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テーマ別企業事例 新型コロナに打ち克つ!中小企業の突破力[小売店・運輸業・宿泊業編]

事例3 コロナ禍も進化のエネルギーに「地獄の白菊」脱却への改革を実践

ホテル白菊(大分県別府市)

全国でも屈指の知名度を誇る別府温泉。同地で70年の歴史を誇るホテル白菊は、新型コロナウイルスの感染拡大で開業初の長期休業を余儀なくされ、大打撃を受けた。しかし、以前から進めてきた労働生産性向上の取り組みが成果を上げており、ピンチはさらなる改革のチャンスと、アフターコロナを見据えて着々と進化を遂げている。

客室の窓からは別府市街と別府湾が一望できる

3年前から働き方改革を推進

JR別府駅からなだらかな坂を10分ほど上がっていくとホテル白菊はある。玄関をくぐるとすぐ脇に体温を計測するサーモグラフィーカメラとモニターが設置され、風情ある佇まいの中で少々違和感を放っているが、お客さまの安心・安全を守る姿勢が表れている。コロナ禍の逆境の中、従業員が笑顔で生き生きと働いているが、その背景には3年前から進めてきた独自の働き方改革がある。

同ホテルは、1950年に団体旅行客をメインとする大型宿泊施設として開業した。その後、宿泊客の増加によりホテルを増床、100に近い客室を総勢200人超の従業員で切り盛りしてきた。近年ではインバウンドの数も増え、年々人手不足が深刻化していた。

「当ホテルはかつて地元で、『地獄の白菊』と呼ばれていました(笑)。少子高齢化で働き手が減って長時間労働が半ば当たり前になり、休日が年間約80日というのが常態化していたんです。しかし、人手不足は今後も加速することが予想され、従業員にも宿泊客にも魅力的なホテルにしなければ未来はないと危機感を持ちました」と同ホテル社長の西田陽一さんは、改革を決めた当時を振り返る。

業務の無駄を洗い出して改善

改革では、労働生産性を向上して売り上げと給料は下げずに、年間休日を105日に増やす。そのために就業規則を抜本的に見直し、大型組織特有の縦割りの弊害をなくすことを目指した。

「担当業務で何が改善できるのか。お客さまによかれと思ってやってきたことの中に、実は無駄なことがあるのでは? という視点を持つことが先決でした。私からは極力指示を出さず、従業員にも何をすべきかを考えさせました」

まず取り組んだのは、料理の出し方だ。それまで朝食バイキングでは、焼き魚100人分を一度に焼いて出していたが、改革後は20人分を焼いて、その後は必要に応じて焼く方法に変えた。一度に大量に焼くのは料理を切らせないためだが、焼きたてを提供するようになってお客さまの満足度は格段に向上した。料理人にしても、準備時間が短縮されて早く出勤しなくてもよくなり、時短に成功した。

客室清掃やセッティング業務も大幅に見直した。客室にはあらかじめタオルや浴衣、多くのアメニティーグッズを宿泊人数分用意していたが、ハンドソープとコップとタオルだけにした。その結果、セットや片付けに掛かる手間が減り、その分客室係が接客に集中できるようになった。

「お客さまへのお茶出しもやめました。その代わり、最上階のフリーラウンジを開放し、各種飲み物とパティシエ特製のスイーツを用意して、自由に飲食してもらえるようにしたところ、大変好評をいただいています」

逆境を新たな見直しのヒントに

ほかにも、さまざまな作業の見直しを進めたことで、月の残業は数時間に激減し、年間の休日数も目標の105日を達成した。効率化が‶手抜き〟になっていない証拠に、旅行サイトの口コミ評価は4・0から4・5にアップし、顧客満足度の向上も同時に実現した。

さらなる改革を進めようとしていた矢先、降って湧いたのがコロナ禍だ。1月の終わりごろからキャンセルが出始め、3月の売り上げは例年の70%減、4月は90%減、5月は休業したためゼロとなった。6月中旬から週末だけの営業を再開し、通常営業に戻ったのは7月の連休以降だ。

同ホテルではいち早く感染予防対策に乗り出し、客1組に2部屋を提供して食事と寝る部屋を分けたり、客室係との接点を減らしたい客には、料理の‶一度出し〟にも対応するなど工夫している。一方、大分県民を対象にした1人5000円を助成する「応援割」を販売したり、別府市の補助金を活用した格安プラン、通称「鬼割プラン」などで集客の喚起に取り組んでいる。

さらに8月からは、固定費を削減するために清掃業務の外注を取りやめ、従業員が行うことにした。それに合わせて、自分の持ち場ではない作業にも臨機応変に対応できるように、細かいシフト表を作成した。さらに、ベテランでも新人でも同じクオリティーで短時間に作業ができるように、清掃手順をマニュアル化し、その動画を制作中だという。

「新型コロナの影響で厳しい経営が続いていますが、今までやってきた改革を、さらに推し進めるヒントを得ることができました。業務を効率化した分、料理の味を追求したり、サービスを充実させて顧客満足をさらに高めることが、今後の集客につながると信じています」

現在、西田さんが知恵を絞っているのは、少ない宿泊客を少ないスタッフでいかに回すかだ。それを実現するために、「ホテルはこうあるべき」という思い込みを捨てて、柔軟に動ける人材を育てたいと、次なる課題を口にした。

会社データ

社名:べっぷの宿 ホテル白菊(べっぷのやど ほてるしらぎく)

所在地:大分県別府市上田の湯町16-36

電話:0977-21-2111

HP:https://www.shiragiku.co.jp/

代表者:西田陽一 代表取締役社長

従業員:100人

※月刊石垣2020年10月号に掲載された記事です。

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