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テーマ別企業事例 緊急特集 第2弾 新型コロナウイルスに打ち克つ テレワークを導入して社員と職場を守る

事例1 従業員の協力が得られやすいコロナ禍はテレワークを始める好機

ワークスマイルラボ(岡山県岡山市)

「笑顔溢(あふ)れるワークスタイル創造提案業」を展開するワークスマイルラボは、ITツールを活用した新たな働き方を中小企業に提案している。4年前には自社で導入したテレワークにより生産性がアップし、今ではこれを多くの企業に広めている。そうした活動が認められ、2018年には総務省の「テレワーク先駆者百選」において、総務大臣賞を中小企業として初めて受賞した。

2021年卒業予定の大学生を対象にした岡山県内の希望就職先ランキングで、ワークスマイルラボは第4位に

同じ仕事を自宅でできれば問題を解決できる

「自社でさまざまなITツールを活用し、従業員の働きやすさや生産性の向上など経営課題の解決につながる働き方にチャレンジし、そこで得られた経験や制度、ノウハウをご提供しています。弊社の従業員が実験台となって新たな働き方を試し、いろいろなモデルをつくっています」と、ワークスマイルラボ社長の石井聖博さんは自社の業務内容について説明する。

同社は、明治44(1911)年に岡山県岡山市で文具店として創業し、その後は石井事務機センターという社名でオフィス向け事務機器の販売を長年行ってきた。しかし、2008年のリーマンショックにより倒産寸前に追い込まれたことから、ITを活用した新たなワークスタイルを提案する会社に業務転換。社名もワークスマイルラボに変更し、今に至っている。

同社がテレワークを始めたのは、16年4月。きっかけは当時、子育てと仕事の両立で悩むパート従業員がいたことだった。仕事にも支障が出ており、そのままでは辞めてしまいそうな状況だった。

「同じような問題は、ほかの中小企業でも絶対に起こっている。働き方を提案する会社として、これをなんとか解決できないかと考えました。その従業員はパソコン業務が主だったので、自宅でパソコンを使って同じように仕事できれば、問題解決できるのではと思ったのがきっかけでした」

そのため、最初はたった一人から同社のテレワークは始まった。「やってみたら、通勤時間がかからず子どもとの時間を増やすことができたのですが、それでも業務が普通にできただけでなく、オフィスで働いていたときよりも逆に生産性が上がっていたんです」

テレワークのマイナス面を含め管理の考え方を変えること

当時の事務員は3人で、自宅勤務の1人は電話や来客の対応ができない分、パソコン業務の量を増やし、残りの2人で電話・来客の対応をこなした。そのため業務が分業化されて効率的になり、それが生産性の向上につながったのだ。その1カ月後には事務員3人のうちの1人が交代でテレワークを行うようになり、ITの知識がなくても使いこなせるウェブ会議ツールやセキュリティー管理ツールなどを導入した。そして1年後には、外回りの営業マンも含めた全員がテレワークを活用して、自宅や出先でも事務処理をできるようにした。しかし、最初から全てがうまくいったわけではなかった。

「最初の失敗というのが、テレワークを全員一律でやらせようとしたことです。家では家族がいるのでやりにくい、出先から時間をかけてでも会社に戻ってやったほうが効率がいいという人もいました。人によってテレワークが合う合わないはあります。テレワークはあくまでも一人一人が生産性を高める働き方をするための手段の一つなので、今では各自で選べるようにしています」

その後も試行錯誤を繰り返し、さまざまな制度や方法を整備していった。出退勤の管理はパソコンやスマホを使ってクラウド上で行っている。しかし、テレワークで一番重要なのは勤怠管理ではなく、仕事の管理に対する考え方を変えることだと石井さんは言う。

「例えば事務員の場合、1日や1週間にやる仕事はほぼ決まっています。何時から何時まで働いたかではなく、時間内に決められた仕事をやってくれればいい。会社に出社していても、従業員が1日にどんな作業をしたかを全部把握したりしないのと同じです」

成果を数値化することで仕事の評価を行う

ここで大事になってくるのが、仕事に対する評価制度の変更で、これまでの時間軸ではなく、より重要になるのは成果軸だと石井さんは強調する。「時短勤務の例えが分かりやすいのですが、子育て中の方が時短勤務で1日8時間勤務を7時間にしても、テレワークを活用して8時間勤務と同じ仕事量をこなせば、それは生産性が上がったことになります。弊社では基本給は8分の7に減りますが、賞与は成果の量だけでなく、それを何時間でやったかという生産性も指標に入れているので、逆に賞与は上がるようになっています」

これ以外の評価システムでは、成果が数値化しにくい技術や間接部門でも、部門ごとにできるべき業務を細分化し、「改善できる」「1人でできる」「教えられながらできる」「1人でできない」の4段階のレベルに分け、各従業員が各業務でどのレベルにあるかを数値化することで、評価している。

「また、テレワークの導入に必要なのは機械などではなく、クラウドサービスの利用です。どこでも1カ月お試しの無料サービスがあるので、自社に合うか合わないかを気軽に試すことができます。しかも利用料は全社員で使っても月額数千円というものがほとんどなので、始めやすいと思います」

テレワークを始めるにあたっては、最初から全員にやらせるのではなく、まずは親の介護や子どもの送り迎えがある人などテレワークが必要な従業員1人からスタートし、うまくいくようになったら徐々に人数を増やしていくことを石井さんは勧めている。「コロナ問題に関係なく、テレワークは中小企業にとって経営課題の解決につながる取り組みです。今なら助成金も出ますし、従業員の理解も得やすい。テレワークを始める絶好のタイミングだと思います」

会社データ

社名:株式会社WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)

所在地:岡山県岡山市南区福浜町15-10

電話:086-263-2113

HP:https://wakusuma.com/

代表者:石井聖博 代表取締役

従業員:35人(パート社員含む)

※月刊石垣2020年7月号に掲載された記事です。

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