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テーマ別企業事例 現状を打破する商品のつくり方 “高付加価値”が新たな需要を生む

事例4 高い技術力に裏打ちされたBtoC製品で新たな販路を開拓

新光硝子工業(富山県砺波市)

創業当時から「曲げガラス」を主力としてきたガラス加工メーカー、新光硝子工業。ビル建材や内装、ケース、車両用など、幅広いジャンルに曲げガラスを供給し、全国シェアの約7割を占める。近年では量産品の製造にも力を入れているほか、消費者向けの製品開発にも乗り出し、新たな市場を切り開いている。

北陸新幹線のフロントガラスもAGCより受注し同社が製作している

景気や季節による受注の波の改善が課題

自然界にあるものの多くは曲線でつくられている。そうしたことから、人間がつくる造形物でも曲線を取り入れたものは数多い。ガラス製品もまたしかりだ。そんな曲げガラスを柱に、事業を展開しているのが新光硝子工業である。

曲げガラスは、主に建築と産業の分野で活用されている。建築分野において同社は、商業ビルやオフィスビル、美術館など、いくつもの大型建築物を手掛けてきた。東京・銀座のランドマークともいえる総ガラス張りの円筒型建物、通称「三愛ビル」のガラス加工を行ったのも同社である。

産業分野では、寿司(すし)のネタケースや洋菓子用のガラスケース、お惣菜用ケースなどを扱ってきた。平面ガラスをつなぐよりも、1枚の曲げガラスを使用した方が、中に入っているものが格段においしそうに見える。ちなみに、日本で最初に曲げガラスで寿司のネタケースをつくったのも同社だという。

ほかにも新幹線のフロントガラスや高速道路の透光性遮音壁など、高い安全性が求められるガラス加工も数多く請け負うほど高い技術力を誇り、順調に事業展開してきた。そんな同社が新たな柱を模索し始めたのは、バブル崩壊がきっかけだ。

「建築用も産業用も一つひとつ形や曲げの角度が違うので、全て受注生産なのですが、バブル崩壊後はガクッと注文が減りました。もともと建築用ガラスの受注は季節によって波があったので、それを改善するのが課題でした」と社長の新海伸治さんは説明する。

一点物の受注生産に量産品づくりをプラス

そこで着目したのは、合わせガラスの新たな加工技術の開発だ。従来はガラスとガラスの間に特殊なフィルムを挟み、熱を加えて接着させる方法が一般的だった。しかし、同社が考案したのは、液体の樹脂を流し込んで常温で接着させる技法だ。これなら、高機能だが熱に弱いポリカーボネートのような素材とガラスを容易に合わせることができる。樹脂に色素を加えて自在にカラーリングすることも可能だ。1996年に大手化学メーカーと共同で樹脂接着剤の開発に成功し、新たに「スリーエス樹脂合わせ」という独自の加工技術を手に入れた。

「事業として軌道に乗せるまでに10年くらいかかりました。長年一点物の加工をやってきたために、大量生産に対応していなかったのです。でも、徐々に工場の生産体制を整え、ニーズに対応できるようになりました」

その結果、建設機械や工作機械の窓という、これまでになかった用途の受注を獲得する。しかも、曲げガラスは熟練の職人にしか扱えないのに対し、樹脂合わせガラスは誰でもつくれるのもメリットだ。 その強みを生かして、同社は産業用の量産品づくりに乗り出す。その取っ掛かりとなったのは、コンビニのレジ横に置いてある惣菜用ホットケースだ。ファミリーマートからの引き合いにより、全国1万9000店舗に納入するという大量受注を果たした。

「量産品の製造を始めてよかったのは、異業種とのつながりができたことです。それまでは建築やガラス業界しか付き合いがなかったのですが、電気関係や機械関係などにもお客さまが増えたのは当社にとって大きな収穫でした」

曲げガラスとスリーエス樹脂合わせガラス、一点物と量産品という二つの柱を構築した同社。現在の生産品の割合は建築と産業がそれぞれ50%だが、その中で工作機械用の樹脂合わせガラスや量産品の割合が伸びているという。

消費者向け製品の開発にも乗り出す

近年は、BtoCの製品づくりにも乗り出している。同社では2009年から社内に開発会議を立ち上げ、新たな製品の開発や製造、販売に向けた検討を重ねてきた。そこから誕生したのが家具やインテリア用品だ。

「消費者向けのものづくりでは見た目も重要です。そこでデザイナーとコラボして、岐阜県高山市の木工とガラスを組み合わせたテーブルやイス、金沢の金箔(きんぱく)や和紙などを挟んだインテリア用品などいろいろつくって、市場調査を兼ねて国内外の展示会に出展しました。その中から商品化に至ったのが表札です」

同社の製品は展示会で大きな反響を得たものの、いざ商品化となると重さや使い勝手、価格などがネックとなり、課題が残った。そこで18年に開発会議のメンバーを若手中心に刷新した。デザイン性や強度を保ちながら、扱いやすく販売しやすい製品を検討した結果生まれたのが、「曲げガラスの表札」だ。建築事業者を通じた販売をメインに行っており、今後の売れ行きに期待を掛ける。

「今、次の製品として、セルロースナノファイバーを使った高耐衝性合わせガラスの開発に取り組んでいます。県が募集したサポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)に採択されたので、その補助金を有効に活用しながら、今後も付加価値の高い製品を世に出していきたい」と、新海さんは力強く今後の展望を語った。

会社データ

社名:新光硝子工業株式会社(しんこうがらすこうぎょう)

所在地:富山県砺波市太田1889-1

電話:0763-33-1779

代表者:新海伸治 代表取締役社長

従業員:78人

HP:http://www.shinkoglass.co.jp/

※月刊石垣2019年12月号に掲載された記事です。

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