このコーナーでは、下請取引に関する「かけこみ寺」に相談があった事例を参考に、中小企業の取引上のトラブルや疑問点の解決の基本的な考え方や留意点を解説します。今回は「一般取引関係」の「採算が取れない契約の見直し要求」についての相談事例をご紹介します。
契約は当事者間で内容を自由に取り決めることができる
Q.
個人事業主AはB運送会社より、貨物運送を請け負っています。AB間の契約書では、Aは自動車を所有して運送することになっています。Aは自動車を購入する資金がないので、Bより借りています。Bは毎月、Aの請負代金より車のレンタル料、自動車保険料、その他の経費を差し引き、翌月10日に支払ってくれる約束ですが、差し引かれるレンタル料、保険料(手数料も加算されています)が一般的な金額よりも高額であると思われます。そこで、契約の見直しを申し入れたいと思います。
A.
個人事業主AはB運送会社から貨物運送を請け負い、仕事をしているが、請負代金から差し引かれる諸々の経費が高すぎるので契約の変更を行いたいというものです。本来、契約は当事者間で内容を自由に取り決めることができます(契約自由の原則)。しかし、一度合意により契約が成立すると、当事者は契約内容に拘束されます。
もっとも、契約内容が法律に反する内容や、公序良俗に反する内容、著しく不公正な内容などであったりすると、契約が無効と判断されることもありえます。差し引かれる経費が高すぎるという理由だけでは、無効の主張は難しいでしょう。
車のレンタル料が高額であるならば、業者から中古を割賦で購入する費用と比較してみる、保険料は手数料のかからないものに変更するなどの方法を考え、他との比較表や収支計算書などの資料を示して、契約内容の見直しをBに申し入れて話し合ってみたらよいと思います。
契約締結前に、十分契約内容を検討するとともに、売上予測を立て、採算がとれるかを検討します。契約内容については、相手より十分、説明を受け、不明なところは質問します。請負代金から差し引かれる車両のレンタル料、保険料については、事前に他のレンタル業者、保険会社に当たって比較してみます。
売上予測は難しいですが、相手に聞くか、相手と契約している他の当事者に聞いてみます。十分、検討を行い納得した上で契約を締結しましょう。継続的契約の契約書には、一定期間経過後の契約見直し条項を入れることも必要でしょう。
提供
公益財団法人 全国中小企業取引振興協会(全取協・ぜんとりきょう)
下請取引適正化の推進を目的に、全国48カ所に設置された「下請かけこみ寺」を中小企業庁の委託により運営。
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