わが国経済の好循環を実現するためには、「下請等中小企業」の取引条件を改善することが重要です。本コーナーでは、全国に設置され、電話やメール、ウェブサイトにより無料で相談できる「下請かけこみ寺」(本部:公益財団法人全国中小企業振興機関協会)に実際に寄せられた「親事業者の4つの義務と11の禁止行為」に関する問い合わせの中から、参考になる事例をQ&A形式で解説します。
Q.A社(資本金:1000万円)は、B社(資本金:4000万円)から、自動車関連部品を製造するための金型の製造を請け負っています。
下請代金の額は、A社が提出した見積書に記載された500万円でした。B社から、納品前に金型の形状変更や設計の変更を指示され、A社は変更依頼について対応してきました。
B社は下請代金の額である500万円は支払いましたが、設計変更に要した費用の30万円については、「納品当月20日締め切りの翌々月10日支払い」であることを理由に、追加で発注された設計の変更分の70万円と一緒に翌月に支払うと連絡がありました。しかし、その後、B社から内容証明郵便が送付され、設計変更分の30万円と追加発注分の70万円は支払わないと連絡してきました。どうしたらよいでしょうか。
A.A社とB社との取引は、下請法の資本金区分を満たしており、「製造委託」に該当することから、下請法が適用される取引と考えられます。
親事業者から設計や形状変更などの指摘に際して、対応をしたときの発注等内容が記載されている発注書面などを確認する必要がありますが、B社は、費用を負担せずに、発注内容の変更を行わせているのであれば、「不当な給付内容の変更」に該当するおそれがあります。
設計変更分の増加費用と、追加発注分の下請代金の額の支払いが、納品当月20日締め切りの翌々月10日支払われていたとすれば、「支払い遅延」に該当すると思われます。以上のことを踏まえ、双方が十分な協議を行い、下請法に基づいた適正な取引をするように求めるとよいと思います。
なお、そのやり取りの議事録をきちんと作成し、保存することも大切です。
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