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テーマ別企業事例 自社開発で生き残る“オンリーワン” 企業の発想力

事例2 グローバルを目指すならローカルになる有機日本酒で世界に通用する価値をつくる

天鷹酒造(栃木県大田原市)

畑と田んぼが広がる場所に酒蔵がある

大正3(1914)年創業の天鷹酒造は「田舎にある小さな酒蔵」の強みを生かし、原料から製造工程までのすべてで有機食産基準を満たした“有機日本酒”を製造している。日本酒の酒蔵では数少ない日・米・欧での有機認証取得業者で、安全・安心なオーガニック(有機)商品に敏感な欧米市場へも輸出している。

日本酒の級別廃止を機に酒販店を対象に勉強会を開く

天鷹酒造がある栃木県大田原市は古くから稲作が盛んで、水にも恵まれ、夏は温暖、冬は適度に寒冷な気候で日本酒づくりに適しているという。この地で100年以上にわたり日本酒を醸造している天鷹酒造は、2005年に有機認定の事業者となり、以来、有機日本酒の製造に取り組んでいる。

「有機日本酒は、単に原料が有機米というだけでなく、入荷後の貯蔵・管理、製造過程において有機以外のものが混入しないようにできているか、第三者機関が確認して初めて有機日本酒と名乗れるのです。また「有機米」とは農薬や化学肥料を使わないだけでなく、有機JAS法に基づき「有機JAS規格」に適合していることを認証されて「有機米」となります」と、天鷹酒造三代目で社長の尾﨑宗範さんは言う。

天鷹酒造が有機に取り組み始めたきっかけは、日本酒の級別制度(特級、一級、二級という分類)が1988年から段階的に廃止されたことだった。「これを機に、普通酒から吟醸酒まで全体的に品質を高めて生産していこうと考えました。その一方で地元の酒販店は、級別廃止やディスカウント店の進出などで不安を抱えていた。そこで県内の酒販店を対象に有料の勉強会を開き、専門家を呼んで、お酒についてはもちろん、ラッピングやPOP(ポップ)の書き方まで勉強していきました。結局、この勉強会は4年間で十数回行いました」

それから3年後の95年、勉強会で出会った若手の酒販店店主3人が天鷹酒造にやって来た。「店を専門店化するためにはオリジナルの酒が必要だということで、それから毎月集まり、どんな酒がいいか話していくようになりました」

地元にこだわった酒をつくり村の良さを知ってもらう

そこで出てきたのが、地元にこだわった酒にするということだった。そして、それを多くの人に伝えるには、村に来てもらい、どんな人間がつくっているのかを見てもらうのが一番だろうとなった。

「当時、ここは湯津上(ゆづかみ)村という人口5000人の村でした。田んぼが広がり、遠くに山が見えるいい場所です。ここで一緒にお米とお酒をつくる『米作り酒造りの会』を始めました。農家の田んぼを借り、参加者の方々は春は田植え、夏は草取り、秋は稲刈り、冬は酒の仕込みをして、春に出来上がった酒をみんなで飲むというものです。湯津上村の良さを知ってもらい、ここで酒をつくっていることを知っていただくためでした」

この会は、酒販店店主3人と尾﨑さんが中心となり2015年まで20年にわたり続けていたが、その中でこんな話が出てきたという。「みんなまだ30代で『女房が妊娠して食べ物に気を付けるようになった』という話になり、食べ物の安心・安全から有機の話が出たのです。ただ当時、有機には定義も法律もなく、眉唾的なイメージがありました。しかしその後、00年に有機JAS認証の制度ができたので、それで改めて有機について勉強していくようになりました」

そして04年に認証審査を受けたが、不合格だった。「これは食品工場ではないとまで言われ、それまでの自分たちの方法が足りなかったことを知り、ショックでした。しかし、そこまで言われて黙っていられるかと社内全体で懸命に取り組んでいった結果、翌05年に認証を取ることができたのです」

欧米の有機認証を取得し全国新酒鑑評会で金賞を獲得

認証を取った年の冬に有機米で仕込みを行い、翌年春に初めて有機日本酒を出すことができた。それで終わりではなく、新たな目標ができたと尾﨑さんは言う。「世界レベルで有機をやるために、有機の先進地である欧米の有機認証も取ること。そして、自分たちの有機日本酒の味を認めてもらうために、日本で一番歴史のある全国新酒鑑評会で金賞を獲ること。この二つを目標に掲げました」 11年2月にはドイツの国際的なオーガニック食品展示会に出展し、欧米バイヤーと商談も進めた。ところが、東日本大震災が起こり、仕込蔵と貯蔵庫が壊れただけでなく、ヨーロッパとの取引もキャンセルになってしまった。

「そんな中で有機を続けていくか悩みましたが、有機を始めて5年がたち、小さな光が見えてきた時期でもありました。また、私は当時51歳で、年齢的に長期の借金ができるギリギリのタイミング。そこで、思い切って仕込蔵を建て替え、有機を行っていきやすい環境にしていきました」

そうして、14年にEUと米国の有機認証を取得し、17年の全国新酒鑑評会では「有機純米大吟醸天鷹」が有機日本酒として初めて金賞を受賞、二つの目標を見事に達成した。そして今年、天鷹オーガニックファーム株式会社を設立し、近隣で有機米の栽培を始めた。天鷹酒造の有機日本酒の原料にしていくという。

「これも田舎にある小さな酒蔵だからできることです。グローバルを目指すならローカルになることが重要になる。世界中でワインがつくられていてもボルドーのワインが別格なように、日本酒もこの地の特長を生かした形でやらなければその価値を高めることはできません。それが世界に通用する価値になると思っています」

小さな酒蔵の有機への挑戦はまだ始まったばかり。だが、目標をしっかり見据えている。

会社データ

社名:天鷹酒造株式会社

所在地:栃木県大田原市蛭畑2166

電話:0287-98-2107

HP:https://tentaka.co.jp/

代表者:尾﨑宗範 代表取締役社長

従業員:22人

※月刊石垣2018年12月号に掲載された記事です。

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