新型コロナウイルスで、ダメージの大きな地域経済の支援目的もある「Go Toトラベル」が盛り上がらない状況になっています。不安から動きたくない消費者の志向に反したタイミングであったことが大きな要因かもしれません。
そんな状況で次の取り組みとして「ワーケーション」の推進に注目が高まっています。ワーケーションとは、2000年代に米国で生まれた仕事と休暇を組み合わせた造語で、リゾート地や地方で「働きながら休暇」を過ごす仕組みのこと。都会を離れ通勤ラッシュからも解放、豊かな自然環境や落ち着いた雰囲気の中で働くことで創造性や生産性が向上、滞在地での消費に伴う経済振興など、メリットがたくさん想定される取り組みです。あるいは、将来的な本社移転や定住者の増加なども期待されます。地域に大きな収益をもたらすまでには時間はかかるかもしれませんが、企業の誘致を進めるべきだと思います。
ちなみに導入企業はあるのでしょうか。宿泊する施設を企業が指定して、社員がリゾート地で数日間勤務を許可する。あるいは、会社の保養所を活用するなどトライアルが始まった状況です。中にはワーケーション勤務が制度的に認められている会社が出てきており、取材したコンサルティング会社は家族とリゾート地を旅しながら、(自分は)テレワークで会議に参加して勤務扱い。そのまま、リゾート地で休日も過ごせば、長期休暇を満喫することができます。こうした働き方は気持ちもリフレッシュされると好評です。離職率の改善や業務の効率化にもつながったとのこと。また、取り組んでいない企業でも検討の機運が高まっており、導入は増加すると思われます。各地域では、ワーケーションの広がりで平日宿泊の増加や長期滞在などのビジネスチャンスが見込めますので、企業誘致の準備を進めるべきでしょう。
ただ、そのためには検討すべきことが一つあります。それはビジネスを行う環境の整備。リゾート地としての魅力は十分でも、テレワーク環境が不十分だとワーケーションが成り立ちません。Wi―Fi環境やビジネスセンターの整備をすべきでしょう。すでに、企業誘致を果敢に進めている地域はテレワーク環境の整備を済ませているようです。例えば、和歌山県の白浜町はホームページで美しい海とアクセスの良さに加えて、ネットワーク環境の整備などからワーケーションに適した地域であることをアピールしています。こうした努力で新たな需要を創造して、地域に新たな収益を生み出していきましょう。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)
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