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コラム石垣 2020年8月1日号 丁野朗

本年4月、文化庁・観光庁の共管による「文化観光推進法」が成立、5月1日に施行された。正式名称は、文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律である。その目的には、「文化の振興を、観光の振興と地域の活性化につなげ、これによる経済効果が文化の振興に再投資される好循環を創出すること」と書かれている。

▼では、なぜいま「文化観光」なのか。法律には、文化政策と観光政策の連携が強く期待されている。文化財などの保全は重要だが、従来から文化財部局は観光的活用に関して概して消極的であった。他方で旅行業界など観光事業者は文化財や文化資源の価値をきちんと理解していないことも少なくなかった。

▼この法律に基づき、博物館などの文化観光拠点を中核とした「拠点計画」と、エリア全体の文化観光推進を図る「地域計画」を策定し、これら計画に沿った事業に、5年間にわたり支援措置を行う。既に6月末には1次募集を終了し、審査を経て、8月中旬には、認定地域での事業が開始される予定である。

▼しかし、「水と油」と揶揄(やゆ)されてきた文化と観光・産業・都市づくりなどの分野の連携には多くの課題も横たわる。その一つは、文化観光を推進するための推進体制づくりである。文化財部局と観光等部局は従来あまり接点もなく、連携がとれていたとはいえない。そこで、首長部局などを核とした、新たな推進体制づくりが不可欠である。文化財と観光の二つの分野をコーディネートできる新たな人材の養成も重要である。新しい酒は新しい革袋に盛れのたとえではないが、これらの課題を解決し、新たな文化観光が定着することを願いたい。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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