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スポーツライター 青島健太の注目アスリート どんなときでも自分らしく 巨人高木投手のメンタリティー

写真提供:産経新聞

日本生命セ・パ交流戦の開催記者会見でのことだ。壇上に12球団(各1人)の選手が揃い、私が進行役で対戦したい選手や交流戦に向けての抱負を聞いた。最後には記者からの質疑応答の機会も設けられていた。ここでパ・リーグの柳田悠岐選手(ソフトバンク)と秋山翔吾選手(埼玉西武)に巨人のルーキー高木勇人投手に対する印象が質問された。

「う~ん、インタビューがおもしろい印象ですかね」と柳田選手。「テレビで高木ボールと呼ばれるスライダーを見ましたが、他のボールも見てみたいですね」と秋山選手。これを受けて今度は高木投手に感想が求められた。すると高木投手は笑顔でこう言った。「二人とも、本当に良い方々ですね」。

それがどういう意味なのか、誰もが測りかねたが、とにかく会場には不思議な笑いが湧き起こった。

柳田選手が言うように、あの日(4月5日)のお立ち台は鮮烈だった。プロ初登板に続いての連勝。しかも阪神相手に2安打の完封劇だった。「最後にこれからの抱負をお願いします」とアナウンサーが聞くと、高木投手は満場のファンに向かって言った。「僕は、僕です。これからも僕らしく頑張ります」。

このときも、東京ドームのファンは一瞬きょとんとした。それが真面目な話なのか? 笑うべき話なのか? 高木投手の真意を測りかねたからだ。しかし、その直後に球場は温かい不思議な雰囲気に包まれた。そして、それ以来私も、この言葉のファンになってしまったのだ。 「僕は、僕です」。それだけを聞くとなんだか笑ってしまうくらい当たり前のことだが、スポーツ選手、いやどんな人にとっても仕事をする上では極めて大事なメンタリティーだと思う。

「僕は、僕です」。それがどういう意味なのかは、彼のピッチングが雄弁に語っている。高木投手は、唸る剛速球で相手をねじ伏せるタイプではない。さまざまな球種を駆使し、粘り強く投げる。そして、困ったときには「高木ボール」。鋭く曲がるスライダーを思い切りよく投げ込んでくる。どんな局面でも楽観もしなければ悲観もしない。常に自分を見つめて持ち味を最大限発揮することだけに集中する。きっとそれが「僕は、僕です」なのだと思う。慌てず、騒がず、気負わず、どんなときでも自分らしくやるしかない。

青島 健太 スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている。

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