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こうしてヒット商品は生まれた! Shupatto(シュパット)

両端をシュパッと引っ張ると一気に畳めて、クルクル巻けば手のひらサイズになる。現在9タイプのシリーズ商品を展開中。左は定番サイズの「Shupatto コンパクトバッグM」1980円、右のLサイズは2480円(ともに税別)

2022年に創業150周年を迎える生活雑貨メーカー・マーナ。長い歴史の中で数々のアイデアグッズを世に出し、ヒットに導いてきた同社で堂々の看板を張っているのが、15年に発売されたコンパクトバッグ「Shupatto」だ。利用者の潜在的な不満を取り除きつつ、スタイリッシュな見た目と用途の広さを実現したことで多くのユーザーを魅了している。

「簡単に畳める」はエコバッグの重要ポイント

今年の7月1日からプラスチック製レジ袋の有料化がスタートした。それにともない、エコバッグの需要が急増している。すでに以前からさまざまな用途にエコバッグを愛用する人はいたし、普段使いする中で使い勝手に小さな不満を抱くことも少なくなかった。

そうした潜在ニーズに応えるべく登場したのが、生活雑貨メーカー・マーナが販売する「Shupatto」である。同商品最大の特長は、本体に蛇腹状の折り目がついていて、両端を引っ張ると一気に畳めることだ。それをクルクルと巻いてボタンを留めれば、手のひらに収まるコンパクトサイズになり、バッグの中でもかさばらない。使うときはサッと広がり、荷物を入れるとその重さで袋口が絞られ、中身が見えにくい設計になっている。見た目がおしゃれで使うシーンを選ばず重宝だと、多くのユーザーから絶大な支持を集めている。

同商品を開発したのは、同社開発部プロダクトデザイナーの菊田みなみさんで、着手したのは入社1年目のときだという。

「実は当時、同期生の企画が先に商品化され、ヒットしていたので、私もよい商品をつくらなければと少し焦りを感じていたんです。そんなとき先輩から『簡単に畳めるエコバッグがあったらいいよね。やってみたら?』と声を掛けてもらったことが、最初のきっかけでした」

ひと口にエコバッグといってもさまざまな形があるが、「折り目に沿って畳みにくい」「付属の袋に元のように戻せない」「付属の袋をなくしてしまう」など何かしら不満があった。しかし、菊田さんを含め多くの人が「そういうもの」とあきらめて使っていることに着目し、「そこを変えよう」と考えた。

新しい形のヒントを求めて1年、試作に1年

とはいえ、不満を解消する形にすぐにたどり着いたわけではない。市場にはすでに多様なタイプが存在しているため、新しい形状を生み出そうとしても、既存のものばかりが思い浮かんでしまい、差別化に苦しんだ。

「一つのことをこんなに考えたことはないっていうくらい、ずっと形のことを考えていました。鼻をかむときも、ティッシュはどう畳まれているのか気になったり、ありとあらゆる構造物を見ては何かのヒントにならないかと思っていました」

生みの苦しみの中にいた菊田さんにヒントを与えてくれたのは、食品工場などで使われている帽子だった。同社でも物流センターで新人研修を行う際に使用するそうで、はじめは蛇腹状に小さく畳まれているものを広げて頭に付ける。

「研修中はずっと帽子をかぶっていて、昼休みになるとポケットにしまっていたんですが、それをいかにきれいに畳んだり広げたりできるかみたいな遊びをしていたんです。そんなことをふと思い出して、あっ、蛇腹にしたらどうかなと」

ようやくトンネルの出口が見つかり、まずは手のひらサイズの小さな布を蛇腹状に折り、両端を引っ張れば畳めることを確認した。次に原寸大の布をミシンで縫い、「これならいける!」と確信した。ただ、従来品にはない形状だけに、使い方がわからないという状況を極力取り除かなければならない。そこで持ち手の色や、畳む際に引っ張るテープの色を変えるなど、触れる部分を分かりやすくすることで、感覚的に使ってもらえるように工夫を凝らした。

「畳みやすさを追求するために、生地にプリーツ加工を施すことにしました。その加工がしやすいことや、バッグとして長く使ってもらえる強度、コンパクトになる厚さ、携帯しやすい軽さなどを重視して、生地にはポリエステルを採用し、何度も試作と試験を繰り返しました」

2015年11月、実に構想1年、試作1年を経て、「Shupatto コンパクトバッグM(サイズ)」が発売された。

使い方が広く認知されるや一気に人気に火が付く

当初、バイヤーの評価は上々だったが、売れ行きは期待したほどのものではなかった。やはり何の説明もなしに使い方を理解するのは、少々難しかったようだ。そこで商品の特徴を分かりやすく伝えるために、説明動画を作成し、店頭やウェブ上で公開した。さらに、店頭でお試しができるようにサンプルを設置したり、実際に広げてもらえるようなパッケージにするなど工夫した。

地道な販促活動が3年ほど続いたある日、テレビ番組に取り上げられたことで一気に認知が広がる。そこで商品の使い方を実演で紹介してもらえたことや、すでに愛用しているユーザーの口コミが相乗効果となり、急速に売れ行きを伸ばした。その後、ショルダーバッグ、リュックサック、ボストンバッグ、保冷バッグなどシリーズ商品が増えるにつれて、1人で型違いや色違いを複数購入したり、プレゼント需要も増加し、シリーズ累計500万個超を売り上げる人気商品となった。

「ヒットにつながるまで時間が掛かりましたが、さまざまな人の意見に耳を傾けることの大切さを知りました。今後も使ってくれる人の暮らしが少しでも豊かになるような商品開発をしていきたいですね」と飽くなき探求心をのぞかせた。

会社データ

社名:株式会社マーナ

所在地:東京都墨田区東駒形1-3-15

電話:03-3829-1111

HP:https://marna.jp/

代表者:名児耶美樹 代表取締役

設立:1950年

従業員:160人

※月刊石垣2020年8月号に掲載された記事です。

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