わが社もできるIT化/身の丈ITで生き残れ! vol.21

上毛食品工業社長の栗本靖彦さん。「事務処理や労務管理、商品の提供、サービスの方法を変えて次の時代に事業を継続していくために、IT化を決意しました」

上毛食品工業が生産する牛乳や飲むヨーグルトなどの乳製品は、日持ちしないことから「日配食品」と呼ばれ、仕入れた材料はすぐに加工して店舗や消費先に配送される。そのため一般的な工業製品とは異なる生産管理や事務処理が求められる。これまで同社は40年前に導入したシステムで対応していたが、将来を見据えてIT化に踏み切ることにした。

40年前のオフコンをやめて業務管理のIT化を検討

上毛食品工業は、群馬県高崎市で明治18(1880)年に栗本牧場として発足、昭和25(1950)年に株式会社を設立し、牧場を手放して乳製品の生産企業となった。現在は販売部門である栗本牛乳販売有限会社と連携し、学校給食や官公庁、小売店などに製品を卸している。それ以外に大手スーパーやレストランチェーンのPB(プライベート・ブランド)の生産も手掛けている。また、同社が独自に開発した飲むヨーグルト「贅酪(ぜいらく)」は、砂糖や添加物を一切使用せず、牛乳中乳糖を酵素分解して使用している。そのため生乳本来の甘みが味わえるとして人気が広まっている。

同社の四代目で現社長の栗本靖彦さんによると、工場での生産や仕入れなどさまざまな業務の管理は、41年前の昭和54(1979)年に導入したオフコンで行ってきたという。オフコンとはオフィス・コンピューターの略で、主に中小企業で事務処理を行うために設計されたコンピューターのことである。今のパソコンとは違い、メーカーが独自にコンピューターのシステムを設計し、それを使って業務を行うための専用プログラムが入っていた。

「オフコンが出始めたころの導入で、この規模の企業では早いほうだったと思います。それから40年もの間、ずっとそのオフコンを使って業務を行ってきましたが、さすがにいろいろな問題を感じるようになってきました」

オフコンにはそれぞれの企業の業務に合う専用プログラムが入っているため融通性がなく、一度導入してしまうと変更や改良を加えるのが難しい。そのため生産技術が進歩し、新たな生産機器を導入しても、それを管理するシステムは昔のままなのである。お金と時間をかければもちろん変更は可能だが、プログラムを一からつくり直すため、費用もばかにならない。

「また、オフコンはデータを1年ごとに書き換えてしまうので、経営資源として利用できるデータが出てこない。対前年比の数値は出てきますが、それ以前のデータは紙にプリントしたものを保管して、1枚1枚見ながら必要な数字を探していくしかないんです。時間がかかって非常に非効率でした」

そのため栗本さんは、4、5年前から新たなシステムの導入を検討するようになっていた。

会社全体で情報を共有し従業員と共に会社を動かす

「高崎商工会議所に相談したところ、経済産業省のIT導入補助金を教えてもらい、プログラムの導入だから低コストでできると知りました。そこで、うちの業務に合ったITツールを導入するために、商工会議所に紹介されたIT専門家に来てもらい、社内でヒアリングをして業務の実態を知ってもらうことから始めました。それが2019年の4月ごろでした」

来社したIT専門家は従業員一人ひとりと面談し、業務内容や現場で何が必要かを聞き取っていった。しかし、ITツールの決定には想定以上に時間がかかった。食品業界には「3分の1ルール」があり、生産日から賞味期限の3分の1の間に製品を納品しなければならず、工業製品とは異なる生産・在庫管理が必要とされるからである。しかも、同社が生産する乳製品は賞味期限が1~2週間と、短いものがほとんどで、物流部分では温度管理も必要となる。

「そうして決まったのが、クラウド販売管理システムの『flam』で、業務に合わせたカスタマイズができる点も決め手の一つでした」

19年夏からテスト使用を始め、大きな問題もなかったが、そのころに工場の移転があったため、本格導入は先に延びた。それも同年末には落ち着き、翌年春に導入を開始する予定だったが、そこに今般のコロナ禍で、それどころではなくなってしまった。今の予定では、21年1月から旧システムと同時進行で新規システムを動かし始め、4月には完全に切り替える。また、勤怠管理システムの「ジョブカン」は20年秋に導入し、すでに試験運用を始めている。

「新規システムの運用コストは以前の半分以下です。また、在庫管理がリアルタイムで把握でき、食品ロスも減らすことができる。数年たてば統計データも使えるものになり、経営戦略が立てやすくなると思います。ただ、多くのことをデジタル化することで従業員に対して冷たい管理にならないよう、従業員とのコミュニケーションはしっかりとっていきます。そして、全ての情報が従業員にも共有されることで、いろいろな立場の人が商品や物流などについて意見を出せるようになり、みんなが経営に参画して、全体の総合力で会社を動かしていけるようになることを期待しています」

今後は飲食店など他業種と協力して新たな市場に向けたヨーグルトを開発していきたいという栗本さん。新たなITシステムの導入により、次なる分野を開拓する日も近いようだ。

会社データ

社名:上毛食品工業株式会社(じょうもうしょくひんこうぎょう)

所在地:群馬県高崎市矢島町160

電話:027-353-1711

代表者:栗本靖彦 代表取締役

従業員:28人

HP:http://www.jyoumou.com/

※月刊石垣2021年1月号に掲載された記事です。

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