Q 常時使用する労働者に対して、ストレスチェックを実施することが事業者の義務になると聞きました。当社は、従業員が50人未満の事業場にあたるため、当分の間、努力義務の扱いとなりますが、制度内容や罰則などについても教えてください。
A 従業員の心の健康の保持増進を図ることを目的に、労働者が50人以上の事業場では、ストレスチェックや面接指導の実施が義務付けられました。実施に際して知り得た労働者の秘密に対する守秘義務、検査結果に対する記録や保存義務などもあり、注意が必要です。実施しないことで直接罰せられることはありませんが、所轄当局に必要な報告を怠ることになり、処罰の対象となります。
ストレスチェック制度とは
近年、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が高くなっています。従業員が心の病で突然休職や退職をすれば、貴重な労働力を失うことになります。
そうなれば周囲の従業員で業務をカバーする必要もでてきますし、モチベーションにも影響がでるでしょう。心の病が原因で自殺に至れば損害賠償問題にも発展する場合があります。
こうしたリスクを回避するには、従業員の「心の健康づくり」を推進するための企業の組織的かつ計画的な対策の実施が重要です。
ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調のリスクの高い者を早期に発見し、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的として、平成27年改正労働安全衛生法で整備されました(安衛法66条の10)。従業員が50人未満の事業場(以下、小規模事業場という)では産業医の選任が義務付け対象でないこともあり努力義務ですが、従業員の健康を考えると事業者はできる限り実施することが求められています。
ストレスチェックの実施要件
①専門家によるストレス検査
事業者は、従業員などに対して心理的な負担の程度を把握するための検査、ストレスチェックを年1回は必ず実施しなければなりません。ただし、検査の実施者は、事業者自体ではなく事業者が決めた医師や保健師などの専門家です。
ストレスチェック簡易調査票などを使用して検査を実施し、その検査結果をもとに、従業員のストレスの程度を点数化して、本人が高ストレスに該当するかどうかを判断します。高ストレスと判定された場合は、本人に検査結果を通知するとともに面接指導を受けることを促します。検査結果は、直接通知しなければなりません。また、本人の同意がなければ会社側に結果は伝えられません。
②高ストレスに対する面接指導
高ストレス判定の通知を受けた本人から面接の申し出があった場合、事業者は医師による面接指導を行わなければなりません。本人から面接指導の申し出を受ける場合にも、書面や電子メールなど、記録に残る方法で行う必要があります。
③改善のための就業上の措置
面接指導の結果、就業上何らかの改善措置が必要となれば、医師の意見も勘案して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮など労働者の実情を考慮して適切に対処します。措置内容を決定したら衛生委員会などにも報告を行います。
④検査結果の記録と保存
当該検査を行った医師などから検査の結果の提供を受けた場合には、事業者が検査結果の記録を作成します。5年間という保存期間も定められています。
本人の同意がなく事業者に検査結果が伝わらない場合は、実施者である医師、保健師などに適切に保存してもらう必要がありますので注意してください。
⑤実施状況の報告
常時50人以上の従業員を使用する事業者は、検査、面接指導の実施状況などについて所定の実施結果報告書を作成し、毎年1回、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。この報告を怠れば処罰の対象となります(安衛法100条)。 (中小企業診断士・竹内 敏則)
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