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テーマ別企業事例 コロナ禍に負けない企業が取り組む 逆境に強い人材の育て方

事例1 会社の理念を社員の間に浸透させ逆境でも攻めの姿勢で進んでいく

コーワパートナーズ(群馬県渋川市)

群馬県中央部の渋川市に拠点を置くコーワパートナーズは、グループ会社とともにオフィス機器の営業や外国人実習生共同受け入れ事業などを行っている。コロナ禍で売り上げが落ち、雇用調整助成金を活用して社員の雇用を確保する中、同社は9月に新たな営業所を立ち上げた。それを可能にしたのは、経営者が会社の理念を社員に浸透させ、それに沿った社員教育を行ってきたからこそだった。

コーワパートナーズの本社。群馬県の中央〜北部を主な営業エリアとしている

社員の間の価値観の対立を会社の理念で解決していく

来年で創業50周年を迎えるコーワパートナーズは、先代の創業者が事務機の販売会社をつくり、地域の店舗などに当時出て間もないレジスターを販売したのが始まりである。2006年に現社長の杉木基泰さんが父親の後を継ぐと、徐々に事業を拡大していき、今ではグループ会社が健康事業や食品事業、外国人実習生共同受け入れ事業、バイオマス関連事業、日本語学校運営などを行っている。社員数も、事業承継時の22人から、現在では135人にまで増えている。

そんな中、社員に対する教育に力を入れ始めるようになったきっかけについて、杉木さんはこう語る。

「10年ちょっとの間に社員が急激に増え、中途採用と新卒採用の社員が半々くらいになりました。すると、社員の間で価値観の違いによる対立が見えてくるようになってきて、どうやったらお互い分かり合いながらみんながプラスの影響を与え合えるような組織にできるだろうかと考えました。日本商工会議所青年部の知り合いに相談したところ、外部の人材育成会社のセミナーを勧められ、18年11月に僕とグループ会社の代表3人で受講しました。そこで教えられた内容に感銘を受け、それまで僕が考えていたことと合わせて、その年の会社の忘年会で、グループ会社全体の理念となるグランドデザイン『全体構想』を発表したのです」

そのグランドデザインは「物心ともに自ら満足し、他者に貢献できる人財を、世の中に多く輩出する」というもので、それを会社全体で実現していくための方策として、社員それぞれが自らに問いかける「セルフカウンセリング」と、社員同士の間でやるべきこと、やってはいけないことを定めた「七つの習慣」も設定した。

仕事のテクニックではなく精神教育のほうが重要

「セルフカウンセリング」は、社員一人ひとりが自分の求めているものは何かを自らに問いかけるような以下の内容になっている。

1.私は何を求めているのか? 私にとって一番大切なものは何か? 私が本当に求めているものは?

2.そのために「今」何をしているのか?

3.その行動は私の求めているものを手に入れるのに効果的か?

4.もっと良い方法を考え出し、実行してみよう

また「七つの習慣」では、やるべきこと、やってはいけないことを以下のように定めている。

○ 傾聴する、支援する、励ます、尊敬する、信頼する、受容する、意見の違いは常に交渉する

× 批判する、責める、文句を言う、ガミガミ言う、脅す、罰を与える、目先の褒美で釣る

これらを定めた理由について、杉木さんはこう説明する。

「社員のみんなが、この先5年後、自分は人生においてどこに向かっていくかが確立できれば、その人の行動が変わると思っています。例えば給料の額だけで仕事や人生を測っていたら、人間的に成長しないし、ましてや他者に貢献しようなどと考えません。仕事を通じて、自分の幸せ、自分の大事な人の幸せ、そして憎たらしい人の幸せも考える。そうすると、社内の人間関係でもお客さまとの関係でも、果たして自分は人に対してこんな接し方でいいのだろうかと考えるようになる。仕事で必要なテクニックは、仕事をしていく中で覚えていってもらえばいい。それよりも精神教育のほうが社員教育の根本として重要だと思っています」

社員自らが考えるようになり逆境の中でも信頼が生まれた

昨年4月からはグループ会社の幹部たちにもセミナーを受けてもらい、月に1回、杉木さんとミーティングを行って、理念の浸透を図っている。そして、その幹部たちが、それぞれの会社で社員たちと面談をし、勉強会を行っている。さらに、有望な社員には会社が費用を全て負担して、セミナーを受講させることも始めている。

「幹部の中には、怒るなというが、部下がミスしたら上司が怒って正すものだ、と言う人もいました。でも、怒るのではなく、なぜその社員がそういう行動をとったのかを考えてあげる組織にしていきたい。幹部の中にそれに共感する人が出てきており、失敗しても相手を許そうとする雰囲気が社内に生まれたことで社員のストレスが減り、営業先のお客さんにいい笑顔を届けられるようになりました」と杉木さんは胸を張る。

そして、このコロナ禍において、9月に群馬県最大の都市である高崎市に新たな営業所を立ち上げた。これが実現したのも、グランドデザインを発表してから2年弱ほどの間で進めてきた社員教育の成果だと杉木さんは言う。

「社員一人ひとりが何をすべきか自ら考えるようになり、この逆境の中でもみんながやってくれるだろうという信頼があったからこそ、高崎への進出を決められました。もう一つは、経営者が逆境をはねのける強さを持っていることも重要だと思います。経営者が攻めの姿勢を見せれば、その背中を見た社員たちも、自然と攻めの姿勢になるものです」

コーワパートナーズは、社内教育により社内の全員が共通の理念を持ち、経営者が自ら逆境の先頭に立って攻めていくことで、コロナ禍の困難な状況を乗り越えていこうとしている。

会社データ

社名:株式会社コーワパートナーズ

所在地:群馬県渋川市阿久津50-1

電話:0279-23-5319

HP:https://kowa-p.jp/

代表者:杉木基泰 代表取締役

従業員:135人(グループ会社全体で)

※月刊石垣2020年12月号に掲載された記事です。

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