テーマ別企業事例 新型コロナに打ち克つ!中小企業の突破力[小売店・運輸業・宿泊業編]

今年4月7日に発令された「非常事態宣言」で、社会生活や人の移動が大きく制限されたことにより、より大きな影響を受けた業界がある。

「小売店・運輸業・宿泊業編」では、コロナ禍に対応する社員改革や新たなサービスの導入により、ウィズコロナ、アフターコロナ時代のビジネスを模索する企業の今を紹介する。

事例1 “新たな日常”をサポートし続ける地域密着型スーパーの挑戦

マエダ(青森県むつ市)

緊急事態宣言下でも地域の人々の食生活を支え続けたスーパーマーケット。飲食店、小売店が苦戦を強いられる中、スーパーマーケットを経営する企業は、どんな点を工夫し、感染症予防に徹した安心で安全な店であり続けるのか。感染者が少ない青森県で、多店舗展開するマエダから実情を聞いた。

むつ市内にあるマエダ本店。2002年頃から出店数を増やし、新店舗やリニューアルオープンで、現在、県内に36店を展開する

検温、マスク着用など感染症予防に迅速に対応

新型コロナウイルスの感染拡大によって、日常の風景は大きく変わった。それを象徴する一つにスーパーマーケット(以下、スーパー)がある。入り口にはアルコール消毒スプレーが置かれ、従業員は全員マスクを着用、レジ前はビニールの飛沫防止パーテーションで仕切られている。レジに列ができれば、ソーシャルディスタンスを促す足元のフロアマットに準じて一定の距離を開け並ばなければならない。

政府より4月7日に緊急事態宣言が発令されても、生活する上で必要な食料品や生活用品を販売するスーパーは営業を継続していたため、他の飲食店や小売店よりも感染症対策の導入は早かったといえる。

そしてそれは都市部に限ったことではなく、本州最北端の青森県むつ市も状況は同じだ。むつ市を拠点に県内に36店舗のスーパーを展開するマエダの代表取締役専務、前田大志さんは、当時を振り返ってこう語る。

「2月下旬にはマスク、トイレットペーパーが品薄になり、その後、欠品がしばらく続きました。外出を控えて買いだめする人も見受けられましたね。青森県内で感染者が出たのは3月下旬、それ以降も他県に比べて感染者は少ないのですが、感染拡大を防ぐためにも細心の注意を払わなければなりません。何をどう注意するべきか、情報を集めながら感染予防対策を取り入れていきました」

最初に実施したのは従業員の就業前の体温チェックとマスク着用の徹底だ。全店舗全従業員の体温データは、翌日には本部へメールで届くというシステムを構築し、今も継続しているという。手洗いとその後のアルコール消毒、店内什器(じゅうき)の定期的な消毒液での拭き取り、食材のバラ売り販売は中止して、パックや袋詰め販売に切り替えるなど、お客さまと従業員の健康と安全を守るべく、全店舗で実施していった。

GWやお盆の帰省者減を見越して仕入れを調整

「社内の行事やイベントは中止。毎年上半期に実施する全体研修もビデオに変更したり、各店舗で実施したりしました。また、東京をはじめとした都市部取り引き先との面談、商談、出張は控え、Zoomなどのオンライン会議ツールを活用し、表敬訪問は丁重にお断りしています。来店、来社が必要な場合も、なるべく従業員との接触が少ない場所で、動線にも配慮しています」と、店内以外の来店客の見えない所でも感染症予防や拡大防止に努めていることがうかがえる。

コロナ禍でスーパーは外食を控えた暮らしの受け皿として売上増と聞くが、実際どうなのだろうか。

「確かに売り上げは伸びました。でも、ニュースで話題になったほど人が殺到して買い込むということは、県内のどの店舗でもありません。4月から7月までの売り上げは前年比の107%と緩やかな伸び率です。逆にゴールデンウィークや8月のお盆の時期に帰省する人が今年は見込めなかったので、仕入れのロスが出ないように仕入れ品目の調整に追われました」と、感染予防や感染症対策だけではなく、仕入れコントロールなど、いつもとは違う対応を余儀なくされたようだ。

もともとマエダは地元密着型のスーパーとして、地元客を大事にしてきた店舗経営だ。青森県は感染者が36例、むつ市内ではゼロ(9月28日現在)という状況だからこそ、変わらない〝日常〟をいかに継続していくかがスーパーとしての最重要課題であり、客との信頼関係につながる。感染者の少なさは決して安心材料にはならない。

コロナ禍をきっかけにスーパーの在り方を見直す

マエダは、1951年に前田雑穀店として創業し、地元農家を対象に事業を拡大してきた。78年に多角経営に乗り出して百貨店を、86年には食品スーパーをオープンして地域に根差していく。89年に百貨店を増設して4階建てにしたころから好評だった生鮮食品売り場に力を入れ始め、次第にスーパー経営へと移行。昔も今も変わらず、地元の客の目線に立った店舗展開で、今後も県内の店舗数を増やしていく予定だ。

そんなマエダの特徴は、地産地消で客の声を反映した売り場づくりと、他社が出店しにくいエリアに積極的に出店している点にある。日々の買い物に困っている人にこそ利用してもらいたいという思いをベースに、新鮮な食材を迅速かつ安定供給できるようにと、テン亭デリカ工場、ミートプロセスセンター、水産プロセスセンターという三つの自社工場を開設している。コロナ禍でも、CS(お客さま満足)とES(従業員満足)のナンバーワンを目指す姿勢は変わらない。むしろコロナ禍だからこそ見えてきた改善点があるという。

「陳列した商品が取りやすく、またレジにお客さまが並ぶことがないようにするなど、買いやすいお店として、本来やるべきことを改めて見直す機会になりました。コロナ前から少子高齢化で労働者人口が減り、人手不足をどう解消していくかが課題でしたが、コロナ禍で一層現実味を帯びてきて、本格的にセルフレジの導入を進めているところです。生産性、効率アップを図るためにもITやIoTの導入も前向きに検討中です」と、新型コロナウイルスの感染拡大で事業展開が加速した一面もあるようだ。地域の現状とその先を見据えて、安心安全、そして便利な〝いつものスーパー〟として、マエダは地元を支え続ける。

会社データ

社名:株式会社マエダ

所在地:青森県むつ市小川町2-4-8

電話:0175-22-8333

HP:https://www.i-maeda.co.jp/

代表者:前田惠三 代表取締役社長

従業員:約1700人(パート社員含む)

※月刊石垣2020年10月号に掲載された記事です。

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