わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.18

中村社長もテレワーク中。社内会議や取材対応はG Suiteの「meet」で行っている。同社が進めるいつでもどこでも同じクオリティで仕事ができる「どこでもオフィス」の実験だ

青梅市に都市ガスを供給する青梅ガスは、グーグルが提供するサービス「G Suite」を使い、会議のペーパーレス化に成功。コロナ禍の現在はテレワークにまで範囲を広げている。「お金のかからない環境」で導入を始め、時間をかけて社内に浸透させていった、身の丈ITの成功事例だ。

お金をかけない身の丈ITでペーパーレスを実現

iPhoneが普及し始めた2010年当時、スマートフォンを使ってメールやデータを管理・閲覧している人はまだ少数だった。そのころ、青梅ガス社長の中村洋介さんは、携帯電話に入っているスケジュールをパソコンとリアルタイムで同期したい、社内メールをモバイル環境でも見たい、そして多少不安定なところがあった社内メールのバックアップ用メールが欲しいと考えていた。といっても、「予算を組んでシステムを構築して……というふうに頑張るつもりも覚悟もなく、モバイルに詳しい社員に相談したりして、軽い気持ちで始めたことでした」。

当時の中村さんにとっては、それが「身の丈IT」だったので、とにかく「お金のかからない環境で始めてみる」ことを条件とした。その条件(つまり無償)で探してみると、グーグルが提供するメールの「Gmail」とクラウド環境で使えるスケジュール管理の「Googleカレンダー」が候補になった。

中村さんが試用してみて実用に耐えることを確認し、11年6月、いよいよ身の丈ITの導入が始まった。まず、Googleアカウントを取得し社員全員に付与。Googleカレンダーに社員間で外出・休暇・会議室の予約を共有管理できるようにした。

7月、一部社員にiPadを配布してモバイル環境での試行を開始。社内メールを社外から利用するとともに、Gmailも並行して利用。社内資料を保管するクラウドストレージには、ほぼ唯一の選択肢だった「Dropbox」を選んだ。12年4月にはグーグルの無償クラウドストレージ「Googleドライブ」がリリースされたため、Dropboxに代わり採用した。

メールやストレージの利用が進み、社員が便利さを実感した頃合いを見計らって、中村さんは「会議のペーパーレス化」に取り組んだ。

「会議は紙の資料のみで開催していたのですが、プロジェクターに投影するために電子化された資料も用意して、会議用PCにメールやUSBメモリで入れていました。これをスマートにしたかった」

だが中村さんは急がなかった。

14年4月、全社員にiPadを配布。6月、Googleドライブに会議資料を格納し、そこから会議用PCに取り出してプロジェクターに投影する運用に変えた。社員もiPadで資料にアクセスすることに慣れてきた。

iPad配布から1年半ほどたった16年1月、ようやく紙の資料の廃止に踏み切る。資料をiPadに表示し、同時にミラーリングと呼ばれるiPad画面を大画面に映す機能を使ってプロジェクターに投影した。

「会議のペーパーレス化」を達成してみて分かったことは紙の節約はもちろんのこと、会議資料の印刷・配付にかかる「人と時間の解放」、既存文書の利用による資料づくりの「人と時間の解放」、会議で使う「資料の制約からの解放」による意思決定の質の向上、リモートによる「会議室からの解放」が行われた結果、「ワークスタイルの変革」が実現したことだった。

こうして社員のITリテラシー(能力)を高めたところで、次の段階である有償版グループウェア導入の検討を始めた。候補に挙がったのはグーグル、マイクロソフト、サイボウズの製品。どれも十分な機能を備えていたが「みんなが無償版のグーグルに慣れていたので、あえて環境を変えることはせず、グーグルの『G Suite』を選びました」。

17年1月、「G Suite Basic」の導入が始まった。費用は一人月額540円と安いため「投資に覚悟は不要でした」。

有償版「G Suite」でより高度なIT化を実現

G Suiteの活用範囲は次第に広くなり、19年10月からは災害時支援システムを試験運用し、20年4月からはテレワークにも使っている。

無償のGoogleアカウントから有償のG Suiteに切り替えたことで、会社のドメイン名でGmailが使えるようになったこと、管理コンソールによりユーザー管理やセキュリティー管理ができること、そして24時間365日サポートが受けられるという便利さも享受できた。

G Suite導入効果は大きく、隙間時間に業務メールを処理できる、社外からでもあらゆる資料にアクセスできる、どこからでもチャットで会話・指示が出せる、どこでも誰とでも打ち合わせができる、離れた場所にいる人と共同作業ができる……などとさまざまなことが可能になった。このような「どこにいても働ける環境」を中村さんは「どこでもオフィス」と名付けた。

一歩一歩着実に進めてきた「身の丈IT」の成功により、コロナ禍によりテレワークが半ば強制される時代にあっても、同社はあわてることなくインフラ企業としての責任を果たしている。

会社データ

社名:青梅ガス株式会社

所在地:東京都青梅市新町8丁目8-13

電話:0428-31-8111

代表者:代表取締役社長 中村 洋介

従業員:65人

HP:https://www.omegas.co.jp/

※月刊石垣2020年10月号に掲載された記事です。

この記事をシェアする Twitter でツイート Facebook でシェア

次の記事

わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.19

株式会社日本設計工業

省人・省力・省コストのためにロボット導入を検討している中小企業は多い。導入には費用がかかるため、コスト削減効果を第一に求めたくなるが、実...

前の記事

わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.17

グランド印刷株式会社

福岡県北九州市に本社を置くグランド印刷は、印刷・広告、サイン・ディスプレイ事業などを手がける「コミュニケーションの仕掛人」。IT化に取り組...

関連記事

わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.35 城善建設株式会社 無料会員限定

城善建設株式会社

2021年「全国中小企業クラウド実践大賞」で総務大臣賞を受賞した城善建設(和歌山県和歌山市)は、〝3種の既製品〟を組み合わせたシステムでDXを推...

わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.34 株式会社フジタ

株式会社フジタ

富山県高岡市に本社を置くフジタは、金属加工・金型製造などを手掛け、アルミなどの金属切削加工の高い技術を持つ。1994年7月、3次元CAD/CAMシステ...

わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.33 株式会社中山鉄工所

株式会社中山鉄工所

プラント分野では予防保全や運転の効率化を目的としたDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる。中山鉄工所は砕石プラントやリサイク...

月刊「石垣」

20225月号

特集1
〝二刀流〟で逆境に打ち勝つ! 主業務×自社ブランドで販路拡大

特集2
コロナ禍を乗り越えて長続きする会社へ 人材が活性化する職場の仕組みをつくる

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

会議所ニュース

月3回発行される新聞で、日商や全国各地の商工会議所の政策提言や事業活動が満載です。

最新号を紙面で読める!

詳細を見る

無料会員登録

簡単な登録で無料会員限定記事をすぐに読めるようになります。

無料会員登録をする