日本商工会議所は11月19日、新型コロナウイルス感染症により、事業継続や雇用維持などが極めて厳しい経営環境に置かれている全国の中小企業に対するさまざまな対策や支援策をとりまとめ、政府および関係各所に意見として提出いたしました。当所では、本意見の実現に向け関係各所に働き掛けを行うとともに、引き続き感染拡大防止と社会経済活動の両立に向け取り組んでまいります。
意見本文はこちら
意見の概要
【基本的な考え方】
■需要喚起策で社会経済活動レベルは確実に上昇するも、感染再拡大懸念から経済回復は力強さを欠いている。
■活動制約で需要回復が停滞する中、中小企業は事業継続、雇用維持に必死に取り組んでいる。
■需要や売り上げ拡大が難しい中、中小企業の変革への挑戦が成果を得るには一定の時間を要する。今後の対策は、緊急経済対策で中小企業の経営を底支えして時間を稼ぎながら、変革への挑戦を後押ししていく視点が重要。
■各地で感染者が増加する中、コロナ禍克服の最大の対策は「感染拡大を最小限に抑えつつ、活動を最大限に活発化させていく」両立環境の整備。活動自粛が経済や財政に与える悪影響を鑑みれば、感染急拡大時への備えの拡充が費用対効果の極めて高い政策。
■こうした取り組みを通じ、官民一体で感染防止と社会経済活動の両立環境を整備すべき。
Ⅰ 感染拡大防止と社会経済活動の両立環境の整備
1 検査体制の強化と医療提供体制の確保、国を挙げた感染拡大の防止と早期検知・封じ込め
1.検査体制の強化、医療提供体制の確保<地域の実態に即した柔軟な対応を支援>
1日20万件検査が確実に実施できる検査体制確保とさらなる拡充、それを支える医療提供体制の確保、医療機関などの経営安定化、新型コロナ患者の診療を受け入れる医療機関に対するインセンティブの付与、あらゆる情報やデータなどを分析・活用した感染拡大の早期検知による感染封じ込め
2.国際往来の増加に対応した水際対策の強化(出入国管理体制の強化)
3.国民、事業者における感染予防意識の再醸成と徹底
・国民や事業者が「感染する原因を理解して効果的な防衛策をとれる」適切な情報公開
・国民に対する感染予防対策への協力要請(国民自らの感染予防の徹底(マスク着用など))
・ガイドラインの効果検証と進化を通じた事業者の感染予防対策の徹底と取り組み支援
・感染者や感染者が発生した事業所などへの風評被害の防止(偏見や差別行為の排除)
2 社会経済活動を活発化させる、地域における需要喚起やしごと創出への支援拡充
1.感染拡大防止の徹底の下、GoToキャンペーン事業の期間延長
・消費誘発効果などを検証した上でのGoToキャンペーン事業の予算拡充と期間延長
・定額補助制(例:5千円程度)の導入による比較的低廉な宿泊施設への利用分散
2.地方分散型社会の推進、地域へのビジネス需要の取り込み
・サテライトオフィスやリモートワークスペース、ネットワーク環境整備
・サプライチェーンの国内回帰、ものづくり企業などの地方立地支援を通じた強靭化
3 東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた環境整備
・「感染拡大防止と社会経済活動の両立」の実現を図る具体的な目標として、開催に向けた環境整備の推進
・国内外の大規模スポーツイベントの実地検証・情報収集を通じて感染拡大防止に役立つ科学的見地を蓄積し、適切な競技・観覧方法などの確立への取り組み推進
Ⅱ 中小企業の事業継続とポストコロナを見据えたビジネス変革への支援
1 中小・小規模事業者の事業継続、雇用維持への支援
1.事業継続への支援継続と拡充
・コロナによる影響が大きい飲食業、小売業、宿泊業、交通事業者などへの集中的な支援
・さらなる金融支援の充実(返済猶予などの既往債務の条件変更、前向きな追加融資など)
2.雇用維持への支援継続と拡充
・雇用調整助成金の特例措置の21年3月末までの延長、一般会計による国費負担化
・雇用吸収力のある産業や成長分野への「失業なき労働移動」の促進
2 ポストコロナを見据えた中小・中堅企業などの構造変化への取り組み支援
1.中小・中堅企業のビジネス変革などへの支援
・事業再構築、業種転換などへの挑戦支援(中小企業生産性革命推進事業の拡充など)
・新事業展開、国内外への販路拡大支援(ECサイト、オンライン見本市へ費用助成など)
・事業承継・引き継ぎ、経営資源集約化(M&Aなど)、事業再生への支援の強化
2.中小企業の生産性向上に資するデジタル実装支援
・バックオフィス業務や企業間連携などに資するデジタル実装支援、専門人材の育成・活用
3.中小企業の付加価値創出に向けた環境整備
・大企業と中小企業の新たな共存共栄へのパートナーシップ構築宣言による取引適正化
最新号を紙面で読める!