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コラム石垣 2017年2月1日号 丁野朗

文化庁が平成27年度に創設した「日本遺産(Japan Heritage)」が大きな話題になっている。文化財の背後にある地域の歴史・文化を地域ストーリー(物語)として編集し、これらを地域活性化の大きな起爆財にしようという狙いである。魅力溢れる有形・無形のさまざまな文化財群を、単なる保存だけではなく、地域が主体となって総合的に活用し、国内外に日本の文化ストーリーとして戦略的に発信していくことにより、地域経済の活性化を図ろうというものである。

▼この考え方は、昨年3月に取りまとめられた「明日の日本を支える観光ビジョン」でも踏襲された。訪日外国人客2000万人目標を達成した現在、さらなる高みを目指すために「観光資源の魅力を極め地方創生の礎にする」ために、2020年までに赤坂や京都迎賓館などの文化財の大胆な公開・開放とともに、日本遺産を全国で100カ所程度認定するという方針が示されている。

▼では、なぜ今「物語」なのか。観光はまさに「物語」や「経験」を消費する行為だからである。物語がなければ、国内外の人々を魅了し惹きつけることはできない。これは、地域(シティー)プロモーションや地域ブランドでも同じである。顧客の信頼を得るには、顧客の感動や共感を呼び起こす物語が不可欠なのである。

▼日本遺産は、すでに全国で37件が認定された。日本遺産で最も重要なのは地域の歴史・文化を俯瞰(ふかん)する物語を描き、その上で地域の未来へのビジョンとこれを実現するための事業や体制を整備していくことである。単なる歴史物語の回顧ではなく、地域の未来をどう描くかが問われているのである。

(公益社団法人日本観光振興協会総合調査研究所特別研究員・丁野朗)

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