それぞれ出身地に戻って就職(Uターン)、出身地以外の場所で就職(Iターン)という言葉が生まれてから随分と時間が経過しました。このUIターンを有名にしたのは人材会社による転職情報誌でした。全国各地の企業から求人情報を集めて、都会で忙しい毎日を過ごしているビジネスパーソンたちに提供。これまでの経験を地元や地方で生かしたいと考えるきっかけを生み出し、地方の雇用創造に貢献してきました。
さらに最近ではJターンという言葉も生まれたようです。具体的には、生まれ育ったふるさとから進学や就職で都会に移住した後、ふるさとに近い地方都市に移住することです。例えば、「石川県輪島市で生まれ、就職を機に上京。結婚後、子育ての環境を考え石川県金沢市に移住する」などのケースが当てはまります。
こうしたUIJターンによる新規就業者は潜在的に増えているといわれます。ところが受け皿となる会社が不足しています。さらにいえば減少傾向になっています。理由は後継者がいない企業の廃業です。
民間の調査会社によると、年間の廃業は近年2万社以上で推移しており、地方における雇用の受け皿が減少する大きな要因となっています。こうした廃業に歯止めをかける手法として注目が高まっているのが、事業承継の支援機関です。事業承継問題の悩みを抱える経営者からの相談を受け、引き継ぐ会社を紹介。円滑な事業のバトンタッチを支援するセンターが全国47都道府県に開設されています。
さらに民間の支援企業も増えています。事業継承そのものが大きなビジネスとして注目される時代になったといっても過言ではありません。
そんな事業承継の分野でユニークな取り組みも始まったようです。その取り組みとは事業承継を会社ではなく個人、しかも新たに創業を考えている第三者に紹介する仕組みです。
従来、承継対象の前提は親族ないし従業員を対象に検討し、無理ならば企業を対象に探すという三つの選択肢で考えられてきました。そこに新たな選択肢を提供しようと考えたのがリクルート社です。
現在は実証実験中のようですが、長年起業・独立を検討している経営者予備軍をネット上で会員化。その数は数万人になるとのこと。この経営者予備軍と事業承継を検討している会社のマッチングを進めようというのです。
筆者は取材している中で、自社を別の会社に売却するくらいなら廃業すると考える経営者は相当数いると感じます。こうした背景から、廃業してしまう会社に新たな選択を提供できるのではと期待しています。
(株式会社セレブレイン代表取締役社長・高城幸司)
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