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テーマ別企業事例 今、一番気になるキーワード 「SDGs」に取り組む中小企業の新戦略

事例2 目指すは誰もが住みたいまちづくり「脱炭素」で社会変革を起こす

鳥取商工会議所(鳥取県鳥取市)

昨年、都道府県別SDGs取組評価で第1位に輝いた鳥取県(ブランド総合研究所調べ)。県庁内に「SDGs本部」があり、「SDGsとっとり宣言」を発表するなど、SDGs先進県として存在感を増している。鳥取商工会議所も常設展示やセミナーの開催などPR活動が活発だ。脱炭素社会に向けた同所の取り組みを追った。

「バードハット」(新鳥取駅前地区商店街)は、横断幕とSDGsのイメージカラーで華やかにライトアップしている

県と足並みをそろえてSDGsを本格始動

鳥取砂丘や白兎海岸など有名な景勝地を有する鳥取県は、他県同様、少子高齢化が深刻な課題だ。そこで企業誘致や観光振興を促進し、移住や交流人口の増加に力を入れている。「鳥取もか」と思うかもしれないが、他県よりも強い追い風が吹いている。2020年版住みたい田舎ベストランキング(宝島社『田舎暮らしの本』調べ)で629市町村中、鳥取市が子育て世代が住みたい田舎ベスト1位を、総合部門で2位を受賞し、8年連続トップ10入りするという人気ぶりだ。

「自然豊かな環境ですが、主要産業は電子部品やデバイス、電気機器や食料品の製造です。京阪神方面へのアクセスも良く、都会的な利便性も兼ね備えています。非常に暮らしやすいまちだと自負しています」

そう語る鳥取商工会議所会頭の児嶋祥悟さんは、2019年11月の会頭就任当初から地域社会の課題の一つとしてSDGsを捉えていた。

「少子高齢化に歯止めをかけて、まちが成長していくには、地域の人々が安心して安全に暮らせる持続可能なまちづくりと、地域活性化が重要です。子どもや女性、高齢者に優しく、教育や文化の根づいた誰もが住みたいまちづくりにSDGsの視点は不可欠だと考えています」と児嶋さん。

企業誘致や女性活躍の場の推進、移住・交流人口の増加や地域振興、産業振興、イベント支援など、「活力ある地域づくりの実現」のベースにSDGsありと捉え、20年4月から本格的に動き出した。それは県庁内に「SDGs本部」が開設され、「SDGsとっとり宣言」が発表された月でもあった。県と足並みをそろえて同所も走り出し、SDGs旋風を巻き起こしていったのである。

企業×自治体の取り組みでSDGsの理解度を上げる

そして県をあげてのSDGsの活動で力点に置いたのが「脱炭素」だ。17の目標のうち「7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「12 つくる責任 つかう責任」「13 気候変動に具体的な対策を」が該当し、地球温暖化が一因と考えられる異常気象を深刻に受け止め、脱炭素社会の実現を目指した。具体策として児嶋さんが真っ先に挙げたのが電気の地産地消だ。

「自治体と企業が連携した新電力で、鳥取市内の多くの公共施設の電力を賄っています。自然エネルギー、再生エネルギーの活用によって地域活性化、雇用創出を図る狙いです」

他にも省エネ家電への買い替えや住宅の高気密高断熱化によるライフスタイルの見直し、工場や事業所の省エネ設備の導入や水素自動車などの次世代自動車の普及、公共交通機関の利用促進など、多角的にエネルギー消費量の削減に取り組んでいるという。

また06年から続いている「とっとり共生の森」における企業のCSR活動(植林など)を県と自治体が支援する制度や、森林保全活動「県有林J‒クレジット」を通じてカーボン・オフセットの取り組みも活発に進めている。

同所ではこうしたSDGsの取り組みを広く地域住民に伝えるべく、昨年7月より同所の1階展示ルームでSDGs関連のパネル展示を実施。2カ月に1回のペースで展示内容をアレンジするなど、情報の鮮度を保つように工夫を凝らしている。

「SDGsの浸透は認知、理解、行動の三つの段階を踏んで進みます。SDGsの認知はだいぶ進みましたが、理解はまだ不十分です。常設展示も理解を深めてもらうためのアプローチで、商店街の空き店舗を活用したワークショップや商店街のアーケードにSDGsフラッグを掲げたり、カラーイルミネーションで演出したり、地元の人々に理解してもらうことに努めました」(児嶋さん)

SDGsの理解を深め中小企業の行動を後押し

SDGs推進県だけあって地域企業の関心も高い。昨年11月に同所が主催した「SDGs取り組みセミナー」では会員企業から40人弱が参加し、熱心に聞き入っていたという。

「SDGsの理解の次のステップである企業・個人の行動を促す企画で、今後も随時開催していく予定です。企業がSDGsに取り組むということは、自社の強みを見直す機会となり、新たなビジネスチャンスの可能性があります。そこに中小企業がSDGsを活用する意義がある。企業イメージが上がれば、人材採用にも有利に働くなどメリットは大きいのです」。そう語る児嶋さんは、昨年11月に発足し官民で組織する「とっとりSDGsネットワーク会議」の代表を務めており、県、自治体、企業や大学、地元団体が連携、協働したSDGsの実践にも力を入れている。

「SDGsの目標17の『パートナーシップで目標を達成しよう』に合致した活動として、これから本格的に進める予定です」と前向きだ。

さらに商店街の空き店舗対策や新しいまちづくりの構想として、自宅と職場、そしてその中間にあるサードプレイス(第3の憩いの場)のあるまちづくりへと話が広がる。

「鳥取県が2050年の二酸化炭素排出実質ゼロを目指すことを宣言しましたが、その年にはサードプレイスを内包したコンパクトシティーを実現するのが理想です」

SDGsを通じて次世代のまちづくりは着々と進行中だ。

会社データ

鳥取商工会議所

所在地:鳥取県鳥取市本町3-201

電話:0857-26-6666

HP:http://www.tottori-cci.or.jp/

※月刊石垣2021年4月号に掲載された記事です。

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