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テーマ別企業事例 自社開発で生き残る“オンリーワン” 企業の発想力

事例4 タケノコの産地に根付き水煮と加工品の生産に特化

上野食品(鹿児島県阿久根市)

1963年に創業した上野食品は、当初から地元特産のタケノコを全国に出荷することを目的とし水煮工場を建設した

鹿児島県阿久根市はタケノコを第一次産業の重要な産品と捉えている。市内に本社と工場がある上野食品は、創業当初から主に地元産タケノコを使用した業務用「水煮」に特化したオンリーワン企業として成長。最近ではBtoBに加え、BtoC向けタケノコ商品の開発にも力を入れている。

阿久根産タケノコを中心に年間4万缶の水煮を生産

タケノコの産地といえば、竹林のイメージから京都が浮かんでくる。しかし実は、九州の福岡県と鹿児島県が二大産地である。

国産タケノコの生産量は全国で2万3582t(林野庁「2017年特用林産基礎資料」より、以下同じ)。そのうちの67%に相当する1万5823tが九州7県で生産されており、鹿児島県の生産量は福岡県に次いで多く、5427tに達する。鹿児島県内では、北薩摩(北薩)と呼ばれる地域で多く生産されている。その中でも阿久根市はタケノコの生産量を地方創生事業の重要業績評価指標(KPI)に定めており、12年度から14年度の平均516tから、19年度には620tに引き上げることを目指している。

上野食品は、1963年に上野食品缶詰工場として創業し、72年に法人化して現在の社名である上野食品となった。創業当初は文旦(ぶんたん)のような地元の青果物を全国へ流通させる商売をしていたが、あまりなじみがないため多くは売れず、皮の砂糖漬けのような加工品の生産を手掛けるようになった。並行して65年から地元の特産品であるタケノコを仕入れて、水煮の缶詰(一斗缶、約18ℓ)の生産に力を入れている。九州各県のタケノコを集荷し、水煮加工をして、業務用水煮缶や消費者向け真空パック品を製造し、全国の外食産業や食品製造業、量販店など向けに出荷している。

昨年社長に就任した上野小夜子さんによると、同社は鹿児島に6社ある缶詰業者のうち大手と呼ばれる1社で、「年間1000t以上のタケノコから、3万5000缶から4万缶の水煮を生産しています。2000年には真空包装機を2基導入して、より扱いやすい真空パックの商品も提供しています」。

小売店が水煮を販売するとき、一斗缶から取り出して小分けして商品として並べたのでは日持ちがしない。そのため、最初から小分けされた真空パック品が求められるのだ。

ラインナップを拡充させBtoC商品の開発も

今はほとんど聞かなくなったが、昔は「タケノコ生活」という表現があった。タケノコの皮を一枚一枚むくように家財を売って生活費に充てる暮らしのことだが、実際に掘り出した状態の生タケノコを調理しようとすると、皮の多さに驚く。タケノコの食べられる部分は半分くらいしかない。「機械でむくと歩留まり率はさらに下がり35から40%。残りの60から65%は皮や食に適さない根の部分です。皮や根は乳牛の飼料として酪農家に引き取っていただいているのですが、実はこの部分にも豊富な栄養素が含まれているのです」

タケノコは繊維質の塊という印象が強いが、アミノ酸、カリウム、リンといった体に有用な栄養素が豊富だ。また皮にはポリフェノールも多く含んでいる。健康茶市場に注目が集まっていたこともあり、これらの栄養素を抽出した「たけのこ茶」の開発に乗り出した。鹿児島県工業技術センターから過熱水蒸気を用いた焙煎(ばいせん)技術の支援を受けて試作品を完成させた。10年から試験販売を始め、改良点を洗い出し、タケノコの風味を生かした製品化に向けた作業を進めている。

現在、同社が期待しているのは、BtoC向けの商品だ。真空パックの水煮はもちろん、土佐煮、タケノコキムチ、サラダタケノコといった、そのまま食卓に出せる商品のラインナップ拡充を図っている。

オンリーワン企業として地元農家を支援

タケノコ水煮分野のオンリーワン企業として、同社は「人・環境・土」にこだわり、大切にしている。

人とは生産者のこと。経験豊かな農家と契約し、生産者組合を支援することで、品質の良いタケノコを安定供給する体制を整えている。環境は生育地として日当たりが良く、勢いのある若竹が集まる竹林にこだわること。土は農薬はもとより除草剤も一切使用せず、土着菌入り堆肥を使用した土づくりにこだわることだ。タケノコ栽培は無農薬で行うが、念のために年1回の残留農薬検査も怠らない。

同社の懸念は、生産農家が減少していること。市では新規就農者支援事業や竹林改良促進支援事業(たけのこ産地化事業)を推進しているが、廃業を検討する農家も出始めている。

上野さんは、まだ計画の段階と前置きしつつ、「会社に農業部門をつくり、生産を支援し、農業の6次産業化を目指したい。阿久根がタケノコの里であることを広く知っていただき、タケノコ料理を提供するレストランなども経営してみたい」と抱負を語る。

オンリーワン企業としてタケノコ生産を支援し、地元に貢献することが上野さんの願いだ。

会社データ

社名:上野食品株式会社

所在地:鹿児島県阿久根市山下7607番地

電話:0996-73-1500

HP:http://uenoshokuhin.com/

代表者:上野小夜子 代表取締役社長

従業員:25人

※月刊石垣2018年12月号に掲載された記事です。

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