現状を打破するITコーディネータ 中小企業の頼れる助っ人 Vol.3

山岸

神奈川県小田原市

下田准一さんは中小企業では少数派の親族外事業承継により15年7月、社長に就任した。

会社の一体化を図るためITを活用して情報を共有

神奈川県小田原市の山岸は包装・物流のトータルサプライヤー。オフコン時代から基幹業務システムを導入し、ITの時代に入るとITコーディネータ(ITC)を活用して情報共有化による業務の効率化に取り組んだ。その結果、2014年「IT経営実践認定企業」認定、16年「攻めのIT経営中小企業百選」認定という成果を残すことができた。

1980年代、山岸は基幹業務システム(販売・仕入れ・財務会計)を導入し、2003年にはOBCの奉行シリーズを導入、販売・仕入れ・財務会計・給与システムの運用が始まった。13年1月の奉行iシリーズ導入と同時に、受注伝票(4枚複写原票)などを廃止し、ペーパーレスを推進した。そしてITCの土方千代子さんの支援を受けて経済産業省「中小企業IT経営力大賞」に応募、13、14年と連続で「IT経営実践認定企業」に選定された。

IT化を推進するための4つの重要な視点

社長の下田准一さんは、導入時に留意すべき課題として、次の4点を挙げる。

①現場の問題点・改善希望などの意見収集を十分に行う

②システムは一括導入しても、現場への導入は段階的に行う

③システムの導入は、販売情報・データ処理の効率化とデータの共有化を図るという作業者支援・省力化の目的で進め、管理目的にしてはならない

④効率的に進めるためには、全利用者に同じ環境を整備し、データ処理の省力化・共有化(業務のルール化・標準化・平準化)を行う必要がある

これらの課題を解決しながら基幹業務システムを導入した結果、本社並びに部門ごとに収支管理ができるようになり、余った時間をその他の業務に費やす付加価値率と労働生産性が向上した。

IT化を主導する会長の山岸功治さんは次に、「サプライヤーとして生き残るためには、管理コストの低減と営業力強化が鍵を握る」と考えて、情報共有を徹底するため、顧客との交渉情報などを一元化、従業員がモバイル端末を利用して、いつでもどこからでも確認できる仕組みを完成(図参照)させた。その結果、ITCの土方さんとチームを組むITCの馬場尚子さんの支援を受けて経産省の「攻めのIT経営中小企業百選2016」に選定された。

社員一人当たりの採算性が向上

状況に応じた的確な意思決定を行うため、ITインフラを活用した情報のオープン化にも取り組み、「毎月の営業所長会議では、売上高、営業利益、仕入れ、一般管理費、製造原価といった情報を全て公開しています」(下田さん)。社員に対しては、部門別の収支を管理して、京セラのアメーバ経営を応用した「山岸式人時当たり採算表」を公開している。山岸式を通して業績の推移を見ると「労働時間が短縮されているにもかかわらず、売り上げと給与の両方が上がるという、社員の採算性向上が見られます」(馬場さん)

「攻めのIT経営中小企業百選2016」選定後、下田さんが取り組んだのが、土方さんと馬場さんの支援を受けて16年8月からスタートした「適正在庫に向けた改善活動」である。

「在庫の状況を知っている我々は整理をしているつもりになっていた。そこを馬場さんは外部の目で整理をした。すると『なんだこれは』という状況が浮かび上がってきました。例えば、商品コードはある。仕入れ先コードもある。それなのに商品と仕入れ先がひも付けられていなかった」(下田さん)。「山岸の皆さんは常に顧客の方を向いて仕事をしています。しかしその結果として営業のAさんが得意客向けに在庫している商品と同じものを、営業のBさんが別場所で確保していたというような無駄が生じていました」と馬場さんは当時を振り返る。

経営を透明化することで親族外事業承継を実現

改善活動は17年5月まで続き、在庫管理の一元化などの新たなシステムが動き出した。18年12月からは基幹業務システムが更新され、商・蔵奉行ERP10/勘定・給与奉行に移行し、より高度なIT化が実現した。だがこれで終わりではないと、下田さんは言う。 「IT化の最終的な目的は効率ではなく情報の一元化と共有です。上の情報を下が知り、下の情報を上が知ることで会社が一体化する」

同下田さんは人材育成にも力を入れ、社員のスキルアップのため資格取得を推奨している。「経営改善はIT化の推進だけでは難しい。人材育成との両輪で事業永続を図っています」

山岸のIT化にはもう一つ大きな目的があった。「事業承継」である。二代目社長だった山岸さんは創業者の息子だが、15年に就任した三代目の下田さんは同族外(従業員)からの抜擢である。創業家の理解もさることながら、IT化によって会社の透明化と情報の共有化ができていたからこそ親族外事業承継がスムーズに進んだ。

山岸のIT化は会社の利益を最大化し、従業員と顧客の満足を高め、懸案だった事業承継問題の解決にもつながった。

会社データ

社名:山岸株式会社

所在地:神奈川県小田原市鬼柳203番地18

電話:0465-37-5501

HP:https://www.yamagisi.co.jp/

代表者:下田准一 代表取締役社長

従業員:41人

※月刊石垣2019年1月号に掲載された記事です。

ITコーディネーターとは

ITコーディネータとは、真に経営に役立つIT利活用に向け、経営者の立場に立った助言・支援を行い、IT経営を実現する人材です。現在、経済産業省の推進資格として、約6300人の資格保有者が全国各地で活動しています。

HP :https://www.itc.or.jp/

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ITCインストラクター
馬場 尚子さん
独立系システムインテグレーターにて、ITコンサルティングをはじめ顧客目線でのITシステムの企画〜設計、移行・運用までをトータルに支援することを経て、独立。現在、業務改善コンサルティングのほか、日本経営品質賞の審査員活動やITコーディネータの育成およびコーディネータ間のネットワークの推進にも積極的に携わっている。I&I Management Firm 理事
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