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第三次安倍改造内閣に望む 平成27年10月13日

わが国経済は20年にわたる「供給過剰・デフレ」の状態から脱却する「変わり目」にある。この転換点に、安倍内閣総理大臣が経済最優先を表明されたことを歓迎する。

新たに掲げられた、第一の矢「強い経済」なしには、第二の矢「夢を紡ぐ子育て支援」、第三の矢「安心につながる社会保障」は成し遂げられない。「強い経済」の実現は、0・5%程度とされるわが国の潜在成長率を引き上げるサプライサイドの成長政策に懸かっている。

サプライサイド政策の実行の主体は民間である。最も重要なのは、国民・企業が将来に確信を持ち、積極的な消費・投資行動に転換できるかである。

また、サプライサイド政策は国全体の効率化・生産性向上を図るための構造改革であり、一部には痛みを伴う。改造内閣には、わが国の将来にわたる国益を踏まえ、丁寧な説明・姿勢で国民各層の理解を深め、各界と合意形成していく手腕が期待される。

一方、わが国は地方の疲弊と人口減少という大きな問題を抱える。震災復興と福島再生も一段の加速化が必要である。アベノミクスの効果を中小企業や地方にまで行き渡らせ、持続的な経済成長を確実なものとし、これらの難題を乗り越えることが必要である。

これらの基本的な考え方のもと、改造内閣におかれては具体的な政策課題として、以下の事項に取り組んでいただきたい。商工会議所としても、実現に向けて自ら行動するともに、政府に対し最大限の協力を行う所存である。

1.民間主導の強い経済を後押しする事業環境の整備促進

サプライサイド政策、すなわち資本蓄積、労働力投入、生産性の向上は民間企業の取り組みが鍵を握る。政府は民間の活動を後押しする環境整備を強力に進める必要がある。

資本蓄積を促すためには、国内マーケットの拡大とともに外需の捕捉が不可欠であり、企業の国内回帰を促し、設備投資により供給能力を高め、輸出競争力を強化していかなければならない。そのため、安全が確認された原発の再稼働による安価で安定的なエネルギー供給の促進、TPPの早期発効と広域経済連携交渉の加速、ビジネスチャンスの拡大につながる規制改革の断行、法人実効税率の引き下げを行うことが必要である。

また、深刻化する人手不足に対しては、女性や高齢者などの労働市場への参画を促すとともに、労働基準法の改正など多様な働き方を推進する労働法制の実現、外国人の一層の活用が必要である。高齢者の労働参加と医療・介護費用の適正化を同時に推進する健康寿命延伸対策も重要である。

生産性の向上については、ICTやロボットの活用、新技術開発、事業再編に取り組むとともに、付加価値の高い製品・サービスの創出あるいは効率化に果敢に挑戦する中小・中堅企業の後押しが必要である。

2.官民協働による地方創生の実現とそれを支える中小・中堅企業の活力強化

地方創生には、一貫した政策をもって不退転の決意と覚悟で取り組む必要がある。地方創生なくして、強い経済もない。

地方創生の要諦は、地方への仕事づくりはもとより、各地域が多様な主体と地域のコンセンサスを形成し、連携・交流して取り組むことである。政府は地方発の取り組みにきめ細かな支援を粘り強く進められたい。商工会議所としても全国ネットワークを生かし、各自治体の取り組みに積極的に協力していく。

特に、観光振興は地方創生の切り札である。今年1900万人突破の可能性もあるインバウンドと観光消費額の9割を占める国内居住者観光を両輪に、観光ネットワークの構築による広域展開を推進して各地に効果を波及させることが重要である。

また、中小・中堅企業は、地域で仕事や雇用を生み出す地方創生の中核である。観光資源や農林水産品を生かした域外需要の取り込みや、地域の成長分野への参入・投資によるイノベーション推進が重要である。

政府は産学金官連携の支援、地方版規制改革会議の設置促進などにより地域の潜在力を引き出し、中小・中堅企業の活性化を後押しされたい。

3.少子化対策への重点化と徹底した効率化による社会保障制度改革の断行

社会保障制度は、消費税10%への引き上げで一定期間は持続可能となるよう給付の重点化・効率化をはじめ、制度改革に徹底して取り組むべきである。

高齢者医療への拠出金負担の増加など現役世代の負担はすでに限界に達しており、余力のある高齢者の応能負担割合を高める必要がある。その結果、生み出される財源は、結婚、出産、子育ての環境整備など現役世代の少子化対策に重点配分すべきである。

また、女性の働きたい意志を尊重し、長く働いても社会保険料などの急激な負担増とならず、世帯単位で負担額を調整できる新たな仕組みの導入が必要である。

4.消費税の複数税率は導入すべきでない

現在、与党が検討中の消費税の複数税率については、社会保障財源が大きく減少し、対象品目の線引きが不明確で混乱を招くのに加え、事業者に対して大きな事務負担を強いることから導入すべきでない。

低所得者対策はきめ細かな給付措置で対応すべきである。