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身の丈ITで生き残れ! vol.20

佐々木航代表取締役は、2020年の「全国中小企業クラウド実践大賞」でクラウドサービス実践事例を発表した

岩手県岩手郡雫石町に本社を置く航和は、1972年に前身の佐々木整骨院を開業、2007年に介護分野に参入し、「ななかまど」と名付けた居宅介護支援事業所、通所介護事業所、訪問介護事業所を開業した。未経験分野への進出で悩まされたのは職員の離職率の高さ。そこで職員に聞き取り調査を行い、IT化による解決策を見つけだした。

事務作業負担をITで解消し離職率を改善

佐々木航さんが代表取締役を努める航和は、佐々木整骨院を前身とし、グループとして、整骨院、居宅介護支援事業所、通所介護事業所、訪問介護事業所、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスなどを展開する。

患者からの要望もあり、介護事業進出を決めた佐々木さんは、2007年に航和を設立し、08年に「ななかまど」と名付けた通所介護事業所と居宅介護支援事業所を開設、その後、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅開設というように事業を拡大していった。

その過程で佐々木さんが悩まされていたのは「離職率の高さ」だった。それは介護業界全体の課題でもあったが、航和では離職率が28%に達していた。そこで離職の原因を明らかにするために職員に聞き取り調査を行った。

調査の結果は佐々木さんにとって意外な内容だった。職員の多くは、介護の仕事に付随する事務作業の多さに不満を抱いていたのである。介護の仕事で扱う情報量は膨大だ。例えばデイサービスでは、利用者の介護記録やケアプラン、スタッフへの伝達事項や活動報告などの書類を残さなければならない。ところが、当時の介護業界には、情報共有は「紙」で、という概念が根強くあった。そこをペーパーレスにすることで職員の負担を軽減し、情報共有が進むのではないか。そう判断した佐々木さんは、IT化に踏み切った。具体的には、佐々木さんが個人的にメモ管理ツールとして使用していた「Evernote(エバーノート)」のビジネス版(NTTドコモ)を15年11月頃から導入した。エバーノートは、タブレットやスマートフォン端末で使うノートアプリで、文章や画像、動画などはクラウドに保存し、端末で書き込んだり呼び出したり、必要な情報の検索が素早くできる。導入当初は、「現場の介護士さんたちからの反発はすごくありました。でも、徐々に利便性がわかると使ってくれるようになりました。一番は管理者が現場のことを共有できるのが良かったのではないでしょうか」

続いて17年に介護向けケア記録ソフト「ほのぼのNEXT」(NDソフトウェア)を導入した。ケア記録から介護請求書の作成まで連動させることができ、ほとんどの操作がマウスでできる。

「実はもう一社の大手介護福祉ソフトを使用していたのですが、事業所間の連携・連動ができなかったため、新しい事業所をつくるタイミングで入れ替えました。当社はデイサービス、有料老人ホーム、訪問介護事業所など多岐にわたる事業をしているため、情報共有ができるのかという部分のみにこだわりました」

IT化で苦労した点は、費用と入れ替え作業だった。

「費用は、以前使用していたリースなどを残したまま、システムを入れ替えたので、1500万円くらい掛かりました。約半分は補助金と自己資金になりますが、必要経費と考えれば仕方がないと思っています。入れ替えの作業は管理者とNDソフトの人が一緒に作業をしてくれました」

「ほのぼのNEXT」の導入により、航和のIT化は一気に進んだ。並行して有休消化率を大幅に増やしたり、子育て世代が働きやすい環境(子連れ出社)整備をしたりと、職員が働きやすい環境に変えていったことで、18年には職員1人当たり1日40分の作業時間が削減でき、離職率は8%まで改善した。

ホームにAIを活用したスマートルームを設置

佐々木さんの新たな取り組みは、スマート老人ホームだ。19年4月、住宅型有料老人ホーム「ななかまど津志田」にAIを活用した介護スマートルームを設置した。この居室にはクラウドベースの音声サービスAlexa(アレクサ)が導入されており、利用者が話しかけると会話ができたり、質問に答えてくれたり、いろいろなジャンルの音楽を聞かせてくれたりもする。テレビの電源のオンオフや音量調節、照明の調光も音声でできる。

アレクサを介護施設に導入した理由は三つ。①離れた家族とのテレビ通話。②介護士の業務作業の軽減。③利用者が楽しめること。

「離れていても好きな時に家族とつながる環境(①)は、これからはより増えてくるのではないでしょうか。また、テレビやエアコン操作でナースコールされていた業務をAIスピーカーが代行してくれます(②)。これは介護士不足が深刻な介護業界には今後必要になってくると考えています。そこで、介護スマートルームを広めるため、サンメディカル、SHINKOと協定を結び、全国どこでも整備対応する準備を整えました」

そう話す佐々木さんは、職員、利用者の双方に大きなメリットをもたらすIT化を今後も推進していく計画だ。

会社データ

社名:株式会社航和(こうわ)

所在地:岩手県岩手郡雫石町柿木5-4

電話:019-692-3669

代表者:代表取締役 佐々木航

従業員:67人

HP:https://www.kouwa.iwate.jp/

※月刊石垣2020年12月号に掲載された記事です。

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