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テーマ別企業事例 今、一番気になるキーワード 「SDGs」に取り組む中小企業の新戦略

事例4 小さな取り組みの延長線上にSDGsはつながっている

白鷺電気工業(熊本県熊本市)

電気工事会社として、熊本を中心とした九州全体の暮らしと産業の礎となる電気エネルギーの供給網の整備の一翼を担ってきた白鷺電気工業。同社は、環境保全を中心にCSRの活動に努めてきたが、その延長線上にSDGsがあることに気付いてからは、社員のアイデアを生かしながら幅広い取り組みを展開している。こうした自社社員を環境人材に育成する取り組みが評価され、「環境 人づくり企業大賞2020」の環境大臣賞(最優秀賞)を受賞した。

「SDGsは中小企業がやってもいいんだ!?」

「CSRが、社会をよくするための慈善活動なのに対し、SDGsはビジネスで社会を良くしようと主体的に行動するところが大きな違いではないでしょうか」

2016年にSDGsの取り組みを開始した白鷺電気工業社長の沼田幸広さんは、そう明快に説明した。電気工事会社として1947年に創業した同社は、以前から事業活動において生じる環境への影響を最小限に抑えるため、地域の清掃や植林ボランティア、屋上緑化など、環境保全を中心としたCSRの活動に力を注いできた。また、2012年にはエコアクション21の認証も取得した。

「毎年、エコアクション21の環境活動レポートを発表する場があるんですが、16年の発表の際、佐賀県の建設会社が熱心にSDGsに取り組んでいるという話を聞いて、『あ、SDGsって中小企業でもやっていいんだ』と。それがきっかけになりました」

沼田さんはそれまで、SDGsは大企業がやっているものというイメージがあり、自分事として捉えたことがなかった。しかし、長年自社で行ってきたCSRの活動が、SDGsの目標中の何番に近いのか見ていくと、意外に当てはまるものがあることに気付いた。そこで環境活動レポートを作成している女性社員をSDGs担当に任命し、具体的な活動に乗り出した。

社員の提案からさまざまな取り組みを展開

一番最初に取り組んだのは、「3010(サンマルイチマル)運動」だ。環境省が食品ロスの削減を掲げて推進している運動で、宴席の始めの30分と終わりの10分は自分の席で食事をとることで、食べ残しを減らそうというものだ。これを忘年会の席で試したところ、「恐ろしいくらいに」(沼田さん)どのテーブルの料理も完食した。

「案外簡単に達成できたことでうれしくなり、その後もお花見や社員旅行などで実践していました。すると次第に社員の方から『今日も3010をやりますよね?』と言ってくるようになったんです」

ただ、その段階ではまだ一部の取り組みで、そもそもSDGsの読み方さえ知らない者もたくさんいた。全体に周知させる必要があると考え、担当者のアイデアで何種類もポスターを制作し、社内に掲示した。次第に社員も取り組みを好意的に受け入れるようになり、「もっと他にできることはないか」と提案するようになる。そこから具体的に、書き損じはがきを集めてカンボジアの地雷撤去を支援したり、アルミ缶のプルトップを集めて寄付をするという取り組みが、少しずつ草の根のように社内に広がっていった。

「19年に当社のSDGsの活動を盛り込んだ環境活動レポートが、エコアクション21環境経営レポート大賞・九州で入賞し、発表する機会があったんです。担当者は当初、何から手を付けたらいいかわからず、相当悩んだ末に、SDGsを周知させることからコツコツ始めたという体験談を語り多くの共感を得ました。それが当社の取り組みを他社の方にも知ってもらういい機会になりました」

同年には、主事業で発生する木製ドラムを再利用して、丸いホイールバッジを制作した。同年秋にSDGsに関するeラーニングを導入して、派遣社員も含む全社員に受講させ、修了の証としてバッジを配布している。現在、eラーニングは中途社員や新入社員の社員教育の一環として続けている。

働きやすい職場環境に整えることもSDGsにつながる

同社は今般の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、昨年4月に初めてテレワークを導入し、緊急事態宣言中は間接部門の出勤率50%以下に、解除後も、間接部門は週1回のペースで実施している。それに伴い、会議や打ち合わせなどは基本的にオンライン化した。この体制は、コロナ禍が収束しても継続する方針だ。

「テレワークを実施してよかったのは、両立支援に有効だったことです。病気療養していた社員が復職する際に、無理に出社しなくても家で仕事ができます。また、育児や介護と仕事を両立させるにも好都合です。働きやすい職場環境を整えることも、SDGsにつながる取り組みだと考えています」

実は昨年、同社の社員に新型コロナウイルスの感染者が出たという。感染者に偏見を持たず、回復後に「おかえり」と言ってあげられる社会を目指す「シトラスリボンプロジェクト」という活動が愛媛発で展開されているが、同社もそれに賛同し、回復後の社員を温かく迎えた。感染の事実を隠さないと同時に、感染防止対策を徹底する姿勢を世間に発信する意味で、シトラスリボンマークをプリントしたシールをマスクに貼っている。これも社員から出た提案で、社内に展開されていたのだという。

「昨年は屋外でのボランティア活動などが満足にできなかった代わりに、新しい取り組みが始まりました。スモールスタートですが、今後もいいと思ったアイデアはどんどん取り入れて、仕事や職場に反映していきたい」と沼田さんは晴れやかな表情で語った。

会社データ

社名:白鷺電気工業株式会社(しらさぎでんきこうぎょう)

所在地:熊本県熊本市東区御領8-3-38

電話:096-380-7171

HP:https://www.shirasagidenki.co.jp/

代表者:沼田幸広 代表取締役社長

従業員:125人

※月刊石垣2021年4月号に掲載された記事です。

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