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身の丈ITで生き残れ! vol.19

日本設計工業の名倉慎太郎社長は、自社の働き方改革、社員のスキル向上にも熱心。社内には「ロボットクラブ」という技術者を育成するプロジェクトもある

省人・省力・省コストのためにロボット導入を検討している中小企業は多い。導入には費用がかかるため、コスト削減効果を第一に求めたくなるが、実はロボット導入の最大の目的はほかにもある。それは、労働人口減少の中で勝ち残る企業になることだ。

FAの知見を生かした最適な生産ラインを構築

ものづくりのまち・静岡県浜松市に本社を置く日本設計工業は搬送マテハン(マテリアルハンドリング、物品の搬送機器)の専門メーカー。1980年代からFA(ファクトリーオートメーション)分野に進出し、人の代わりに作業を行う機械装置(いわゆるロボット)に関する知見を蓄積してきた。現在は産業用ロボットシステムの構築を担うロボットSIer(ロボットシステムインテグレーター)業務も行う。

代表取締役の名倉慎太郎さんは同社を「ライン・ビルダー」と位置付ける。経済産業省の「2016年版ものづくり白書」はライン・ビルダーを「生産設計技術だけに特化した超エキスパートとして活躍する製造業の事業形態」「工場の設計や機器の導入場所まで含めて一貫して提案できる工場をプロデュースする製造業」と説明している。同社の場合は、ヒアリングによって顧客の目的・課題を明らかにし、それに合った生産ラインを設計・構築し、生産に必要な工作機械、搬送装置、周辺装置などを調達して組み立て納入する。そこには産業用ロボットも組み込まれる。多くの産業用ロボットは、メーカーからはマニピュレーターと呼ばれる本体だけが出荷されるので、生産ラインに合った手や目(センサー)や周辺装置を組み付けて使えるように仕上げる。この仕事を行うのがロボットSIerだ。

ロボットと聞くと、同じ仕事を高速で繰り返すことで生産効率を上げる存在だと思われている。名倉さんによると、「ロボットが得意な分野であれば人以上の能力を発揮しますが、苦手な分野では効率よく働けないこともある」という。

では苦手な分野では役に立たないのかというと、そうではない。

「昨今のものづくりの求められる少量多品種生産の最適な生産方式は、(極論を言えば)熟練工が一生懸命働くことです。しかし、少子高齢化により労働人口が減っていく中で、若い人の採用が難しくなっている。そこで国籍、年齢、性別などを問わず働ける現場環境をつくることを経営者は考えています。そのダイバーシティー経営の中に、ロボットも入ることができるのではないでしょうか。人手不足が深刻で‶ロボットの手も借りたい〟工程であれば、環境を整えることで(熟練工のようには働けなくても)役に立ちます」

そうやってロボットを上手に使う経験を少しずつ積み重ねていった会社は、「5年後、10年後、労働人口の減少により人が採用できなくなったときに、ロボットが代わりに働く‶勝ち残る会社〟になれるのではないでしょうか。しかも、ロボットでも働ける環境を整えた会社は、働きやすいという評判を呼んで、採用にも好影響を与えるかも知れません」(名倉さん)

従業員の隣で働くロボットを導入して生産性を向上

同社が手がけた事例として、ある三品産業(食品・化粧品・医薬品産業)のA社(前画像参照)がある。A社は人手による部品のピッキング・組み立て・検査工程の生産ラインを構築していた。多品種生産ラインのため、作業人員10人による柔軟性のある作業が必要だった。ロボットは各工程に導入したが、ここではピックキング工程を取り上げる。

ピッキング工程では、複雑な形状をした多品種な部品を扱う必要があった。そこで、人の上半身のような形をし、二つの腕を持つ「ヒト型協働双腕ロボット」(人に対する安全性を確保して安全柵なしで働くロボット)を導入、人のような複雑な動きを実現するとともにハンド(手先の部品)交換を極力なくし、サイクルタイム(一つの工程に要する時間)の短いシステムを構築した。さらにラックから多品種部品をピッキングするために、ロボットには走行と上下移動機構を持たせて、より人に近づけた。その結果、人員は10人から5人に減り、労働生産性は2倍となり、同時に品質向上が図られた。

導入成功のポイントは3点ある。①ロボット導入の目的・到達点などを明確にした。②現状の作業を定量的に分析し、ロボットにできること・できないことを構想段階で明確にした。③ロボットの特徴を熟知し、ロボット単体で自動化が難しい場合は、補助機構・治具(じぐ)などの設置を行った。

同社は「ハマロボSIerナビ」という浜松商工会議所による「産業用ロボット導入支援プロジェクト」に参加している。名倉さんはこのプロジェクトにこう期待を込める。「浜松のロボット産業を考えたとき、部品のまちを目指したのでは遅い。でも、ロボットを日本一、世界一上手に使うまちなら今からでもなれる。ロボットSIerとして世界一に貢献するために、地元企業とのマッチングの場として、『ハマロボSIerナビ』を活用したい」。ものづくりのまち・浜松が世界に誇る産業が、また一つ生まれそうだ。

会社データ

社名:株式会社日本設計工業

所在地:静岡県浜松市北区大原町500

電話:053-436-6161

代表者:名倉慎太郎 代表取締役

従業員:136人(アルバイト他含む)

HP:http://www.nissetsuko.co.jp/

※月刊石垣2020年11月号に掲載された記事です。

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