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テーマ別企業事例 新型コロナに打ち克つ!中小企業の突破力[小売店・運輸業・宿泊業編]

事例2 コロナ禍に始めた新サービスを足掛かりに新たなビジネス展開へ

小川タクシー(千葉県東金市)

コロナ禍による外出自粛で人の流れが止まり、飲食業や旅行業だけでなく交通機関も大きな影響を受けた。なかでもタクシー業は電車やバスに比べて規模が小さい企業がほとんどで、客足が減った状況への対応に苦慮しているところが多い。苦境を打破するため、千葉県東金市の小川タクシーは、‶市民の足〟としてあらゆる用事を引き受ける代行サービス「便利タクシー」の運行を開始した。

創業は昭和6(1931)年。平成2(1990)年に東金市中心部から今の場所に移ってきた

タクシーが飲食店に代わり有償で配達できるように

小川タクシーはJR東金線求名(ぐみょう)駅近くに拠点を持ち、東金市一帯を主な営業エリアとしている。

「新型コロナウイルス感染症の影響は3月半ばから出てきて、それからは客足がどんどん減っていきました。この辺りは新興住宅地で、駅の近くには大学や警察学校があり、そこからの利用も多かったのですが、学校が休みになって学校関係者や学生さんが乗らなくなり、近所のお年寄りの利用もなくなっていきました。もうお手上げの状態でした」と、社長の小川喜晴さんはため息をつく。

特に4月7日に非常事態宣言が出てからは、4月の売り上げが前年同月比31%水準、5月は同21%水準となり、以前は1日10〜15件の電話依頼があったのが、よくて2件、少ないとゼロという日もあった。

「4月半ばに、私も参加している東金商工会議所の青年部が地元飲食店を応援するイベントを企画していて、自分も何か新しいことができないかと考えていたとき、タクシー事業者による有償貨物運送が認められるというニュースがあると青年部の先輩から聞き、自分で調べていきました」

それが4月21日に国土交通省から出された通達で、外出自粛により飲食店の配達ニーズが増えていることから、特例としてタクシー事業者が飲食店に代わって有償で配達できるというものだった。

「調べてみると、これよりさらに幅広くお客さまの需要に応えられる『タクシー事業者が行う救援事業等について』という通達を見つけました。これは平成元(1989)年に出たもので、貨物の輸送だけでなく、それ以外の代行サービスも行うことができるというものです。そこで、需要があるか分かりませんでしたが、陸運局にその届け出を出して『便利タクシー』を始めたのです」

外出できない人のためになんでもやっていく

4月27日から始めた「便利タクシー」は依頼により外出の用事を代行するサービスで、飲食店のテークアウト食品の受け取り・配達、買い物の代行・配達、病院の診察の順番取り、薬の受け取り・配達、公共料金の支払い、役所への書類提出・取得などを行う。料金は1時間2000円の基本料金プラス商品代などの実費となっている。

「自分でチラシをパソコンでつくり500枚ほど印刷して、青年部の飲食店応援イベントで来たお客さまに配布したり、テークアウトができる飲食店に置いてもらったりしました。また、東金商工会議所が今回、テークアウトやデリバリーができる市内の飲食店を紹介する『東金わくわくお弁当ガイド』を出していて、そのホームページでも紹介していただきました」

飲食店のデリバリーなどは、都心部ではそれを専門としたサービスがあるが、東金市周辺にはまだない。地元の飲食店も自分たちで配達できるほどの人的な余裕がない。また、近隣のお年寄りも、食料品の買い物や病院に定期的に薬を受け取りに行く必要がある。外に出掛けられなくて困っている人がいればなんでもやろうという気持ちだったと小川さんは言う。

「従業員に代行サービスを始めることを話したとき、最初は冷ややかな反応でしたが、何度かやっていくうちに、文句を言わずに引き受けてくれるようになりました。わずかですが売り上げに結びつきますし、配達したときにお客さまに喜んでいただけて励みになります」

コロナ禍以降、タクシー車内には抗菌・抗ウイルス処置が施してあり、お客さまを車に乗せない代行サービス時でも、物を介したウイルス感染を起こさないために、運転手は必ずマスクを着用し、常に換気も行っているという。

今後の顧客開拓につなげ新たなビジネスも視野に

まだ「便利タクシー」の周知が広く行き渡っていないこともあって依頼の数は多くないものの、利用した人たちからは感謝してもらっていると小川さんは言う。今はお年寄りの買い物代行が多いが、困っている地元の飲食店を助けようという気運も出てきており、市内にある大学の教職員たちの依頼により、4軒の飲食店を回って1日30〜40個の昼食のデリバリーもコンスタントに行っている。

「月に6、7件程度の依頼なので、売り上げはそれほどではありませんが、やっていく価値はあると思っています。地域の皆さんだけでなく飲食店さんからも感謝されていますし、これを機会に小川タクシーを東金市内の飲食店をはじめ多くの人々に知っていただき、今後の顧客開拓につなげていきたいです」

東金市には小川タクシーのほかにタクシー業者が数社あるが、代行サービスは行っていない。タクシーサービスの安売りになり、また面倒で運転手がやりたがらないのがその理由ではないかと小川さんは言う。しかし、それが逆にチャンスだと見ているという。

「地域のお役に立てるのなら、新型コロナウイルスの感染拡大が収まっても、このサービスはずっと続けていこうと思っています。また、便利タクシーをきっかけに市内の他業者さんとの付き合いが増えてきたので、今後は皆さんと協力して、何か新しいサービスを生み出せたらと思っています」

コロナ禍で売り上げが大きく減るなか、ただ手をこまねいているのではなく、これをきっかけに新たなビジネスチャンスにつなげていく。人の流れは止まっても、小川タクシーの業種を超えた新たな挑戦は止まらない。

会社データ

社名:小川タクシー有限会社(おがわたくしー)

所在地:千葉県東金市求名37-15

電話:0475-52-2138

HP:https://ogawa-taxi.jimdofree.com/

代表者:小川喜晴 代表取締役

従業員:4人

※月刊石垣2020年10月号に掲載された記事です。

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