Q 当社では、出退社管理はタイムカードを使用していますが、働き方改革の一環で労働関連法が改正されて「労働時間の客観的な方法による管理義務」が課せられることになったと聞きました。タイムカードによる管理では不十分なのでしょうか。対応すべきことがあれば教えてください。
A 従業員の健康管理の観点から労働安全衛生法が改正され、労働時間の客観的な方法による管理が義務となり、時間管理の適正化や正確性が求められることになりました。タイムカードでは打刻ミスや勤務時間の集計ミスも起こりやすいので注意が必要です。タイムカードによる時間管理のルール、記録内容、記録の保管状況などを確認し、求められる労働時間管理ができているか点検しましょう。直出直帰や在宅勤務などで自己申告となる場合の運用の定めについても確認が必要です。
中小企業も求められる働き方改革
働き方改革関連法の施行に伴い、従業員の健康管理の観点から労働安全衛生法が改正され、「労働時間の客観的な方法による管理」が義務となりました。2020年4月からは、時間外労働、いわゆる残業時間の上限を規制する改正労働基準法の適用が始まっています。
使用者には、全ての労働者について労働時間の状況を把握し適切に管理する責務がありますが、今後は時間管理の適正化や正確性が一層求められることになります。
労働時間管理の要件
労働時間管理は、タイムカードによる記録、PCなどの使用時間の記録などの客観的な方法や使用者による現認が原則ですが、労働日ごとに始業時刻や終業時刻を記録使用者が確認して、それを基に何時間働いたかを把握・確定しなければなりません。
客観的な記録を裏付ける管理上の運用ルールがあり、正しく運用されていることが求められます。例えば、時間外労働に関する定めの場合、その労働時間は、残業命令書、時間外労働の事前申請書、これに対する報告書などに基づいて運用されていることが要件になります。真の労働時間はそうした記録や書類が整っていて算出できます。こうした根拠となる書類と客観的な記録とを突き合わせて妥当性を確認して、出勤簿や勤務記録表を確定する必要があります。
打刻したタイムカードは賃金計算の基礎データですが、長時間労働をチェックする業務の負荷状況を把握するための重要な情報としても活用するために、健康管理を含めて正確性を高めるように入力したタイミングで確認をして、入力ミスなどがあればただちに是正するような対応が必要です。
労働時間管理状況の点検
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインなどを参考に、労働時間管理の状況を確認します。
①始業・終業時刻の確認・記録
業務の開始時刻や終了時刻とタイムカードの打刻に大きなズレが生じていたり、管理監督者の時間管理ができていないと労働時間 の客観的な把握義務を果たしていることになりません。
②運用ルールの順守確認
「労働者は、始業及び終業時にタイムカードを自ら打刻し、始業および終業の時刻を記録しなければならない」ことを就業規則に定めてあるでしょうか。時間外労働の運用方法も定めておくことが必要です。そうしたルールを順守した運用ができているかどうかを確認します。
③労働時間の記録・書類の保存
勤務記録のタイムカードは3年間の保管が義務付けられているので、扱いに問題がないか、紛失などはないかを確認します。残業命令書や労働時間に関する報告書も突き合わせできる状態にあることが重要です。
昨今テレワークや在宅勤務でタイムカードを打刻できない場面も増えてきています。このような中で労働時間を把握する手段については一定の措置を講じておくことが必要です。先のガイドラインにも自己申告に基づく時間管理の運用について示されています。次号ではそのポイントを解説します
(中小企業診断士・竹内 敏則)
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