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テーマ別企業事例 ものづくりで勝つ「新リーダー論」 “異端児”は、なぜ勝ち抜けるのか

事例3 自動車部品と住宅部品の2つの主軸で売り上げが2倍に

宇都宮工業(愛知県豊川市)

天井には遮熱工法を施し職場環境に配慮した本社工場と事務所。大規模な出荷センターを併設し、万全の物流システムを構築している

自動車部品を主軸にした金属プレス工業を得意とする宇都宮工業。1994年に新規開拓したのは大手住宅メーカーの住宅部品の製造だ。建築業界のニーズを素早く、的確にキャッチし、今や年商46・3億円(2016年現在)を叩き出す。社長就任から約15年で業績を2倍に伸ばした社長もまた、異業種から来た“異端児”だった。

自動車業界だけでなく建築業界へも販路拡大

2015年に本社工場、事務所を移転した宇都宮工業は、東名高速道路豊川インターチェンジに近い、愛知県企業庁が開発した内陸工業用地に建つ。自動車部品や住宅部品のメーカーとして、地球環境の保全活動にも積極的に取り組んでおり、本社工場の屋根には全面にソーラーパネルを設置。職場環境にも配慮した遮熱工法の近代的な佇まいが印象的だ。

「アクセスのいい立地なので、大規模な出荷センターを設けて、さらにスピードアップが図れる物流システムを構築できます」

そう語るのは代表取締役社長の土井昌司さんだ。社名の宇都宮は創業者の名字で、土井さんは婿養子として三代目を継いだという。

「結婚の条件でしたので」と苦笑するが、当時は大手百貨店に勤めており、畑違いの製造業の経営者になるには相当の覚悟が必要だったことは容易に想像できる。

「最初は飛び交う専門用語に全くついていけませんでした。百貨店の店頭には不良品なんてないのが当たり前ですが、製造ラインではどうしても不良品は生まれます。こういうところからも、感覚や発想のズレを感じていました」

そこで土井さんはトヨタ自動車の第一次下請け会社で1年間〝修業〟し、結婚2年目の1994年に宇都宮工業に入社する。そして異業種からの転身だからこそ、製造業を客観的に捉えて改善策を模索した。

「百貨店で求められるのは販売力で技術力ではありません。一方、製造業は技術があっても売り込むことは苦手です。個人的に流通業にも興味があったので、なんとか販路拡大で会社に貢献できないかと考えました」

そして過去の取引先を見直すなかで目に留まったのが、74年から取引のある大手住宅メーカーだった。

的確かつ素早い対応でニーズと信頼に応える

「当時は製造する部品の98%がトヨタ自動車をはじめとした国産自動車メーカーのものです。住宅メーカーとの取引といっても、細い糸のようなつながりで、購買部に行っても商売に結び付く情報がもらえませんでした。そこで矛先を変えて施工現場を教えてもらい、施工業者の方たちに困っていることを直接聞いて回ったんです。今ほど個人情報の扱いが厳しくなかった時代だからできたことですけどね」

聞き取り調査で見えてきたのは、施工業者の高齢化、後継者不足、脚立に乗った作業による転倒事故の危険性などの不安要素だった。これらを得意とする金属プレス加工で解決するべく、最初に開発したのが脚立の転倒防止策として発案した「新天井吊金物」で、住宅メーカーから発明考案賞を授与された。これが現場で高く評価され、住宅メーカーでも話題になる。

「おかげで面白い会社だと注目されて、徐々に情報を住宅メーカーよりもらえるようになりました。当初6アイテムだった製品も今では約2万アイテムにも上りますが、この時の現場のニーズを自ら拾い、解決策を提案できたことが突破口になりました」

また、特許製品でもある排水管の高さをワンタッチで調整できる「配管レベル調整金具」を開発し、関連企業を紹介してもらうなど建築業界への足掛かりになっていく。さらに2000年にはバリアフリー床対応の旋回ドアのシール装置「ドアボトム」が豊川商工会議所会頭賞を受賞し、「これが大きな自信になりました」と振り返る。実際、受賞の3年後には住宅製品専用工場を稼働させ、工業化住宅製品の製造に本腰を入れていった。

「自動車部品では低コストで高品質、軽量で丈夫な金属プレス加工が求められて、それは住宅部品よりもシビアです。自動車業界で培ったノウハウ、技術力が他社との差別化になり、現場のニーズを的確に捉え、いち早く、それも付加価値の高い製品として提案できることが強みになっていきました」

「私の改善提案」で社員の意識改革を徹底

同社は工業化住宅製品が主軸の一つに成長したことで、08年のリーマン・ショックでも打撃を受けず、快進撃を続けた。その原動力になったのが、06年から始めている全社員参加の「私の改善提案」だ。これはトヨタ自動車が実践している取り組みで、現状の改善点を社員一人一人が考え、改善するもの。コスト意識の浸透や、生産性向上に効果があるとされる。

「当時、トヨタでは一人当たりの提案件数が年間8・4件でした。それを目標に掲げ、2年後には一人平均10件以上、総数約700件に達しました」

工場内の動線、レイアウト、仕組みが次々改善され、その効果は金額にすると年間数千万円にも及ぶという。提案は数ではなく質と行動力に重きを置き、発想が良くても行動に移さなければ評価は低い。スタッフ部門には月1回、製造部門には2カ月に1回提出するノルマを課す。前倒しに数多く提案することを奨励し、年度末にまとめて提案するとマイナスになるというルールも設けた。毎年11月に改善事例発表会を実施し全社員のレベルアップを図るとともに、効果金額も社員に還元している。また、上位3人にはおせち料理、フグ料理、すき焼きの三つから選べる特典も、社員やその家族に好評だという。

この改善提案に加え、トヨタ生産方式を導入して小ロット多品種をスピーディーかつ安定供給できる体制にも磨きをかけていく。改善提案の評価基準ともリンクさせ、提案内容そのものの質向上にもつなげていった。

「2018年からは、自社設計による3Dプリンターを活用し、さらに早い製品開発を可能にする体制を整えています」

他の追随を許さない生産体制の進化はまだまだ加速しそうだ。

会社データ

社名:宇都宮工業株式会社

所在地:愛知県豊川市大木町柏木2番地1

電話:0533-93-2626

HP:http://www.u-m.co.jp/

代表者:土井昌司 代表取締役社長

従業員:122人

※月刊石垣2018年8月号に掲載された記事です。

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