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コラム石垣 2017年10月1日号 中山文麿

昨年4月に熊本地方を襲った地震で西原村役場の地震計が極めて異常な波形を記録した。この布田川断層帯(活断層)による直下型地震は地震発生から10秒後に周期が3秒と長い長周期パルスを記録していた。通常、活断層に起因する地震の周期は1~2秒と短く、木造の家屋に甚大な被害を与えるが、超高層ビルは揺れを吸収して被害は少ない。

▼この西原村の地震計のデータを基に、工学院大学都市減災研究センターは29階建ての超高層ビルで揺れのコンピューター・シミュレーションを行った。すると、まず、下層階が大きく揺れ、次に上層階に波及して、最上階では最大2・7メートルも横に揺れることが分かった。これはビルの設計基準の5倍の大きさに達しビルが倒壊する危険がある。

▼日本にはマグニチュード7クラスの地震を起こす活断層が113カ所存在する。超高層建築の多い都心の近くにある立川断層帯や大阪にある上町断層帯はこの長周期パルスを起こす危険がある。そして困ったことにはこの長周期パルスに対して通常のダンパーや振り子型制振装置などが効かない。

▼自分が住んでいる地域の活断層にどんなものがあるかは政府の地震調査研究推進本部や防災科学技術研究所のホームページを見れば分かる。この長周期パルスは地震が起こったら突如襲ってきたり、地表に断層面が現れていなかったりする場合には被害が少ないという特徴もある。

▼活断層の地震にこのような長周期パルスが起こることが分かった以上、ビルが倒壊した後に想定外だったと言ってはならない。この問題の研究を科学的に一層深めるとともに、産官学が協力して免振や制振のための超高層ビルに対する耐震強化策に万全を期してもらいたい。

(中山文麿・政治経済社会研究所代表)

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