「もう一つのわが家」となる保育園づくりを
一般社団法人 地域サポートネットワークとっとり 代表理事 山口 朝子(やまぐち・あさこ)
ボランティアから企業へ
私は現在、鳥取市内で認可保育園2園と、カルチャー教室やカフェを併設した子育て支援センター、農業体験などを行う自然体験型の保育施設を運営しています。従業員数は23人。始まりはボランティア団体として設立した育児サークルでした。市内の公共施設に部屋を借り、一人で始めた事業でしたが、活動に共感してくれる人たちが徐々に増え、その協力を得て設立16年目に法人化しました。
この事業を始めようと思ったきっかけは、第2子出産直後に夫の転勤で知る人もない土地に移り、未熟児で生まれた双子と長男の3人の子育てに悪戦苦闘していたとき、地域の育児サークルに支えられ、助けられたことです。この経験から、慣れない育児による母親の心理的負担や束縛感を解消するには身近な子育て支援施設が必要だと痛感し、わが子が幼稚園や小学校に入学して手が離れ始めたのを機に育児サークルを立ち上げ、子育て支援活動を始めました。
「子育て中に集える居場所づくり」「子どもを安心して預けられる場所の提供」を柱に活動していましたが、当時はボランティアスタッフだけで運営しており、活動に限界が見えてきたのです。そこで、活動を継続していくため、人的にも盤石な経営基盤をつくろうと思い、法人格を取得、起業しました。
少人数保育を実践 労働環境改善にも取り組む
法人設立後は、スタッフをパート従業員に採用。4カ所の活動拠点を一つにと考えていたとき、市から「中心市街地の大型空き店舗を、にぎわい創出のために活用してほしい」との話をいただきました。そこで、子育て世代の「憩い」「学び」「遊び」の場として活用できる子育て支援施設「すぺーすComodo(コモド)」を開設。今では年間3万5千人が集う場になり、「まちに昔の風景が戻った」と商店街の人にも喜ばれています。
さらに長年の夢だった保育園を開設。最初は無認可だったため保育料は高額でしたが、入園希望者は大勢いました。また、中山間地域の廃園した幼稚園を改修し、まちなかでは体験できない自然保育や農業体験が可能な施設「河原第二園舎うさぎの里」をオープン。現在は、保育園も市の認可を受け、二つ目の認可保育園も開設しています。
保育園のコンセプトは「ママのプロがいるもう一つのわが家」。少人数制で、定員12人に対して5~6人の保育士を配置しています。保育士は、子ども一人一人に丁寧な指導計画を作成し、各人の特性を把握してそれをいかに伸ばすかを工夫して接しています。本当にプロフェッショナルな仕事だと感じます。保育士にはいつも笑顔で子どもと接してほしいので、労働環境改善にも務めてきました。
おかげさまで入園希望者が増え、今では競争率10倍を超える人気保育園になりました。三つ目の保育園を望む声もあり、現在新設も検討中です。これからも、地域に根差し、地域から愛される事業を展開していこうと思っています。
会社データ
社名:一般社団法人 地域サポートネットワークとっとり
所在地:鳥取県鳥取市末広温泉町132
電話:0857-29-6101
創業:2010年
事業概要:医療・保育(鳥取市認可子育て支援センター・小規模保育所の運営)
HP:http://www.comodo-suku2.com/
※月刊石垣2018年6月号に掲載された記事です。
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