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コラム石垣 2020年8月21日号 中村恒夫

「国家公務員の定年延長が見送られ、ホッとした」と情報関連企業の人事担当役員は安堵(あんど)した表情で話してくれた。公務員の65歳定年が確定すれば、民間企業もいずれ追随しなくてはならなくなる。給与水準の在り方、転勤の可否、勤務評定の実施、退職金の支払い時期など解決すべき課題が押し寄せてくる。こうした懸案はすべて労働組合との協議事項になる。労組は一般社員の労働条件改善には真剣に取り組むが、管理職を経験して雇用を延長された社員に対し給与を上積みすることには消極的だ。「総人件費に上限がある以上、一般社員の『取り分』が減る恐れがあるからだ」と先の役員は指摘する。

▼新型コロナウイルスの感染拡大で、なし崩し的にテレワークを拡大した企業は少なくない。この面でも、仕事の仕分け、勤怠管理、通勤交通費や自宅光熱費の扱いといった面で、クリアすべき課題が多い。もともと、大半の企業が労務上の最優先のテーマとして捉えていたのは「同一労働同一賃金」への取り組みだ。そこへ、テレワークの要素が加わり「複雑な連立方程式を解く必要が出てきた」(先の役員)というわけだ。

▼例えば、正社員と非正規労働者とを区別する条件の一つとして「転勤」がある。仕事がテレワーク中心になれば、転勤の有無を理由に区別することは難しくなる。超過勤務をしにくいため派遣社員として働く子育て中の母親が、評価の基準が労働時間でなく成果中心に変われば、正社員への登用を求めてくる可能性がある。

▼労務管理でもデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが止まるとは考えにくい。65歳への定年延長に関しても、こうした変化に沿って考える必要があろう。

(時事総合研究所客員研究員・中村恒夫)

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