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テーマ別企業事例 現状を打破する商品のつくり方 “高付加価値”が新たな需要を生む

事例3 花の楽園に生み出された「光の名園」で経営基盤をより強くし、事業を拡大

足利フラワーリゾート(栃木県足利市)

日本屈指の藤の花の名所で知られるあしかがフラワーパークは、年間約165万人の来園者がある。藤が開花する春だけでも約60万人が訪れるというが、その人気を二分する勢いなのが、秋から冬にかけて園内を彩るイルミネーションだ。今や日本三大イルミネーションに数えられ、花だけではない高付加価値を華麗に咲かせている。

約9万4000㎡の園全体が「光の花の庭」と化す。5年後、10年後も支持されるように緻密なマーケティングを欠かさない

花の咲き具合で料金設定しお客さまの満足度を高める

「世界一の藤棚」と称される大藤を有する観光植物園、あしかがフラワーパークの歴史は、1968年、前身の早川農園の開園から始まる。250畳の大藤があった農園を移転するという、前例のない大藤の移植プロジェクトの成功は、〝奇跡の大藤〟として各メディアでも紹介された。97年にあしかがフラワーパークと名を改め、栃木県の人気スポットから日本を代表する名所へと駆け上がった。

そんなあしかがフラワーパークを現在運営しているのが、二代目で代表取締役社長の早川公一郎さんだ。2003年、大学卒業と同時に入社し、10年には専務取締役に就任、足利商工会議所会頭を務めた父・慶治郎さんの右腕として園の運営に尽力し続け、16年より代表を務める。

600畳敷の藤棚を持つ大藤、白藤や黄花のトンネルなど、ここでしか見られない風景目当てに、全国から、そして海外からも多くの人が訪れる。藤のシーズンのライトアップなどが高く評価され、14年にCNNの「世界の夢の旅行先10カ所」に日本で唯一ランクインしている。

だが、その状況下に甘んじることなく、常にお客さまの立場で考えることを忘れない。入園料もその一例で、お客さまへの誠意の表れだ。

「毎朝開園前に園内を回って花の咲き具合、園全体のコンディションを確認しています。花の状況を毎日小まめに観察し、その状況に見合った料金を設定するという価格変動制を取っているのは『お客さまは来園いただいたその日が全て』という考えのもと、お客さまの納得感と満足度の向上を図っているからです」と早川さんは熱く語る。

「光の花」をコンセプトに自社で手掛ける

早川さんのその思いは、今や冬の名物となったイルミネーション事業にも通じる。藤の花の絶大な人気で、入園者は藤の開花期間の春から初夏にかけての約2カ月がピークとなる。一方、冬は花が少ない時期になり、温室などもないため、集客には非常に苦労していた。そこで18年前から開催しているのが秋冬のイルミネーションだ。最初は6万球ほどだったというが、数を年々増やし、18年には450万球を数えるまでになった。

だが、早川さんが重視したのは数よりも〝質〟だった。単に照明を点灯させるのではなく、コンセプトを「光の花」とし、従業員らが電球に油性ペンで色を塗り、設計、施工も自社で手掛けていく。

「今のようにはLED照明に色数がなかったですし、そもそも新規事業分の予算がありません。でも、従業員は花を熟知した者ばかりですから、照明の色も本物に近づけたい。そこで地道に色づけをするようになったのですが、それが結果的にうちでしか出せない照明カラーを生み出すきっかけになりました」と、早川さんは目を細める。

照明の色は単一ではなく、花がそうであるように濃淡、グラデーションに気を配り、「光の花」をコンセプトに心に訴えかける圧巻の配色を生み出していく。イルミネーション「光の花の庭」と題して、毎年一つずつテーマと作品を増やし、何度見ても飽きないストーリーのあるイルミネーションを心掛けた。 そして、サービス業、観光業ではお客さま目線が大事だとよく言われるが、早川さんはさらに踏み込んで「リピーター目線」で、イルミネーションの〝鮮度〟を保ち、〝クオリティー〟を更新し続けた。特に力を入れているのが、SNSを活用した発信だ。Twitterなどで園の状況を随時発信し、Instagramではイベントを仕掛け、国内のみならずインバウンド需要を取り込む。

結果、11年には日本夜景遺産に、12年には関東三大イルミネーションに認定され、夜景鑑賞士が選ぶ全国イルミネーションランキングでは4年連続第1位に輝く。さらに17年には関東の枠を超え、日本三大イルミネーションにも選ばれている。点灯期間約3カ月で来園者は67万人に上り、藤の開花時期の人出を上回る年もあるという。

勢いづくイルミネーション事業だが、今年は開催間近に園の存亡にも関わるほどの衝撃が走った。

ピンチに立ち向かい団結力を高めて事業を推進

今年10月に猛威を振るった台風19号だ。近くの河川の水があふれ、園全域は冠水。180㎝の水位に達したところもあり、イルミネーション機材の大半が水没した。

「園の状況を知った時は、正直1時間は悩みました。でも、多くの被災地の先頭に立って、復旧する姿を見せていくのが使命と鼓舞し、復旧作業を推し進めました」

約200人の従業員が一丸となって復旧作業に取り組んだことで「結束力が高まった」と前向きに捉え、外部のネットワークもリスク対策を兼ねてより強固にしていきたいと、早川さんは話す。

今年のイルミネーションの点灯は1週間延期したものの、予定通り昨年より50万球増の500万球で園内を彩り、訪れる人たちの期待に応えている。

ピンチをチャンスに。口にするのは容易だが、それを実践するにはトップの判断力と行動力が問われる。それぞれの分野でその道のプロを一人でも多く育て、常にお客さまに季節感と感動を体験いただけるような進化し続ける園づくりを目指す。魅力の維持と付加価値への探究にはどこまでも貪欲だ。

会社データ

社名:株式会社 足利フラワーリゾート(あしかがふらわーりぞーと)

所在地:栃木県足利市田中町906-13

電話:0284-71-4688

代表者:早川公一郎 代表取締役社長

従業員:200人(パート含む)

HP:https://www.ashikaga.co.jp/

※月刊石垣2019年12月号に掲載された記事です。

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