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現状を打破するITコーディネータ 中小企業の頼れる助っ人 Vol.2

協和デンタル・ラボラトリー

千葉県松戸市

木村健二社長は「生産計画立案のシステム化により、技工士が本業の時間に注力できるようになった」と効果を語る

ITCの支援を受けて社内システムの高度化と連携を実現

千葉県松戸市の協和デンタル・ラボラトリーは、高度な歯科治療の一つ、「インプラント(人工歯根)治療」を手掛けている。製品が一個づくりであり、治療技法・素材・作業工程の組み合わせパターンが1000近くもあり複雑だが、ITCの支援を受けて販売、設計・製造、生産計画、会計、技工支援の各システムの高度化と相互連携を実現しつつある。

生産管理が破綻して信用を失い売上高が鈍化

下のグラフを見ていただきたい。1996年度から販売管理システムが入り、2005年度から設計と製作にCAD/CAM(コンピュータ支援設計/製造)を導入した。設計と製造の効率が上がり、売上高が大きく増えた。さらに、耐久性が高く仕上がりが美しい素材「ジルコニア・セラミックス」を使った人工歯を製造するようになり受注が急拡大したが、売上高4億円の手前で頭打ちになってしまった。生産管理がホワイトボードやカレンダーで行われていたため、管理し切れなくなったのだ。

社長の木村健二さんが当時をこう振り返る。

「納期の遅れが再三あり、歯科医院の先生からの信頼を失いました。先生の紹介で得た他の仕事も全てなくなってしまった」 事務部門が行う請求書類作成でも請求漏れなどの混乱が起こっていた。販売管理システムは早期に導入されていたが、販管システムの機能がフル活用されておらず、得意先別単価マスタ(基礎データ)が整備されていないために単価を見るときは紙ファイルの単価表に照らし合わせるというような“半自動化”の状態だった。会計の業務プロセスはさらに遅れており、手書き帳簿やエクセルの単票が使われていた。

頓挫した生産計画モデルをITCの支援により実現

そこで木村さんは生産計画システムの導入を決めた。歯科技工士であり論文や企画書が得意な社員の上鵜瀬(かみうせ)美奈さん、ITの知識を持っていた浅野真吾さんとともにグーグルカレンダーをベースにした生産計画モデルの申請書をつくり、千葉県の08年度「サービス産業生産性向上モデル事業」に応募した。

その結果、90万円の補助金を得たのだが、「実際に開発を始めると実現が難しいことが分かってきました。社内のIT化へ向けた議論も先へ進まないまま期限が近づいてくる。やむなく補助金を辞退するため、県の担当者に謝りに行きました。ところが、ここが当社のIT化のスタートとなったのです」(木村さん)。 県の担当者は助け船として、ITCの鬼澤健八(おにざわたけや)さんを派遣してくれた。

「期限を守るために週1回は通った」という鬼澤さんは、各自の裁量で働き、書類も手書きで作成してきた現場の技工士と、革新を目指す木村さんたちの間に温度差を感じたという。互いの意見が折り合わず、コンピュータで管理されることへの拒否感もあった。

そこで鬼澤さんはまずIT化の必要性を社員に丁寧に説明した。生産計画立案ソフトとして、他社で導入実績があり、予算の範囲内で導入できる富士通の「PLASURM(プラシューム)」を選んだ。導入後数カ月で試験運用、その後マスターづくりを行い、本格運用に移行した。すると売上高は再び上昇に転じた。

ところが、運用が軌道に乗ったところで上鵜瀬さんが退社し、米国へ行くことになった。事務長の木村千枝子さんは「中心人物に抜けられると困るので米国在住のまま契約社員として働いてもらうこと」を提案。日米の12時間の時差を利用してスケジュールを組んだ。会議などはスカイプ(インターネット電話)で行うことで、距離に関係なく効率的に時間を使うという経験から、テレワーク(場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)の可能性が生まれた。現在、上鵜瀬さんは帰国して正社員に戻っているが、同社には沖縄へ帰って、ネット・PCの環境を整え、皆と同じ情報システムを利用して、本社内の別室にいる感覚で仕事をしている社員もいる。

IT化が進むと人との関わりが一層大切になる

14年からは販売管理、生産計画、技工支援システムの連携が始まった。17年には経済産業省の「平成29年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金」を受けて、日本の匠の技とITを活用したデジタル技工ネットワークシステムの構築を進めている。

ドイツのケルンで2年に一度開催されるケルン国際デンタルショーなどを通じていち早くIT化、AI化を予見した木村さんであっても、「ITCに会社を見てもらうことから始めないとIT化は難しい」と感じている。一方で経営者としては「人とのつながりを大切にしていきたい」と木村さん。「そうしなければ会社がITやAIに飲み込まれてしまいます」 会社のIT化により、経営は効率化されるが、経営者は一層社員に対する見識を問われている。

会社データ

社名:有限会社協和デンタル・ラボラトリー

所在地:千葉県松戸市新松戸3-260-1

電話:047-343-2670

HP:https://kyowa-dental.co.jp/

代表者:木村健二 代表取締役

従業員:71人(パート従業員含む)

※月刊石垣2018年12月号に掲載された記事です。

ITコーディネータとは?

ITコーディネータとは、真に経営に役立つIT利活用に向け、経営者の立場に立った助言・支援を行い、IT経営を実現する人材です。現在、経済産業省の推進資格として、約6300人の資格保有者が全国各地で活動しています。

HP:https://www.itc.or.jp/

支援ITコーディネータ
おにざわIT経営支援オフィス代表
一般社団法人中小企業IT経営センター理事
鬼澤 健八さん
成功の要因は経営者の先見性とIT化への強い意欲です。構築中の「技工ネットワーク」は、木村社長の「技工データを共有し、歯科技工所が連携して仕事を獲得するとともに、作業の効率化、高品質化を実現して国際競争力を強化する」という考え方に沿ったもの。またCAD/CAMとのデータ共有も視野に入れています

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