公正取引委員会はこのほど、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法(下請法)などの施行状況を取りまとめた「平成28年度公正取引委員会年次報告」を公表した。本稿では、同報告の中から、下請法違反行為などに関する解説について概要を紹介する。
25万件に書面調査実施
公正取引委員会は、下請け事業者からの自発的な情報提供が期待しにくいという下請け取引の実態に鑑み、中小企業庁と協力し、親事業者およびこれらと取引している下請け事業者を対象として定期的に書面調査を実施するなど違反行為の発見に努めている。また、中小事業者を取り巻く環境は依然として厳しい状況において、中小事業者の自主的な事業活動が阻害されることのないよう、下請法の迅速かつ効果的な運用により、下請け取引の公正化および下請け事業者の利益の保護に努めている。
平成28年度においては、親事業者3万9150件およびこれらと取引している下請け事業者21万4500件を対象に実施した書面調査などの結果、下請法に基づき11件の勧告を行い、6302件の指導を行った。
23億円相当が原状回復
28年度においては、下請け事業者が被った不利益について、親事業者302件から、下請け事業者6514件に対し、下請け代金の減額分の返還など、総額23億9931万円相当の原状回復が行われた。
このうち、主なものとしては、下請け代金の減額事件においては親事業者が総額18億4452万円を下請事業者に返還、返品事件においては親事業者が下請け事業者から総額3億3957万円相当の商品を引き取り、買いたたき事件においては親事業者が総額8411万円を下請け事業者に支払い、下請け代金の支払い遅延事件においては親事業者が遅延利息として総額6958万円を下請け事業者に支払った。
親事業者からの自発的申し出も
公正取引委員会は、親事業者の自発的な改善措置が、下請け事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み、公正取引委員会が調査に着手する前に、違反行為を自発的に申し出、かつ、自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については、親事業者の法令順守を促す観点から、下請け事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし、この旨を公表している。
28年度においては、上記のような親事業者からの違反行為の自発的な申し出は61件であった。また、同年度に処理した自発的な申し出は86件であり、そのうちの10件については、違反行為の内容が下請け事業者に与える不利益が大きいなど勧告に相当するような事案であった。
公正取引委員会は、下請け代金の支払い遅延、下請け代金の減額、買いたたきなどの行為が行われることのないよう、28年11月25日、約3万3000件の親事業者および約650の関係事業者団体に対し、下請法の順守の徹底などについて、公正取引委員会委員長および経済産業大臣連名の文書をもって要請を行った。
(9月26日)
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