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菅内閣に望む(全文) 2020年9月29日 日本商工会議所

梶山経産相(右から2人目)を訪問した三村会頭(右端)ら (経団連提供)

わが国経済は、新型コロナウイルスの影響でリーマンショックを上回るマイナス成長に陥り、緊急事態宣言解除後も感染拡大への強い警戒感から国民の消費マインドは停滞し、経済回復に力強さを欠く状況が続いている。

こうした中、中小企業はコロナ支援策を最大限活用し、事業継続と雇用維持に懸命に取り組んでいるが、その努力も限界に達しつつある。再度の緊急事態宣言という事態になれば、雇用や消費、サプライチェーンの担い手として、わが国経済および地域経済社会を支える中小企業の倒産・廃業の急増が強く懸念される。

新型コロナウイルスが常在しながらも一定の制御下に置き、活動レベルを一段と引き上げ、社会経済を可能な限り活発化させていく感染拡大防止と社会経済活動の両立が最優先課題である。この際、東京オリンピック・パラリンピックを国民が希望を持ち一致団結し、感染拡大防止と社会経済活動を両立から経済回復へとつなげる象徴的なターゲットと位置付け、開催に向けて戦略的に取り組まれたい。

今後の社会経済で最も考慮すべきは、激甚化する大規模自然災害や国際秩序の変化などかつてない不確実性の大きさである。

この環境下を生き抜いていくためには、変化に迅速に対応する柔軟性が不可欠であり、国家運営の基軸に、リスクに備えることで不確実性を吸収できる「戦略的なゆとり」を賢く組み込んだ国家運営ビジョンの策定が必要である。

菅新内閣には、安倍政権下での実績ある政策を継承しつつ、現下の難局を切り開き、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えた経済回復を実現し、世界における日本のプレゼンスを高められるよう、力強い実行力とリーダーシップの下、以下に掲げる政策に早急かつ集中的に取り組まれたい。商工会議所としても自ら行動し力を尽くすとともに、政府に対し最大限の協力を行う所存である。

1.感染拡大防止と社会経済活動の両立を支える検査・医療提供体制の整備

ワクチンや治療薬の開発・実用化に万全を期すとともに、国民や事業者に感染拡大防止へのガイドライン順守などの取り組みを引き続き促し、新たな感染の波が発生しても再開した活動レベルを維持できるよう、自治体などと連携し、社会経済活動維持の基礎的インフラである検査体制の拡充と医療提供体制の安定化を強力に推進されたい。併せて、国民に体調不良時は直ちに検査を受けるようメッセージを発信し、感染拡大防止に努められたい。

また、海外との往来緩和に伴う出入国などのビジネス目的による検査需要が高まる中、各地域の中小企業なども円滑に民間検査を受けられるよう、新検査技術や機器導入などへの支援拡充を通じて検査費低減などのコスト軽減を図られたい。

2.倒産・廃業防止への支援継続と小規模・中小・中堅企業の付加価値創出

コロナ禍で倒産・廃業の危機にひんしている小規模事業者などの事業継続・雇用維持への支援を継続し、地域コミュニティーの崩壊を防ぐとともに、新たなビジネス変革に挑戦する中小・中堅企業が生産性向上などを通じて付加価値を創出できる環境整備が急務である。特に、コロナ禍で進展した中小企業のデジタル活用を生産性向上などの経営強化につなげるため、中小企業目線でデジタル化支援できる専門人材の育成・派遣などを強化すべきである。

また、ポスト・コロナを見据えた新事業展開や既存事業の再編、事業承継やM&Aなどに挑戦する中小企業の支援を拡充するとともに、サプライチェーン全体の付加価値向上、取引価格や知的財産などの取引適正化に資する「大企業と中小企業の新たな共存共栄関係」構築の推進に向け、「パートナーシップ構築宣言」企業数の増加を図るなど、中小企業が新たな付加価値を創出し、賃上げなどにも対応できる環境整備を図られたい。

併せて、こうした民間の挑戦を支える基盤整備として、省庁の枠組みにとらわれず、マイナンバー制度の有効活用をはじめとした行政のデジタル化の加速と、これを強力に推進するデジタル庁にも期待したい。また、規制改革への取り組みを思い切って進めるとともに、国内外で脱炭素への動きが強まる中、「3E+S」を前提に実態に基づきバランスの取れた政策を通じ、エネルギーの安定供給と経済性の両立を図られたい。

3.地方分散型社会に向けた地方創生の再起動

コロナ禍で東京一極集中のリスクやコストの大きさが判明した。テレワークなどを契機に企業の地方拠点の強化や、二地域居住などへの関心が高まっており、地方分散型社会に向けた地方創生に改めて取り組む好機である。

都市の集積効果を生かしつつ地方分散を推進するリバランスの観点から、リモートワークのためのサテライトオフィスの推進、通信・教育などの生活環境整備、地場産業の育成など、地域の多様な主体が中心となった魅力的な地域づくりを強力に支援されたい。そのため、地方創生臨時交付金の増額も必要である。

また、コロナ禍で難しい舵(かじ)取りが迫られている観光や第1次産業については、二次感染防止を徹底したGoToキャンペーン事業やマイクロツーリズムなど国内需要を最大活用した観光振興、スマート農業や農商工連携で成長産業化を図るなど、各地域の知恵を絞った取り組みを推進するとともに、激甚災害に備えた防災・減災・国土強靭(きょうじん)化、BCP対策の強化や、来年で10年を迎える震災復興と福島再生の支援にも継続的に取り組まれたい。

4.少子化対策や社会保障改革など構造的課題の克服

人口減少・少子高齢化の進展は、労働力や地域社会の担い手の減少、市場規模の縮小、現役世代の負担増加など、国の将来を左右する最重要課題であり、人口減少に歯止めをかけるため、「希望出生率1・8」の実現に向け、国を挙げて少子化対策を推進されたい。

また、これら課題の克服には多大な財源が必要であり、当面、新型コロナウイルス緊急対策による歳出増はやむを得ないものの、ワイズスペンディングの徹底の下、高齢世代への給付に過度に偏った社会保障改革など痛みを伴う歳出改革に不断に取り組まれたい。