やカーペットを製造している会社もあります。

このほかの地場産業としては、ガラス細工と人造真珠があります。当市では細工加工に適した軟質ガラス棒を用いたガラス工芸が古くから発達しており、総称して‶いずみ硝子(ガラス)〟と呼ばれています。ガラスの棒素地の先端を火力で溶かし、手加工によって動物や船、馬車などの置物類が作られています。長年の経験により研ぎ澄まされた感覚から作り出された作品は希少価値が高く、多くの愛好家の支持を得ています。

人造真珠の歴史は明治末期、フランス製の商品を入手し、その研究を行ったことが始まりといわれています。大正時代にはガラス玉を原玉として、その後、プラスチックや養殖真珠と同じ貝核を原玉とした‶いずみパール〟が作られるようになりました。現在も独特で高度な技術により生産されており、国内生産業者の約7割が集中しています」(山本会頭)

新しい工業団地については「当市は、近年‶テクノステージ和泉〟や‶トリヴェール和泉〟といった内陸型の産業(工業)団地を整備しました。‶テクノステージ和泉〟は、10年7月から分譲が開始され、18年3月末に全画地完売。現在は、産学官連携による地域資源を生かした事業創出、経営革新、販路開拓などを目的として130社の企業が事業を展開しています。これらの企業は、相互交流や親睦に努め、地域社会の発展に寄与することを目的に「テクノステージ和泉まちづくり協議会」を設立。清掃事業や交通環境整備事業、和泉弥生ロマン・ツーデーウオーク、和泉市商工まつりなどの地元行事に積極的に参加するなど、地域の活性化に大きく貢献しています。

このほか、大阪産業技術研究所との連携による新規起業のための試作品開発工場・事務所などの共同施設を備えた和泉市産業振興プラザ南館や、産業人材の育成拠点として大阪府立南大阪高等職業技術専門校もあります」

「‶トリヴェール和泉〟は、中小企業の技術支援のために高度な試験研究を行う(前述の)大阪産業技術研究所を中心に、大手企業など30社が操業しています。

また、敷地内には、桃山学院大学をはじめ、ららぽーと和泉やコストコといった大型商業施設も進出しており、平日休日を問わず多くの学生や買い物客などでにぎわっています。今後は、既存の地場産業と工業団地の進出企業が、ビジネス交流会などを通してコラボレーションし、相互に発展していってもらえればと願っています」(山本会頭)

久保惣記念美術館:昭和57年10月に寄贈者を顕彰する館名をつけ、久保家旧本宅跡地に開館した和泉市立の美術館。「久保惣」(久保惣株式会社)は、明治時代からおよそ100年にわたり綿業を営み、泉州有数の企業として大きく発展。昭和52年の廃業を機に3代久保惣太郎氏が代表して、所縁の地である和泉市の地域文化発展と地元への報恩の意を込め、美術品および美術館の建物、敷地、基金が寄付された

地域活性化プロジェクトで未来を開拓する‶まち〟

和泉市では現在、新たな地域活性化プロジェクトが動き始めている。その名は‶木楽座ストリート〟プロジェクト。

全国的に商店街の衰退が見られる中、和泉市商店連合会が和泉市や和泉商工会議所のバックアップのもと、市内10カ所目の商店街を立ち上げるというものである。このプロジェクトの名称である‶木楽座〟とは、地域がますます活気づくよう「楽市楽座」にちなんで付けられた。この木楽座ストリートは、市内を南北につなぐ和泉中央線につくられ、その長さは、実に5㎞。そして、この長いストリートは、特色ある3つのエリア(木・楽・座)に分けられる。

‶木〟は、フォレストエリア。市内南部のはつが野から石尾道付近を指す。緑が多く自然が残るエリアで、閑静な住宅地や新しいおしゃれな店舗が並ぶ。‶楽〟はセントラルエリア。泉北高速鉄道の和泉中央駅付近を指す。商業施設が多く、イベントを行う広場などもある人が集まるエリアだ。‶座〟はソウルエリア。市内北部の観音寺からJR和泉府中駅付近を指す。古くからの和泉の中心地で、老舗が多く残るエリアだ。

木楽座ストリートは、組合形式で運営され、その定款の目的の頁には「本組合は、組合員の相互扶助の精神に基づき、地区内の環境の整備改善を図るための事業を行うことにより、組合員の事業の健全な発展に寄与し、あわせて公共の福祉の増進に資することを目的とする」と記されている。既に100店舗以上が本組合の目的に賛同し、加入している。

「新たなストリートとして、和泉市一番の目抜き通りになればと期待しています。魅力あふれるお店が多く集まり、多くの人々が行き交う活気あるストリートにしていきたいと思います」と力強く語る山本会頭。そのためにさまざまな取り組みを行っていく予定だという。

「まずは認知度アップのため、ホームページやスマートフォン向けのアプリで加盟店の紹介を行うとともに、イベントや求人情報なども広く発信したいと考えています。

また、当所の『会議所だより』や市の広報誌にエリアマップを掲載して配布するPR活動やオリジナル商品の企画・開発も予定しています。さらに5㎞にわたるこのストリートの街路樹にイルミネーションを点灯させ、長い光の道を実現することで、その話題性から集客力のアップを図りたいと思います。

このほか、地元の子どもたちが主役のクリスマスコンサートやハロウィンイベント、地元の社交場としての街バルの開催など、子どもからお年寄りまでみんながワクワクするイベントの実施で、にぎわいを創出したいと考えています。

こうしたにぎわいの創出のほか、地域コミュニティの希薄化を解消するために、加盟店(店主)や当所などの地域団体、学生ボランティアなどが参加する緑化運動やゴミ拾い活動、あいさつ運動などのコミュニティ創出事業を実施したいと考えています。そして、これらの事業の実施により、地域の防犯対策・強化にもつなげていきたいと思います」(山本会頭)

木楽座ストリートHP

「スマイル(住まう・居る)都市」を目指す‶まち〟

木楽座ストリートプロジェクトの始動でますます目が離せなくなる和泉市。こうしたまちの空気を感じてか、数年前には不動産会社が実施した「大阪府で住みたいまちランキング」で、見事1位をとったことがあるという。

こうした和泉市を、商工会議所として今後どのようなまちにしていきたいか、目指す姿などを山本会頭に聞いた。

「全国水準に比べて人口バランスが良いというアドバンテージを生かし、人口減少社会においても、持続的な発展に向けた‶躍進のまちづくり〟に取り組んでいきたいと思います。地域の商工業の発展により、市民の皆さんに活力とにぎわいを享受してもらい、安心と安全が実感できる当市を、ずっと住み続けたいと思う笑顔があふれる『スマイル(住まう・居る)都市』にするため、行政と密接に連携して推進したいと思います」

「商工会議所としては、人・産業・お金を流出させることなく、一方で外部から人・物・お金を取り込んで稼ぐという会員企業の商売繁盛につながるお手伝いをしたいと考えています。そのためには仕事をつくる(働いてもらう)、人を入れる(来てもらう・住んでもらう)、時代に合った地域づくり(安全で暮らしやすいまちづくり)が重要です。そしてその実現には“地域でお金を回し、地域でお金を増やすシステムづくり”が必要です。会頭任期中にどこまでできるか分かりませんが、このシステムづくりが、私に課せられた最大のテーマであり、全力で取り組んでまいります」(山本会頭)

和泉商工会議所新会館:平成25年4月に移転。和泉市産業振興プラザ北館が入居。より身近で機能的な商工会議所として市と連携して地域経済発展に努めている

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