日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2017年3月1日号 神田玲子

安倍総理とトランプ大統領の初の首脳会談が開催された。会談後に公表された共同宣言では、自由かつルールに基づいた公正な市場を作っていくことが確認された。普遍な価値である自由と公正の上に世界の秩序が形成されていることを共通認識として明記することには一定の意義がある。

▼しかし、国民が求めているのは目に見える形での生活の向上である。選挙を通じて示されたアメリカ国民の怒りの声は、所得の上位1%の層が所得の大半を占めるという不平等、既得権益を守るためにロビー活動を通じて政治をゆがめている大企業への不満、そして、失業の不安であったはずだ。首脳同士が相手の出方をうかがっている間にも、技術革新と経済のグローバル化に突き動かされて、人々の生活は影響を受けている。

▼クリントン大統領時代に労働長官となったライシュは、最近の著作『最後の資本主義』の中で、最終的な再分配政策ではなく、あくまで賃金を公平にすべきだと主張する。「公平な分配がなされていると大多数の人々が受け止められているような市場のルールをどのように設計するかが問題だ」としている。

▼技術の進展により生産性が上昇したとしても、それがどの程度賃金に反映されるかは明らかではない。生活を豊かにするはずの技術が導入される結果、生活が苦しくなるとすれば、本末転倒である。人工知能の場合、どんなに優秀な人工知能であっても人のサポートは必要となるが、人の労働の正当な報酬とは何か。市場では評価できないだろう。市場での決定が人々の支持を得ないのであれば、それを補うためのルールが必要である。労使が、企業や産業の枠を超えて真摯(しんし)に協議をすることが求められている

(神田玲子・NIRA総研理事)

次の記事

コラム石垣 2017年3月21日号 丁野朗

公益社団法人日本観光振興協会総合調査研究所特別研究員・丁野朗

「食農体験ソムリエ」をご存知だろうか。地域の資源や特性を生かした食と農の体験プログラムを作成し、これらを消費者に安全かつ有意義に伝えられ...

前の記事

コラム石垣 2017年2月21日号 中山文麿

中山文麿・政治経済社会研究所代表

最近、欧米で「EdTech(エドテック)」という教育革命が注目されている。この言葉は「Education(教育)」と「Technique(技術)」を組み合わせた造語で...

関連記事

コラム石垣 2021年6月1日号 丁野朗

日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野朗

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が最初に発令された昨年4月から、すでに14カ月近くが経過した。いまだ、感染終息のめどは立たず、頼みのワク...

コラム石垣 2021年5月21日号 宇津井輝史

コラムニスト 宇津井輝史

外出自粛が奨励され、静かなときを過ごす機会が多い昨今である。いつか読もうと思っていた本に手が伸びる。時間をかけて読みふけるのもいいが、こ...

コラム石垣 2021年5月1日号 神田玲子

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

「人手が足りない」という弁解を聞くことが多い。日本は人口減少の危機に直面していると再三聞かされているうちに、「人手不足」という言葉が免罪...