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テーマ別企業事例 現状を打破する商品のつくり方 “高付加価値”が新たな需要を生む

事例2 国内唯一のLPGハイブリッド車のオリジナルキット販売で次世代へ発進

ケイテック(山形県酒田市)

自動車整備や修理を手掛けるケイテックが、バイヒューエル(LPGとガソリンのハイブリッド)車のキットを独自に開発し、全国に販路を広げている。LPGは燃料代を大幅に削減でき、ガソリンよりもエコで、災害にも強い。開発から6年、キット出荷を含む累計販売台数は1500台を超えている。

ケイテックの拠点は山形県酒田市。ここからGas Hybrid Project“GasTeck”をブランド化し、バイヒューエル車の全国展開を図っている

大手参入も価格競争もなし後進国だからこそ需要あり

「あまり知られていませんが、全国のまちなかを走るタクシーの多くがLPG車です。東日本大震災でも燃料供給が安定していて、人員・物資の輸送の両面で活躍しました。被災地で一般車が止まっている中、タクシーだけが軽快に走っている光景を目の当たりにした人はかなりいたと思います」

そう切り出したケイテック代表取締役の小松豊さんがLPG車に関心を持ったのは2008年、個人事業でアメリカの自動車工具を販売していたころの話だ。当時の取引先の業者からある時、韓国製のLPGキットの販売を持ち掛けられ、工具販売とはジャンル違いと思いつつも、個人的に興味を持つ。日本車には規格が合わず、車検にも通らないが、趣味でカーレースにも出場するなどパソコンを使った自動車のコンピューター制御、セッティングはお手のものの小松さんは、キットの改良点を見いだしていった。同時に国内で認可を取得する方法も調べ、バイヒューエル車の製作、販売に向け、2010年に法人化して同社を立ち上げた。そして3年かけて国内唯一のキットを完成させる。

「世界に目を向ければ、イタリアやポーランドにはLPG車の大手メーカーもあり、ヨーロッパ全体の5%、約1800万台以上が走っています。アメリカでもすでに戦時中にフォード社が開発しており、欧米ではディーラーがオプションでエアコンを取り付けるように、LPGキットを取り付けているほどです。世界的に日本はLPG車の後進国で大手参入も価格競争もないジャンル。販路を広げられる可能性があると感じました」

自社でガソリン車をバイヒューエル車にするだけではなく、キットにすれば全国の提携工場や販売店が扱うことができ、一気に新たな需要を生み出すことができる。法人化して自動車修理・販売業にシフトしたのもそのためだ。

従来のハイブリッドカーより高いエコカーとしての価値

ガソリン車からバイヒューエル車へ改造することを、同社では「エコマイズ」と呼ぶ。エコロジーとカスタマイズをつなげた造語で、同社では全従業員がエコマイズできる腕前を持つ。

「従業員は自動車をいじるのが好きな者ばかりです。車検や自動車の整備よりも、モノづくりの魅力があるエコマイズは、従業員の士気を高めるきっかけにもなりました」と語る小松さん。キットの評判は上々で、発売初年度は80台、14年度は200台、15年度は300台と伸びている。「大口受注の有無で波はある」というが、販売数、業績は総じて右肩上がりだ。

国内でも海外のLPGキットを扱う工場はあるが、同社は国産キットで、対応も細やかで早い。さらに対応車種が幅広く、約65車種もあるという強みがある。

「車種を増やすのは結構大変で、東京にある日本自動車輸送技術協会で、車種ごとの排ガス試験にパスする必要があります。費用は1回23万円、2日がかりです。自社のテスターで問題がなくても、研究所の高精度な機械では不合格になることもありますから、実質一発勝負です」と苦笑する。全車種が一発合格だとしても累計1500万円の支出があったことになるが、豊富なラインナップがセールスポイントになり、ガス会社やタクシー会社、そして営業車両を持つ企業から注目されるようになっていった。そして提携する自動車整備工場(ガステック販売店)を増やしたことがLPGキットの普及に拍車をかけていく。

民間企業でもできるエコ事業として販路開拓

「現在、全国の提携販売店は35を数えますが、ゆくゆくは全都道府県に1店舗の体制にしたいです」と今後の抱負を語る小松さん。販売店は同社で講習を受けることが前提で、年に一度総会を開く。販売数トップの販売店を表彰するとともに、販売店同士の情報交換の場にするなど、クオリティー維持、向上にも余念がない。

また、海外進出も視野に入れている。東南アジアや韓国、モンゴルなどでの展開を計画中だ。 「自国でガスが出るミャンマーなどでキット普及を図ったことがあります。しかし、日本の輸出元の資金力不足、現地のLPガスのガソリン並みの高騰などで、今は次のチャンスを見計らっているところです」。価格相場や技術力のギャップも障壁としてあり、海外へは車種別の廉価なキット販売も含めて模索中だ。

そんな中、国内では大手自動車メーカーとの外注契約を結び、正規販売車両と同等扱いの契約を取り交わすディーラーも増えている。地元の大学や商工会議所からの講演依頼、商工会議所会員企業からの注文が入り、地元企業が多数出展する「さかた産業フェア」への参加をきっかけに酒田市と災害協定を結ぶなど、市内での存在感も際立たせている。

「補助金を活用すれば、民間企業でもLPガススタンドは400万円で設置できます。エコマイズにかかる費用は約59万8000円からですが、走れば走るほど燃費削減につながります。市場の全車をバイヒューエル車にするというのではなく、ガソリン、電気に次ぐ選択肢をもっと知ってもらいたい。災害対策として、また民間でも手の届くエコ事業としての意味合いも含めて、広く情報を発信していきたいと考えています」と目を輝かせる。持続可能な高付加価値として、LPGキット、バイヒューエル車の発展には〝伸びしろ〟が多分にある。

会社データ

社名:ケイテック株式会社

所在地:山形県酒田市大宮町1-4-10

電話:0234-23-5066

代表者:小松豊 代表取締役

従業員:9人

HP:http://k-techcorp.com/

※月刊石垣2019年12月号に掲載された記事です。

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