静岡商工会議所などでつくる新産業開発振興機構は7月22日、東海大学海洋学部と10年にわたり共同研究してきたタツノオトシゴの一種「クロウミウマ」の陸上養殖の事業化に乗り出すと発表した。東京の不動産会社ショアースに技術移転し、同社は2021年中に愛媛県松山市怒和島にプラントを建設して本格的な養殖を始め、養殖システムを構築する計画。将来的には東南アジアなどへの輸出を目指す。
タツノオトシゴは漢方薬の原料として中国を中心に需要があるが、近年乱獲などで急減、天然物は絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の対象となっている。国内で養殖生産できれば高値での流通が期待できるという。
同所は地域の産業創出を目的に、01年に同機構を設立、05年より産学連携プロジェクトとして、カワハギの養殖など複数の研究テーマに取り組んできた。その一つとして10年からタツノオトシゴの養殖を研究。タツノオトシゴはふ化後2週間で約9割が死んでしまうため養殖は難しいとされたが、静岡市清水区三保の地下海水を利用し、餌を工夫するなどで14年には6割以上が成長するなど安定した繁殖が見込めるようになった。しかし養殖事業に参入する地元企業がなく、その後研究は休止、今回ショアースの参入で再始動した。
同機構は今後、養殖システムのPRや販路開拓支援などを行う。
同所の担当者は「今回、事業化に至ったことは研究の成果。今後も大学と産業の種まきを続けていく」と話している。
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