政府はこのほど、2017年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術の振興施策)を閣議決定した。白書では、製造現場の現状と課題および国が実施した施策などについて記載。その上で現場力の維持およびIT、IoTの積極的な活用が重要であると指摘した。また、経済産業省の調査結果を基にした顕在化する人材確保や人材不足などの課題分析と、その課題解決にITやIoTなどを活用している中小企業の具体的な取り組み事例も紹介されている。特集では、その概要を紹介する。
第1章 「わが国ものづくり産業が直面する課題と展望」のストーリー
第1節 わが国製造業の足元の状況認識
〇円高などを背景に、わが国製造業の足元の業績は足踏み状態。グローバル市場の不透明感が強まっているが、今後の見通しについては、明るい見通しを持つ企業が比較的多い。
〇現場力の維持・向上の観点から、技能人材などの確保が課題として顕在化。現在は定年延長などの取り組みを中心に推進しているが、今後はロボットやITなどの積極活用にその重点を移す意向。(図1)
〇また、第4次産業革命が言われる中、現場のデータ収集・活用への意識は相当程度高まりが見られるが、具体的なソリューションなどへの活用にまでは至っていない状況。
〇コネクテッド・インダストリーズ(ネットワーク化を通じた付加価値の創出と、技術力や現場力を生かせる人間本位の産業の在り方)の構築に向け、官民挙げての取り組みを推進。
第2節 産業タイプ別の第4次産業革命への対応
〇前記の通り、製造業全体において、IoTをはじめとする第4次産業革命に関連したデジタルツールの利活用の重要性が高まる一方、具体的用途への活用が課題に。具体的には、データ取得に際し重要となるエンドユーザーへの近さや生産プロセスの違いに着目し、①最終製品、②部品/部材、③素材、④設備に製造業を類型化し、事例紹介やその特徴をまとめる。 (事例省略)
第3節 わが国製造業の変革の方向性
〇前年白書において、ものづくり企業が新たな価値獲得を行うべく、単なるものづくりにとどまらないサービス・ソリューション展開を目指す「ものづくり+(プラス)企業」への変革を提唱した中、変革に向けて有効と考えられる取り組みの方向性および具体的な先進取り組み事例などを、「ものづくりを巡るトレンド」としての整理、紹介。(※具体的には、顧客起点、全体最適、外部経営資源の積極活用、プラットフォーム構築など)(図2)
〇また、わが国の強みである「強い現場」を引き続き維持・向上させることも重要。技能人材などの人材確保の課題が顕在化しつつある中、そうした課題の克服に向けた取り組みに焦点を当て、現下の環境変化が進む中での「強い現場」への取り組みの方向性を、BCP対策も交え提示する。
(事例省略)
第2章 「ものづくり産業における人材の確保と育成に関する課題と対応」のストーリー
1 ものづくり産業における中小企業の現状
〇国内の製造業のうち99%以上を占める中小企業を取り巻く状況としては、事業所数、従業者数共に減少傾向にある。(図3―1・2)
〇中小製造業の人材不足感が進んでおり、今後、わが国の生産年齢人口の大幅な減少が見込まれる中で、人材確保に一層の厳しさを増すことが考えられる。
2 ものづくり産業における中小企業の人材確保および育成の現状
〇ものづくり産業を巡る社会・経済環境の変化に対する認識として、大企業、中小企業共に「製品の品質を巡る競争の激化」と回答した割合が高くなっている。
〇「製品の品質を巡る競争の激化」「技術革新のスピードが加速」を感じている中小企業は、人材を採用した、人材育成などの「成果が上がっている」と回答した割合が共に高くなっている一方で、「ものづくりに対する若者の関心の弱さ」を感じている中小企業は、人材を採用した、人材育成などの「成果が上がっている」と回答した割合が共に低くなっている。
〇人材確保などの課題を見ると、中小企業は、大企業と比べて、「若年ものづくり人材の確保が困難」と回答した割合が高くなっており、人材の確保に関心が強い半面、その後の定着、育成にまで十分な意識が及んでいない。(図4)
〇人材の定着を促すための取り組みを見ると、中小企業は、大企業と比べて、「能力開発・教育訓練の実施」と回答した割合が低くなっており、従業員の能力開発や教育訓練に十分手が回っていない。
〇今後、ものづくり産業の成長に求められる人材像を見ると、中小企業は、大企業と比べて、「熟練技能者」を求める優先順位は高くなっている一方で、「生産技術職」を求める優先順位は低くなっている。今後、技術革新が激しくなる中で、中小企業においても、生産技術職の確保、育成が課題になってくる。(図5)
3 ものづくり産業における中小企業の人材の定着・育成などのために行われている取り組み
〇課題への対応として、ものづくり中小企業が実際に行っている人材育成などの取り組みの実例を紹介。
(実例省略)
第3章 「ものづくりの基盤を支える教育・研究開発」のストーリー
第1節 超スマート社会の実現に向けた優れたものづくり人材の育成
〇大学における情報技術人材の育成機能を強化するため、課題解決型学習などの実践的教育の充実を図るとともに、社会人の学び直しのための体系的教育プログラムの開発推進を検討。
〇科学技術イノベーションを推進する人材を育成するため、優れた若手研究者の育成・活躍促進や研究環境の整備など、さまざまな取り組みを実施。
〇グローバル化した社会で活躍できる人材を育成するため、大学の体制や教育プログラムを国際化するための取り組みを実施。
〇女性研究者の研究支援や、女子中高生の理系選択の支援を実施するなど女性の活躍を促進。(図6)
第2節 ものづくり人材を育む教育・文化基盤の充実
〇小学校、中学校、高など学校において、理数教育の充実やプログラミング教育などの取り組みを実施。
〇高等専門学校、専門高校、専修学校などにおいて、企業や地域産業などと連携した実践的な職業教育を通じたものづくり人材の育成を実施。
〇各学校段階におけるキャリア教育・職業教育の充実のための取り組みを実施。また、実践的な職業教育の推進のため、実践的・専門的プログラムを文部科学大臣が認定する制度を実施。(図7)
〇ものづくりの理解を深めるための生涯学習の支援や、伝統的なものづくり技術などの伝承のための取り組みを実施。
第3節 超スマート社会を実現するための研究開発の推進
〇「ものづくり技術」は製品などに新たな価値を付加し、わが国の経済を支える産業の国際競争力の強化などに貢献。最先端の研究者やものづくり現場のニーズに応えられるわが国発のオンリーワン、ナンバーワンの先端計測分析技術・機器の開発などを産学連携で推進。
〇「知」の拠点である大学などと企業の効果的な協力関係の構築は、ものづくりの効率化や高付加価値化に資する。産学官連携を活用し、オープンイノベーションの推進や大学発ベンチャーの創出促進、地方創生に資するイノベーションシステムの形成などの取り組みを実施。(図8)
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