まちづくりの先進事例 Vol.4 ~ドイツ・ヴィッツェンハウゼン~ さくらんぼ産地の挑戦

観光案内所に並ぶさくらんぼ関連商品・パンフレット

ヴィッツェンハウゼンは、ドイツ中部・ヘッセン州北部にある人口約1万5千の小さなまち。ニーダーザクセン州との境界に位置し、メルヘン街道の一都市であるこのまちのシンボルはさくらんぼ。ドイツ国内におけるさくらんぼの主力産地は南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州で、ヘッセン州の生産量はそれほど多くないが、ヴィッツェンハウゼンはそのなかでも有数の産地だ。

さくらんぼのまちというだけあって、駅、案内地図、観光パンフレット、店頭など、至るところにさくらんぼが描かれており、路上にまでペイントがある。市内共通商品券のデザインも、もちろんさくらんぼだ。

ヴィッツェンハウゼンでは例年7月上旬にケスパーキルメスというさくらんぼ祭りが催され、今年は例年より少し早い6月20日から22日の開催が予定されている。このイベントは1967年に始まったもので、毎年さくらんぼ女王が選出されるほか、種飛ばし大会も行われるなど、非常に親近感を抱く内容となっている。

さくらんぼのまちは桜の名所でもある。例年、桜の季節には大勢の観光客が訪れ、ウオーキングしながら桜を楽しむ。ウオーキング用の地図も用意され、散策好きのドイツ人に好評だ。

人口減少と空洞化が悩み 

現在の人口は約1万5千だが、1998年からの10年で千人以上減少した。中心部の人口は約6千人で、約9千人は中心部とは別の16の集落に居住している。

中心市街地はコンパクトにまとまっており歩行者専用ゾーンもある。市街地外縁部の幹線道路沿いに大きな駐車場を持つ生鮮スーパーが並んでいるのはドイツの小規模都市によく見られる光景だ。ヴィッツェンハウゼンの場合これが中心市街地の川向こうであり、駅とまちなかを結ぶ巡回バスも迂回してこれらのスーパーマーケットに立ち寄るルートとなっている。

市内には製紙工場、自動車部品工場などが立地するが、東西ドイツ統一後、立地企業・雇用者数とも大きく減少しており、空洞化と高齢化に頭を悩ませている。

新公共輸送の試みも

ヴィッツェンハウゼンでは、昨年4月から、市内の集落と中心部を結ぶ新たな公共交通システム「モビルファルト(Mobilfalt)」が導入された。これは、ヘッセン州北部の公共交通事業者などでつくる「北ヘッセン運輸連合(NVV)」が試験的に実施しているもので、需要の少ない路線バスに代わる公共交通として自家用車を活用しようというもの。停留所があり、時刻表に基づいて運行されるが、利用したい場合は電話などで連絡を入れる必要がある。

運賃は1ユーロまたは2ユーロ。デマンドバスやタクシーと異なるのは、登録運転者が自家用車を使って輸送を行う点。運転者の都合がつかない場合はタクシーが手配されるが、その場合も利用料金は同額となっている。現在、NVV管内の3地域でこのプロジェクトが実施されており、今後の動向が注目されている。

遠藤俊太郎/カッセル大学(ドイツ)

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