2018年5月23日に「中小企業の特許料金の一律半減制度」を盛り込んだ改正特許法が国会で成立し、5月30日に公布された。全ての中小企業を対象に、19年4月より施行される見込みだ。日本商工会議所の知的財産専門委員会(委員長荒井寿光・東京中小企業投資育成相談役)では、10年度より毎年、米国の制度を参考に特許料金減免制度を中小企業に対して一律に適用するよう政府へ要望してきた。
今回の改正では、特許法の他に、不正競争防止法、工業標準化法などや、著作権法の一部がそれぞれ改正された。各法改正のポイントは次の通り。
■中小企業の特許料金の一律半減制度の導入など(特許法など) これまで、特許料金の減免を受けるためには、赤字企業であることなど一定の条件が必要だった。今回の改正で、中小企業であれば、一律に特許料の半減措置を受けることができるようになる。これにより、審査請求料および特許料(1~10年分)、国際出願手数料が半額となる。
■知財訴訟における証拠収集の強化(特許法など) 特許権などの権利者(以下、権利者)は、権利侵害の疑いのある者(以下、被疑侵害者)を訴える際、権利侵害されたことを証明する責任があるが、権利侵害をしている証拠は、被疑侵害者が保有していることが多い。そのため、裁判所は被疑侵害者に対し、書類提出命令を出すことができるが、特許権などの内容は、高度に専門的・技術的であるため、これまでは裁判所が書類提出命令を出しづらかった。
そこで今回の改正では、(当事者間の同意に基づき、)裁判所が被疑侵害者に対してインカメラ手続き(注)により書類の提示をさせ、権利侵害訴訟に必要な書類かどうかを判断した上で、書類提出命令を出せるようになる。これにより、権利者は適正かつ迅速な証拠収集が可能となる。
また、インカメラ手続きの際は、技術的なサポートを行うため、裁判所以外に中立的・技術的専門家が関与できるようになる。
(注)営業秘密の漏えいを防止するために、所有者が提示した書類を裁判所だけが閲読する手続き
■データの不正取得・使用・提供に対する差し止めの創設など(不正競争防止法) IDやパスワードなどの技術的な管理を施して提供されるデータ(営業秘密では保護されない、社外に限定的に提供することを前提とするもの)を不正に取得・使用・提供する行為を、新たに「不正競争行為」とし、これに対する差止請求権などの民事上の措置が創設される。
また、暗号などのプロテクト技術(技術的制限手段)の効果を妨げる「プロテクト破り」を可能とする機器の提供などだけではなく、「プロテクト破り」を行うサービスの提供なども不正競争行為として追加する。
■日本工業規格(JIS)の対象範囲拡大および制定手続きの迅速化など(工業標準化法) 標準化の対象にデータ、サービスなどを追加する。また、「日本工業規格(JIS)」を「日本産業規格(JIS)」に、法律名を「産業標準化法」に変更する。
JISの制定手続きを見直し、規格化までの期間を従来の1年から最速で3カ月程度に迅速化する。 その他、認証を受けずにJISマークの表示を行った法人などに対する罰金刑の上限を、現行の100万円から1億円に引き上げる。
■柔軟な権利制限規定の整備(著作権法) 著作物の利用をより円滑に行えるようにするために、これまで著作権者の許諾が必要かどうか曖昧だった次のような行為が、権利者の許諾なくして利用可能となる。①インターネットで書籍のタイトルを検索する際に、書籍の表紙や一部内容を表示する行為、②大量の論文データを収集し、対象の論文と照合して盗用がないかチェックし、盗用箇所に該当する正規の論文の一部分を表示する行為。 (日本商工会議所産業政策第一部)
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