独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)はこのほど、「ジェトロ世界貿易投資報告」を公表した。2016年の日本の貿易収支は376億ドルの黒字で、6年ぶりの黒字となった。
2016年の日本の貿易は輸出が前年比3・1%増の6446億ドル、輸入が6・4%減の6070億ドルとなった。鉱物性燃料の赤字縮小を主因に、貿易収支は376億ドルの黒字となり、10年以来6年ぶりに黒字を記録した。17年上半期も96億ドルの黒字と、貿易収支は黒字基調に戻りつつある。
輸出では、消費が底堅い米国(3.3%増の1300億ドル)が、自動車や建設機械などが伸び、4年連続で最大の輸出相手国となった。中国は半導体製造機器や自動車・同部品が増加したことが寄与し、4・2%増の1139億ドルとなった。EUはドイツ(自動車)、英国(鉄道車両)などが伸び、11・2%増の734億ドルに増加した。
世界では消費財が堅調であったが、日本では乗用車に加えて、半導体製造機器や飛行機・ヘリコプターなどの部分品など、中間財、資本財で伸びた品目も多く、強さを発揮した商品が多い。
対外直接投資 過去最高を更新
16年の日本の対外直接投資は、前年比24・3%増の1696億ドル(国際収支ベース、ネット、フロー)であった。同じ基準で比較可能な1996年以降では、これまでのピークの2013年(1556億ドル)を上回って過去最高を更新した。主要国・地域別では、EU向けが前年の約2倍に拡大したが、主に英国への投資増によるものである。米国は全体の3割を占め、7年連続で最大の投資先国となっている。
ジェトロのアンケート調査によると、日本企業が国内外に有する販売や生産などの拠点・機能を再編する際には、中国にある拠点・機能をASEANへ移管するパターンが増加傾向にあり、日本企業のASEANシフトが続いている。
16年度の日本企業の海外売上高比率は56・5%と高水準が続いている。地域別では、近年、米州の売上高比率が上昇を続けており、26・3%と売上高全体の約4分の1を占めた。
16年の対日直接投資(国際収支ベース、ネット、フロー)は349億ドルと、15年(56億ドル)の約6倍の規模となり、比較可能な96年以降で最大の投資額となった。地域別では、欧州が医薬品や自動車部品分野でのM&Aなどにより大幅に増加した。
16年末の対日直接投資残高は27兆8404億円となり、GDPに対する比率は5・2%と初めて5%台となった。対日投資直接残高に占めるアジアの構成比は18・0%に拡大し、主要な投資元としての存在感を増している。
米中の輸出入 2年連続で減少
16年の世界貿易(商品貿易、名目輸出額ベース)は、前年比3・1%減の15兆6201億ドル(ジェトロ推計)となり、2年連続で減少した。連続でマイナス成長を記録するのは、1981~83年以来。貿易数量(輸出ベース)は0・2%減と横ばいで、2010年以降で最も低い伸び。世界貿易額は15年第3四半期を底に減少率が縮小傾向で、17年通年ではプラス成長に転じる見通し。
輸出入とも2年連続減少した米国と中国、資源価格の低迷を背景に減少した資源輸出国(41新興・途上国および7先進国)の貿易が世界貿易額を押し下げた。一方、ドイツなど欧州諸国は比較的堅調であったほか、ベトナムの輸出入、フィリピンの輸入が高い伸びを見せた。商品別では、世界貿易額の減少の約8割が資源関連商品の減少で説明できる。多くの品目の貿易が減少する中、輸送機器やタービン、医薬品、産業用ロボット、半導体製造機器、集積回路などが増加した。
(報告書の詳細は、https://www.jetro.go.jp/news/releases/2017/7aea93e5ad0dc1c8.htmlを参照)
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